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丸の内「グラムマルシェ」今年も開催 「はかり売りスタイル」のマルシェ。3月27日から29日開催

池田恵里フードジャーナリスト
丸の内グラムマルシェ(筆者撮影)

グラムマルシェ!

丸の内グラムマルシェ実行委員会((株)寺岡精工、有限会社青空市場、三菱地所株式会社)が主催するグラムマルシェに招待していただいた。今回、13店舗出店され、期間は2018年3月27日から29日。

今日が最終日なので急いでアップ。

さてこの企画は、2013年から始まった。

グラムマルシェ

「必要なだけをはかる」大切さ

今回、お店で販売されているものはそれぞれ特徴があるが共通していることは「g(グラム)ではかるスタイル」であること。

全面協力している(株)寺岡精工の羽立グローバルマーケティング&コミュニケーションズ本部長(以下羽立氏)にお話を伺った。

「はかる、つまり重さの歴史は、古く、驚かれるかと思いますが紀元前3000年頃からあるのです」

はかりの起源

羽立氏によると、小さな穀物をはかることからはじまり、重さの単位は「旧約聖書」に初めて登場した。その名は「シュケル」。

西アジアのメソポタミアではかりが使われたのが初めてとのこと。その他の国でも測る基準として使われたのはその地方の主食の小麦だった。

なぜ重さの単位が生まれたか、その所以は、都市国家が形づくられるにつれ、宝石や貴金属が大切にされるようになり、その価値を測ることが必要になったこととされる。

グラムは18世紀末にメートル法で定められ、いまも受け継がれている。

マルシェ

マルシェと言えば、ヨーロッパに行くとあちらこちらに見かける。例えばパリはマルシェが多く、旅行者にとっても楽しみの一つと言われる方も多いだろう。パリでは全部で10キロメートルで60もの露店市と13の屋根付き常設市場がある。

グラムマルシェのスタイル

今回のマルシェは欲しいものを必要なだけ測る。今、老人、一人住まいが多くなっていくなか、胃袋がどんどん小さくなってきており、顧客にとってありがたい販売方法である。

そして顧客の皆が「残したくない」という想いがある一方、最近、1パックのポーションが随分、小さくなったとはいえ、食べきることはなかなか難しい。一人で住んでいるとどうしても人と人とのふれあいが少なくなり、商品を測ってもらいながら生産者との会話が生まれ、素材のもつ特徴、知識もその場で教えてもらえることは貴重なことになってきている。

そこで今回、出店しているお店の幾つかを紹介したい。

「ぽんぽこらんど」 ゆっくりていねいに無駄なく

株式会社ぽんぽこらんど主任岡信太朗氏(以下岡氏)

株式会社ぽんぽこらんど主任岡信太朗氏(筆者撮影)
株式会社ぽんぽこらんど主任岡信太朗氏(筆者撮影)

愛媛県の岩城島から出店。岩城島は広島県の尾道から今治を結ぶしまなみ海道を経て、さらに船でしか渡れない島から800キロメートルを運転して対面販売されている。

創業して10年。ずっとこの対面販売だと言われる。

きっかけは農家さんから買った価格と東京価格の違いから疑問

岡氏「農家さんから「大根10円でいいよ」と言われたが、本来、東京だと価格は200円になるのに疑問を持ちまして・・・。

農家さんに聞くと「売れん」と言われるのですが、それは島で柑橘があるところで売っても売れないわけでして、300キロメートル先の京都で販売してみようとしたのがきっかけだったんです」

こういった地道な努力をすれば、ちゃんとした生産者のためになる仕事になるのでは・・・と思われた。

加工品への考え

みかんやレモンと言った柑橘類、そしてそれらを使った加工品も販売されている。

岡氏が言われた加工品への考え

岡氏「みかんの収穫は2か月間でありまして、その後の10か月は楽しめないのです。2か月はそのままでいただく、残りの10か月間もどのように柑橘類を楽しんでもらおうかと考えたのです」

じっくり時間をかけて乾燥させたみかん(筆者撮影)
じっくり時間をかけて乾燥させたみかん(筆者撮影)

岡氏「乾燥みかんは、通常、5時間ほどで一気に熱風を当てて乾燥させるのですが、低温で18時間かけて乾燥させるのが僕のなかで一番おいしかったので」

実際、購入して食べてみると自然な甘味、酸味、そして皮の苦みが程よく残っていて、そのまま食べても良いし、料理のトッピングにも使えると思えた。

岡氏「ドレッシングでも加工品にする際、ゴミを出したくないのです」

通常、みかんはジュースにすると、美味しくても歩留まりが悪く、50%、レモン果汁だと20%になる。

そのため、ドレッシングは20通り試作し、レモンドレッシングでは皮ごと入れるなど工夫された。

ぽんぽこらんどのドレッシング(筆者撮影)
ぽんぽこらんどのドレッシング(筆者撮影)

