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「ハロウィン」には「交通事故」に遭う危険性が増加する

石田雅彦科学ジャーナリスト、編集者
(写真:アフロ)

 ハロウィンが過熱し、逮捕者が出るような騒ぎを起こしたりゴミを捨てたりと問題視されているが、お菓子をもらえる子どもにとっては楽しい年中行事になっている。そんな中、カナダの研究者がハロウィン中は子どもを含めた交通事故に要注意と警告している。

非日常に潜む危険

 交通事故の特異日というのは特にないが、年末年始や雨の日に多いようだ。これは仕事納めや年始回りなどで外出や飲酒する機会が増えたり、雨で見通しが悪いためだろう。

 外出といえば、ハロウィンでは子どもがお菓子をもらうために各家々を回ったり、夜間に町に出てイベントに集まったりする。思い思いに仮装した子どもの姿は微笑ましいが、外出の機会が増えたり不特定多数が集まることもあり、不測の事故に遭遇する危険性も高い。

 カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の研究グループが最近、米国の医師会雑誌『JAMA』小児科(Pediatrics)オンライン版に出した論文(※1)によれば、ハロウィンで外出する場合、仮装をしているために視界が悪くなり、夜間で飲酒している場合も多く、歩行者が交通事故に遭う危険性が高まるという。

 この研究では、1975〜2016年までの交通事故の記録(Fatality Analysis Reporting System、※2)から毎年10月31日の午後5時から午後11時59分までに発生した歩行者の死亡者数を、1週間前(10月24日)と1週間後(11月7日)の同時刻の数と比較した。

 その結果、調査期間中には158万608件の致命的な事故が起き、233万3302人のドライバーと26万8468人の歩行者が死亡していた。調査期間中に42回のハロウィン(10月31日)があり、42日間の夜に608人の歩行者の死亡事故が起き、比較した2日(全84回)では851人の歩行者が死亡事故で亡くなっていたという。

 死亡者数を死亡率でみると、ハロウィンの夜に交通事故で歩行者が亡くなる死亡率は2.07(1000人あたり)だった。これは比較した日の1.45よりも高い。

 また、ハロウィンの夜に交通事故に遭う危険性は、他の日より43%(1.43倍)高く、子どもに限って分析してみると4〜8歳児の交通事故死がハロウィンに起きる危険性は10倍(オッズ比10.00)になったという。

 これは米国の場合だが、ハロウィン中の歩行者の死亡事故は午後6時に最も多く発生するようだ。ハロウィンは非日常を楽しむイベントだが、そのために日常の危険を忘れがちになると研究者は警告する。

 子どもの交通事故の多くは住宅地の周辺で起きる。運転者が子どもの不意の飛び出しに気をつけるなどを含め、保護者もハロウィンでお菓子を集めに出かけた子どもに十分注意させるべきだろう。

 研究者は、警察を含めた行政はハロウィンに興じる人々を交通事故から守るため、速度規制や取り締まりなどを強化すべきとも強調している。

※1:John A. Staples, et al., "Pedestrian Fatalities Associated With Halloween in the United States." JAMA Pediatrics, doi:10.1001/jamapediatrics.2018.4052, 2018

※2:Fatality Analysis Reporting System:FARS:米国のNational Highway Traffic Safety Administration(NHTSA、国道交通安全局)が作った全米の致命的な交通事故データ

科学ジャーナリスト、編集者

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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