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「強い」の一言。単独トップの御嶽海は大関の座をつかむことができるか?

飯塚さきスポーツライター
写真:日刊スポーツ/アフロ

一人横綱・照ノ富士の独壇場と思われた大相撲初場所。しかし、6日目の玉鷲戦で土をつけられてしまったことで、今場所の展開はまったくわからなくなった。現在9連勝、土つかずのまま単独トップをひた走るのは、今年こそ大関の座を狙う関脇・御嶽海だ。

今場所の御嶽海は集中力が違う

単独で全勝しているだけでなく、初日からここまで相撲内容も素晴らしい御嶽海。勝ち越しを決めた中日は、突き押し相撲の大栄翔と対戦。相手の突きに一歩も下がることなく応戦し、強い圧力で相手に引かせたところを前へ出た。

さらに九日目、ベテランの隠岐の海との対戦では、自身の一番の持ち味ともいえる鋭い出足で立ち合い、勢いそのままに電車道で相手を土俵外に追いやってしまった。ただただ「強い」の一言である。

勝ち越しを決めた翌日も、これだけ高い集中力を維持できているのは、2018年7月に自身が初優勝した場所に匹敵するのではないだろうか。ちなみに、初優勝の場所は、初日から11連勝を果たしている。今場所はどこまで星を伸ばせるか。いまから横綱・照ノ富士との対戦が楽しみである。

学生時代からのライバル・北勝富士と対戦

10日目となる今日は、同い年で学生時代からのライバルである北勝富士との対戦。共に平成4年生まれ。約1年前のインタビューで、北勝富士は御嶽海との対戦について「横綱に勝つよりうれしかった」と振り返っている。

「4年生のインカレ決勝。勝ったほうが大学横綱で幕下付出の資格が得られるという一番で、彼に負けたんです。悔しくて夢にまで出てきました。プロに入ってから、最初は差があったけど、どんどん狭まってきて、やっと対戦できるようになったときは感慨深かった。初顔合わせのときは負けたんですが、3回目の対戦で勝った瞬間、あのときの自分を超えられた気がしました。一生心に残る取組です」

今場所は3勝6敗と黒星先行の北勝富士。だが、あのときの悔しさをもう一度思い出し、絶好調の御嶽海を破って土俵を沸かせることができるか。

対する御嶽海は、このまま連勝街道を走り抜け、長年の夢だった「大関」の地位に、自らの力で手を伸ばしたい。長野県出身力士が大関に昇進するとなると、なんとあの最強の大関・雷電為右衛門以来230年ぶりの快挙となるそうだ。まるで歴史の教科書に載りそうな言葉の響き。それを現実のものとできるか。

信州の人々だけではない。全国の御嶽海ファンが、「期待しないでおく」と口にしながら、大きな期待を寄せる。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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