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米国では年収がいくらあればお手頃な住宅を買えるのか? サンフランシスコでは“驚愕の年収”が必要!

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
中央値の年収でも手が届かなくなっているアメリカの住宅。写真:redfin.com

 住宅不動産サイトRedfinの分析によると、アメリカの人々は中央値の年収を得ていても、中央値の価格の住宅を購入できなくなっていることがわかった。

 同サイトによると、アメリカでお手頃価格の住宅を購入するのに必要な年収の中央値は約11万5,000ドル(約1,725万円、$1=150円換算)だ。これは、昨年比15%増、また、2020年の約7万5,000ドル(約1,125万円)からは約50%も増加した。

 ちなみに、同サイトが意味するお手頃価格の住宅とは、頭金を20%入れると仮定した場合、月々の住宅ローンの支払い額が月収の30%を超えることにはならない販売価格の住宅のことである。

 しかし、2022年のアメリカの1世帯当たりの年収の中央値は約7万5,000ドル(約1,125万円)。つまり、お手頃価格の住宅を購入するには年収が約4万ドル(約600万円)も足りないのである。2023年、アメリカの時給は約5%増加したものの、住宅を購入するのに必要な年収に至るほどには上がっていない。

お手頃な住宅を購入するのに必要な年収の中央値は上昇を続けており、今年8月は、2020年8月から約50%も上昇した。グラフ:REDFIN.comより
お手頃な住宅を購入するのに必要な年収の中央値は上昇を続けており、今年8月は、2020年8月から約50%も上昇した。グラフ:REDFIN.comより

サンフランシスコでは40万ドル超の年収が必要

 同サイトの調査によると、100の主要都市圏中、50の主要都市圏で、中央値の価格の住宅を購入するには、少なくとも10万ドル(約1,500万円)の年収が必要だ。

 お手頃価格の住宅を購入するのに最も高い年収が必要になるのはサンフランシスコ。同地で販売されている住宅価格の中央値は約148万ドル(約2億2,200万円)を超えており、購入には約40万ドル(約6,000万円)以上という驚愕の年収が必要になる。

 サンフランシスコに次いで、住宅購入に高い年収が必要になるのはサンノゼ(40万ドル=6,000万円以上)で、これにロサンゼルスエンゼルスの本拠地であるアナハイム(約30万ドル=約4,500万円)、オークランド(約25万ドル=約3,750万円)、サンディエゴ(約24万1,000ドル=約3,615万円)、ロサンゼルス(約23万7,000ドル=約3,555万円)、オックスナード(約23万3,000ドル=約3,495万円)とカリフォルニア州の7つの都市が上位にリストされている。

 アメリカ西海岸ではシアトル(約21万5,000ドル=約3,225万円)もトップ10に入っており、それにニューヨーク市(約19万8,000ドル=約2,970万円)とボストン(約19万4,000ドル=約2,910万円)が続いている。

ラストベルトは購入に必要な年収が低い

 一方、ラストベルト(米中西部の五大湖周辺に位置し、石炭や鉄鋼など近年衰退している産業が中心となっている地域)では、住宅を購入するのに必要な年収は低い。最も低いのはデトロイトで約5万2,000ドル(約780万円)。ミシガン市では、住宅価格の中央値は約19万ドル(約2,850万円)以下だ。デトロイトに続いて低いのが、アクロン、デイトン、クリーブランドといったオハイオ州の3都市で、購入に必要な年収は約6万ドル(約900万円)となっている。

多くの人が“ハウスプア”に

 また、米国の月々の住宅ローンの支払い額は、8月には、昨年比20%アップ、2020年からは81%アップの2,866ドル(約43万円)と記録的な高さだ。

 もっとも、フォーチュン誌によると、7月時点で、住宅所有者の4人に1人が毎月3,000ドル(約45万円)以上の住宅ローンを支払っているという。しかし、7月の平均収入は4,600ドル(約69万円)。つまり、収入の60%以上を住宅ローンの支払いに充てている人々がいることになる。そのため、同誌は、多くの人々が“ハウスプア”に陥っていると指摘している。

住宅の在庫は過去最低水準に

 背景には、インフレ対策として、米連邦準備制度理事会が金利を大幅に引き上げたことにより、住宅ローン金利も引き上げられている状況がある。昨年8月の30年固定金利は5.22%だったが、今年8月は7.07%に上昇、先週はさらに7.57%へと上昇した。しかも、住宅市場は在庫不足に陥っている。そのため、8月に販売された住宅の平均価格は昨年から3%上昇して約42万ドル(約6300万円)となった。

 現在の住宅市場の状況について、リサーチを指揮したチェン・ザオ氏はこう説明している。

「住宅ローン金利の上昇が需要と住宅価格を下げ、高金利の支払いを補うというのがホームバイヤーにとっては理想的な状況です。しかし、現在の状況はそうなっていません。新規物件の掲載件数はわずかに増加しているものの、住宅所有者が低金利ローンにしがみついているため、在庫は依然として過去最低の水準にあり、それが価格を下支えしています」

 ゴールドマン・サックス社によると、現在、米国の住宅は2008年の暴落前よりもさらに購入困難な状況となっており、価格はさらに上昇すると予想されている。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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