岡氏は、マルシェの創成期を知っているだけあって、海外にならって昔ながらの商売、軒先に並んで測って買うみたいなスタイルだったが、最近はシステマティックになってしまい、商品がスーパーよりいいものか、安いものにするかになってしまっていると言われる。このような形で必要な分だけ届けることが今後、どんどん増やしていかないといけないと言われる。

岡氏「最近、B級品はありませんか?といった声が良く聞かれ、規格外品ということで、あまりB級品として考えていないのです。

畑側の立場で言うと、規格外、形が悪くて味が良かったら、味がいいものに対して価値を払う人を見つけるのが僕らの仕事で、

農家の所得というのを上げないといけないっていう、極端な話、コスパのいい農産品を届けるのは畑の仕事ではない。ちゃんとしたもの、ようは味だけはいいものとか、形も味もいいものを伝えたいのです」

「美味しさ」といっても人それぞれと思い、質問をしたところ

岡氏「確かにみかんは地方性がありまして、その美味しさは関東だと甘いが良いと言われ、関西では出汁文化からか、酸味、コク、濃さがないと売れないのです」

みかんの種類は島だけに200種類あり、それぞれの良さをいかに生かしていくかが大切だとも・・・。

いろいろと多岐にわたってお話が聞け、知識が一気に増えた。

「丸干しいわし」を食べてもらいたい!

鹿児島から来られた下園薩男商店。

丸干しいわしが最近、若い人があまり食べなくなったことで工夫して販売されている。

下園薩男商店 中野沙也加さん
下園薩男商店 中野沙也加さん

下園薩男商店の中野沙也加氏(以下中野氏)

中野氏「丸干しいわしだと食べてもらえないので、干物を焼いてオイルサーディンにしています。若い人にも食べてもらえるように味もいろいろなバリエーションがあります」

もともと製造のみだったところが、直売所はなかったので、昨年、「IWASHIBLEG」を9月にオープンされた。

実際、購入した「旅する丸干し」プロヴァンス風は、大きめの丸干しいわしのしっかりとした食感となたね油とハーブが合わさって絶妙のコンビネーション。蓋をあけると、スライスした黒オリーブが目に入ってきて、容器もおしゃれでこれだと手土産に良いなあと思った。

松前原口吉川商店

北海道から塩を販売するため出店された「松前原口吉川商店」

シーズニングソルトを今回は11種類ほど用意されている。

吉川誠氏(吉川氏)にお話を伺った。

吉川誠氏(筆者撮影)
吉川誠氏(筆者撮影)

池田「塩はどのようにつくられるのですか」

吉川氏「薪の火力で焚きあげているため、結晶化するまでの時間はとてもゆっくりで、

その間に煮詰めている海水のにがりを残しつつ雑味を極力減らすための工程もプラスしています。

そのため、まろやかな味に仕上がっており、食べた時のしょっぱさはあるものの

後味の良い食感になっているのだと思います。」

いろいろな種類の塩を販売されている。

珈琲味の塩、ダルスが入った塩、そして青のり塩などさまざまな塩が販売(筆者撮影)
珈琲味の塩、ダルスが入った塩、そして青のり塩などさまざまな塩が販売(筆者撮影)

池田「青のりの色目が本当にきれいですね」

吉川氏「もともと海藻を扱うところからはじまった工房なので、海藻の乾燥技術についてはキレイに仕上げるノウハウがあります。

それに、塩づくりだけではなく、地元の漁業組合に準組合員として参加しているので、海藻も最も良い時期に自由に採集できるのが大きいと思います。」

写真の奥から左から2つ目がダルス。

北欧とかカナダの気温の低い地域にある海藻で、ビタミン、鉄分が豊富でひじきの7倍とのこと

北海道で捨てていた海藻ダルスの効能が癌にも効くスーパーフード

実際、購入して食べてみると、ダルスは海藻独特のもちっとした粘りがあり、塩に合わせていただくと白身の刺身などにも合った。

松前原口吉川商店

旅行会社から販売を・・・あうたび合同会社

「あうたび合同会社」の代表唐沢雅弘氏(以下唐沢氏)

あうたび合同会社代表唐沢雅弘氏(筆者撮影)
あうたび合同会社代表唐沢雅弘氏(筆者撮影)

唐沢氏「旅行会社の頃はハワイとかモルジブとかやっていたのですよ。農家さんとか何も関係なくて、田舎が好きで会社をやめて農家さんのところに行く旅行プランをはじめると結構、都会で疲れている人が多いので、田舎に行くと、土に触れたり、農家さんと話をすると元気になるんですよ」

それがこの野菜を販売することにつながったと言われる。

人と人とのふれあいの場

今、人手不足などで小売りでは一気に効率化の波が押し寄せているなか、都会のど真ん中で商品を測りながら会話も弾み、買い物をする楽しさがあり、その会話から若い生産者の想いも伝わる。昔はあちらこちらでごく当たり前のようにあった風景がなくなりつつある今、このような催しもの、しかもそれぞれの店の人たちの商品への想いが伝わるマルシェ。皆さん、ふと立ち寄られたらいかがでしょうか。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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