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「日本の女性担当大臣が夫婦別姓に反対」海外主要メディア相次ぎ報道

猪瀬聖ジャーナリスト/翻訳家
(写真:ロイター/アフロ)

男女共同参画担当大臣に就任した自民党の丸川珠代議員が、選択的夫婦別姓に反対を表明する国会議員グループの文書に名前を連ねていたことが明らかになったことを受け、海外の主要メディアはさっそく、「日本の女性担当大臣は女性差別を容認している」とのトーンで記事を流し始めた。

夫婦同姓の強制は女性差別

英ガーディアン紙は26日、丸川議員の写真付きで一早く報道。「日本は選択的夫婦別姓を認めていない数少ない先進国の1つ」と強調した上で、「法律上は妻の姓を選択することもできるが、現実には96%の夫婦が夫の姓を名乗っている」とし、別姓を認めない日本の法律は女性差別的な制度である点を指摘した。

丸川氏に関しては、地方議会の間に選択的夫婦別姓制度の導入に賛同する意見書を採択する動きが出ているのを受けて、自民党の国会議員の有志が地方議員に対し意見書を採択しないよう求める文書を送っていたが、その50人の有志の中に丸川氏が名前を連ねていたと報じた。

国連は日本政府に見直しを勧告

ガーディアン紙はまた、国連の女子差別撤廃委員会が夫婦別姓を認めない現行の法律を見直すよう日本政府に勧告していることや、選択的夫婦別姓制度の導入を求める市民団体などが実施した調査で70.6%の人が選択的別姓を容認していることなどを挙げ、日本国内でも制度見直しへの世論が徐々に高まっている半面、保守派の政治家やコメンテーターが「夫婦別姓は日本の伝統的な家族のあり方を崩壊させる」と反対している日本の現状を伝えた。

さらに同紙は、昨年12月に閣議決定された来年度スタートの「第5次男女共同参画基本計画」から、第4次計画まではあった「選択的夫婦別氏(姓)制度」の記述が保守派の反対で消えたことも報じ、ジェンダー平等に向けた日本国内の動きが後退している印象をにじませている。

英BBCも報道

英BBCも27日、電子版で、「女性の活躍と男女格差の解消を担当する日本の大臣が、選択的夫婦別姓の合法化を目指す動きに反対する議員グループに参加した」と、丸川氏の写真付きで報じた。

BBCは、日本では1896年に制定された民法の規定で夫婦はどちらかの姓を選ばなければならないと説明した上で、大半の夫婦は夫の姓を名乗っていることから、同制度は女性に差別的だとの意見が日本国内にもあることを紹介。また、日本のメディアの報道を引用する形で、丸川氏は選択的夫婦別姓に反対する理由をpersonal belief(個人の信念)だと述べたと伝えた。

東京五輪の理念とも相反

問題の文書は、共同通信によると、1月30日付で、47都道府県議会議長のうち自民党所属の約40人に送付された。名前を連ねた50人の議員の中には、衛藤晟一前少子化対策担当相など、女性政策と深くかかわる閣僚の経験者も含まれている。丸川氏の名前も入っているが、文書の送付日は今回の大臣就任前だ。

丸川氏は東京五輪・パラリンピック大会も兼任で担当するが、その東京大会は「多様性と調和」を大会運営の理念に掲げており、女性も含めた多様な人たちの人権や考え方を尊重することが、個々の人材が力を発揮することにつながると、大会公式サイト上でその意義を説明している。

森喜朗・大会組織委員会会長(当時)の女性蔑視発言で、東京大会の運営や、蔑視発言の背後にある日本の文化に対する海外メディアの関心が高まっている時だけに、男女共同参画と東京五輪・パラリンピック両方の担当大臣である丸川氏による選択的夫婦別姓への反対は、今後、海外で波紋を広げる可能性もある。

ジャーナリスト/翻訳家

米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、環境問題、マイノリティー、米国の社会問題、働き方を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。

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