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「日本女性は輝けず」海外メディアが安倍政権を辛口採点 女性不在の総裁選にも疑問

猪瀬聖ジャーナリスト/翻訳家
自民党総裁選への立候補を断念した稲田朋美(左)、野田聖子両議員。(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

「安倍首相は女性が輝く社会をつくると言ったが、安倍政権下で日本女性は輝けなかった」――安倍晋三首相の退陣を受けて海外メディアが次々と安倍政権を“総括”しているが、政策の柱の1つだった「ウーマノミクス」の失敗を挙げるメディアが目立つ。14日に行われる自民党総裁選に女性の候補者がいないことにも言及し、政治の現状が日本の女性が輝けない原因との論調を展開している。

日本女性は輝ける日を待っている

「シンゾウ・アベは日本を女性が輝ける社会にすると約束したが、女性たちは依然、輝ける日が来ることを待っている」

こんな見出しの記事をインターネットで配信したのは、米主要紙ニューヨーク・タイムズだ。東京発のこの記事では、子育てのため、昇進のチャンスもなく賃金も正社員に比べて低いパートタイムで働かざるを得ない30代の女性の声を紹介しながら、「安倍首相の在任中に女性の就業率は過去最高の52.2%に達したが、女性就業者の半分以上はパートタイムか契約労働者だ」と指摘。また、「女性管理職は全体の12%しかおらず、安倍政権が最初に掲げた30%という目標を大きく下回っている」と加えた。

さらには、安倍首相の在任中にシングル・マザーの貧困率が悪化したことや、待機児童の問題を解決できなかったことなどを挙げながら、安倍首相が推進した「ウーマノミクス」が失敗に終わったとの見方を示した。

香港の日刊紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、中林美恵子・早稲田大学教授に取材。中林教授は「安倍政権が誕生した時、多くの女性はこれでチャンスが広がると信じたに違いないが、そういったことは起きなかった。多くの場合、求人は低賃金のパートタイム職で、しかも彼女たちは、働きながら、家事や育児、場合によっては年老いた親の面倒もみなくてはならなかった」などとコメントした。

ニューヨーク・タイムズ紙は、選択的夫婦別姓や女性天皇の議論で安倍政権の立場が世論の流れと乖離していたことにも触れ、保守思想がウーマノミクス失敗の背景にある可能性を示唆した。

男だけの総裁選は日本社会の象徴

海外メディアは、また、14日の自民党総裁選で3人の候補者がすべて男性議員であることを日本社会の象徴として取り上げ、他国と違い女性の政治的指導者がなかなか生まれないこうした政治環境が、日本の女性が輝けない大きな原因だと指摘した。

ニューヨーク・タイムズ紙は、「日本の女性の地位が向上しない一因は、女性政治家の少なさにある」と明確に指摘した上で、「総裁選では当初、2人の女性議員が立候補に興味を示したが、結局、支持が集まらず、出馬を断念した」と伝えた。

経済専門メディアの米ブルームバーグは、「日本女性が輝けるようになることを支援すると安倍首相が約束してから8年近くたつが、彼は、彼の後継候補に1人の女性もいない状況で職を去ることになる」と、やや皮肉るような書き方で、総裁選に関する記事を配信した。

同紙の取材に応じた国際政治学者の三浦瑠璃氏は、自民党の中の高いポジションに女性議員がいないことが、選択的夫婦別姓をはじめ党の「様々な政策に影響している」と指摘した。また、女性の国会議員が育たない問題は、野党も含めすべての主要政党に共通しているとも述べ、女性の国会議員を増やすことが、日本の女性全体の地位向上につながるとの見方を示した。

サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙も、他の先進諸国のように女性議員がもっと増えれば、女性に身近な子育てや介護、家族などの政策が大きく変わる可能性があるとの専門家の意見を紹介。さらに、二世や三世が多い自民党の男性議員は議員歴が長いため党内の序列の階段を上りやすいが、女性議員の場合はそうした経歴の持ち主が少なく、そのことが女性の首相候補がなかなか出てこない原因の1つになっていると指摘した。

ジャーナリスト/翻訳家

米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、環境問題、マイノリティー、米国の社会問題、働き方を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。

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