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荒汐親方、立田川親方がトークイベントに登壇 若元春、若隆景、阿炎ら愛弟子たちへのエール

飯塚さきスポーツライター
イベントに登壇した立田川親方(左)と荒汐親方(写真:筆者撮影)

東京・両国国技館で大相撲の本場所が行われるたびに恒例になりつつある「親方トークイベント」(観覧募集はすでに終了)。5月場所初日には荒汐親方(元幕内・蒼国来)と立田川親方(元小結・豊真将)の2名が登壇し、集まった30名超のファンからの質問に答えた。

トークイベントの様子(写真:筆者撮影)
トークイベントの様子(写真:筆者撮影)

親方衆が語る弟子たちへの思い

錣山部屋所属の立田川親方は、現在同部屋唯一の関取である阿炎について言及。2020年に新型コロナウイルスのガイドライン違反で3場所の出場停止処分を受けたが「その頃からよく努力してきた」と振り返る。

「ケガしたと思って、もう一度一からやり直そうという話をしました。当時大関だった朝乃山を一気に押し出せるような突きの威力をつけていこうと言って、本当に努力してよく頑張りましたね」

また荒汐親方は、関脇・若元春と、先場所ヒザの大ケガを負って手術し休場している小結・若隆景の兄弟について、以下のように語った。

「若元春にはとにかく、引いたりいなしたりするのをやめろと稽古場でここ1年ほどずっと言い続けてきました。自分の得意の左四つにどうやったらなれるか。それを追求するようになって、ここ1年でガラっと変わりましたね。若隆景のケガは順調に回復してきています。リハビリは週に5回。もう歩けるようになりました。彼は努力家で、無理をしてでもやる子。だからこそしっかりと休ませて、完璧な状態で出したい。そうすれば、ファンの皆さんにも喜んでいただける、若隆景らしい相撲をもう一度お見せできると思っています」

指導について「気持ちを大事にしている」(立田川親方)、「コミュニケーションを密に取るようにしている」(荒汐親方)とそれぞれの持論も語った2人。弟子たちを常に一番近くから見守っている。

2人の軽快なトークに会場も大盛り上がり

また、互いの現役時代の思い出話にも花が咲いた。「豊真将関は左からのおっつけがすごかったよね」と荒汐親方が振ると、現役時代唯一の後悔として立田川親方はこんなことを語った。

「相手と胸を合わせたくないから下からおっつけるようにしていて、いま思えば自分の相撲に制限をかけていたというか、四つ相撲から逃げていた部分があったなと思うんですね。辞めてからいま振り返るからそう思うんですが、凝り固まった考え方をしていたので、そこは少し後悔しています」

なんとも真面目な立田川親方らしい見解。と思えば、荒汐親方の現役時代のこんなお茶目なエピソードも披露した。

「ある日、僕が飲んでいたアミノ酸のカプセルを蒼国来関にあげたんですけど、それまで錠剤を飲んだことがなかったらしくて、飲み込めなかったんですよ。水と一緒に飲むんだよって教えたんですけど(笑)」(立田川親方)

「だって、内モンゴル自治区にいるときは薬なんて飲んだことなかったから。日本に来て初めて病院で薬をもらって飲んだら、効きすぎて治りが普通の人の3倍くらい早かったんだから(笑)」(荒汐親方)

2人の軽快な掛け合いに会場は大笑い。相撲の話から、はたまた日常の笑い話まで内容は多岐にわたり、イベントは盛況のうちに終了した。

記念撮影の後、出口ではファンとハイタッチをしてお見送り。イベント終了直後、立田川親方は「僕一人ではうまく話せないので、どなたかほかの親方と一緒だったらと言ってお願いしたんです」と謙遜しながらも、「面白かったですね。コロナ禍でできていなかったイベントができて、またお客さんとのハイタッチもできるようになって、活気が戻ってきてよかったです」と笑顔で語った。

同イベントは、少人数で常にアットホームな雰囲気。普段は聞くことのできない貴重な話が満載だ。今場所の観覧募集はすでに終了しているが、9月場所にもし開催があれば、ぜひご贔屓の親方の登壇日に応募してみてはいかがだろうか。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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