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「琴」パワーが止まらない七月場所。在籍力士最多・佐渡ヶ嶽部屋の強さの秘密とは?

飯塚さきスポーツライター
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

大相撲七月場所四日目が終了した。初日は全体的に、淡泊であっけない相撲が多い印象だったが、四日目ともなると、力士たちも相撲勘を取り戻してきた様子。星勘定の行方はまだまだわからない序盤戦であるが、現段階では、佐渡ヶ嶽部屋の力士たちが好調に見える。直接の取材がままならないため、これまでの取材の蓄積から、その強さの裏付けを考察してみよう。

1.在籍力士・幕内力士数最多

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、力士たちは部屋間の出稽古を禁止されていた。そんななか、やはり有利だったのが佐渡ヶ嶽部屋だったのではないだろうか。なぜなら、在籍力士が37人、幕内力士が5人と、どちらも全部屋で最多なのだ。力のある力士と日々稽古を重ねることで、稽古不足や相撲勘の鈍りが回避できたのだろう。もちろん、ただ人数が多ければいいわけではないが、より多くの力士と肌を合わせることで、質の高い充実した稽古ができていたのではないかと想像する。

2.ウェイト・トレーニング

佐渡ヶ嶽部屋には、地下にトレーニングルームが併設されている。新入幕の琴勝峰は、4月初旬に筆者が行った取材で、稽古後はそこでトレーニングに励んでいると話していた。内容は、「体幹トレーニングと、コーディネーショントレーニングが中心です。筋肉を意識して、力を出す向きを考えながら、相撲の実践で力を発揮するためのトレーニングをしています。たまには重いのを挙げて、ストレス発散にしています」とのことだった。

場所が始まって驚いたのは、16枚目の琴恵光が、以前に増して筋肉質な体になったように見受けられることだ。特に下半身の筋肉が発達しており、稽古に加えていつも以上のウェイト・トレーニングを取り入れたのではないかと推測している。

もちろん、相撲に必要な力や技術は、稽古でしか獲得し得ない。しかし、基礎体力や筋力を補うものとして、ウェイト・トレーニングは有効だ。部屋にトレーニングルームが併設されている佐渡ヶ嶽部屋では、こうしてうまくウェイト・トレーニングを取り入れているのかもしれない。

止まらない“琴”パワー

四日目を終えて、琴勝峰は全勝をキープ。元大関の高安に対し、強気に動いて勝利し、五日目につなげた。“筋肉増強”の琴恵光は、背の高い佐田の海に下手を引かれながらも、相手の腕をきめながら、下半身の力を使って下から相手を突き上げて寄り切った。見ていて思わず「おおっ」と声を上げてしまうような、見事な相撲だった。

さらに、元大関の琴奨菊も3勝目。鋭い当たりからのはたき込みが決まった。琴ノ若は残念ながら初黒星を喫してしまったが、それでもまだ1敗。場所前に腰を痛め、流れに乗れていなかった琴勇輝も、四日目にようやく初日が出た。

角界最大・佐渡ヶ嶽部屋の“琴”パワーが止まらない。特に、ここまで全勝の琴勝峰が、どこまで星を伸ばしていくのか。中盤戦以降からも目が離せない。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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