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進化する量り売り 価格が違う商品もまとめて会計できる「減算式」とは

池田恵里フードジャーナリスト
100gあたりの価格を違えども、減算式により一つの容器に(筆者撮影)。

あらゆる視点から、顧客に負荷を与えない、新たなる提供

原料、人件費の高騰からロスの軽減は、企業として取り組むべき事柄として今や必須となってきている。

とはいえ、これらの取り組みは、スーパーだけでは、なかなか実現は難しく、より革新的な技術の向上が必要である。

寺岡精工株式会社による新たなる量り売りは、顧客が盛り付ける際、価格の違う複数の商品を一つの容器に詰めることができ、そこにはミスがなく、しかもスムーズにすることが実現できたのだ。

GramX

価格の違う商品を一つの容器にいれることが可能となった。測りに減算式(減らす)できる機能がついている(筆者撮影)
価格の違う商品を一つの容器にいれることが可能となった。測りに減算式(減らす)できる機能がついている(筆者撮影)

g量り売りと言えば、顧客が複数の商品を一つの容器に盛り付ける場合、100g189円といった均一価格でないとレジ精算ができなかった。それを一つの容器に価格の違うおかずを盛り付けることが可能となったのだ。

これは計量器から減った分を測定、つまり減算式計量となっており、商品毎に配置された計量器にgram card(NFCカード)をかざし買い回ると、プリンターコンソール(ラベルプリンタ)に購入情報が転送され、自分の購入分のみの価格ラベルが印字できる。

gram cardをかざす。(筆者撮影)
gram cardをかざす。(筆者撮影)

購入情報が転送され、自分の購入分のみの価格ラベルが印字できる(筆者撮影)。
購入情報が転送され、自分の購入分のみの価格ラベルが印字できる(筆者撮影)。

最近の原料高騰から、均一価格でのg量り売りの提案は、原価調整という点から、どうしても顧客にとって満足となる商品を提供しづらく、無理があるのだ。

今後、それぞれの商品の適正価格、つまりそれぞれの100gあたりの価格変更が求められる。そこで顧客の好きな量、内容に応じて、それぞれ別の容器に盛るのではなく、一つの容器で完結できることは、顧客にとって楽しさにつながる。

HopperScale

価格が違っていても、それぞれの価格の違う
価格が違っていても、それぞれの価格の違う

ホッパー型什器の下部それぞれに計量器が配置され、什器から落とし込んだ商品の量が計算される。計量完了後、レバーを引いて持ち帰り容器に商品を移すと備え付けのラベルプリンタから購入価格に応じたラベルを印字できる。容器に移す前に計量を終わらせるため、容器の風袋引きを行わず計量が可能。これにより顧客は、一つの容器に単価の異なった複数の商品をミックスして入れて、購入し持ち帰ることができる。

いろいろな豆をその場でブレンドしてマイコーヒーもできるのだ。

さて、このラベルをバーコードで読み取り、会計する。

LiquidScale

液体専用の計量。それぞれ違う液体を一つの容器に入れることが可能である(筆者撮影)
液体専用の計量。それぞれ違う液体を一つの容器に入れることが可能である(筆者撮影)

これはリキッド(液体)タイプのもの。前述したGramXと同様の減産式の計量システムである。減算式のため、持ち帰り容器の風袋をきにせず計量が可能。醤油、油など必要な分量だけ買うことができる。

リキッドタイプ。それぞれの価格設定の違う商品を一つの容器に入れられる(筆者撮影)。
リキッドタイプ。それぞれの価格設定の違う商品を一つの容器に入れられる(筆者撮影)。

このリキッドタイプ量り売りは、食品のみでなく昨今は、液体洗剤や液体せっけんなどにも拡大している。

ロスのみならず、選択が増える楽しさ

顧客にとって複数の商品を一つ一つ容器に詰めることは、面倒なことであった。持ち帰る際、かさばるからだ。当然、容器を捨てないといけない。それをできるだけ少なく済ます。つまり一つの容器にまとめることはゴミを少なくできるのだ。また繰り返し使用できる持ち込み容器を使うことで、さらにゴミを減らせる。顧客にとって選べる楽しさが増し、商品によってはブレンドすることで新たな味が生まれる。

コロナの閉塞感から、ようやく次なるステージに突入していることを実感した。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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