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米国移住1年半、ハリー王子とメーガン妃は今どうしているのか? 豪邸売却&引っ越し話の本当のところ

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
モンテシトにある夫妻の豪邸。この景観を維持するには、大量の水が必要だ。(写真:ロイター/アフロ)

 2020年7月、米カリフォルニア州に移住したハリー王子とメーガン妃夫妻。夫妻の住まいは、ロサンゼルスの中心部から車で約1時間半の海岸沿いにある閑静な超高級住宅地モンテシトの丘の上にある。モンテシトは人口約9000人のこぢんまりとした街。筆者も幾度か訪ねたことがあるが、小さなダウンタウンにはファーストフード店やチェーン店などの大衆的な店はあまり見られず、街の中心を走るストリートには、同地にだけしかないような高級レストランやブティックが並んでいた。

 移住後まもない2020年10月、この街では最も有名なレストランとして知られる「ラッキーズ・ステーキハウス」で、夫妻が、シンガーのキャサリン・マクフィーとその夫で音楽プロデューサーのデヴィッド・フォスターと会食している風景が目撃されたが、その後、街中ではあまり目撃情報も出ていないようだ。

 ハリー王子はTVインタビューでハイキングをしたりビーチに行ったりしていると話し、長男のアーチーとビーチで走っているホームビデオも公開していた。人目につくダウンタウンは避けているのかもしれない。

夫妻の引っ越し話は不動産業者の流したデマ

 モンテシトで暮らし始めて約1年半、ハリー王子とメーガン妃は、今、どうしているのか?

 英紙ミラーの今年初めの報道によると、夫妻は現在の豪邸に満足しておらず、同じモンテシトで子育てに適した家を探し始めているという。まだ1年半しか居住していないのに、夫妻は本当に引っ越しを考えているのか?

 英紙の報道に対し、1月25日付のモンテシトの地元紙モンテシト・ジャーナル(電子版)は「噂と本当のニュース」というコーナーで、夫妻はモンテシトの別の場所への引っ越しは考えていないと以下のように否定した。

「ハリーとメーガンが家を探しており、バーナム・ウッド(モンテシトにあるゲーテッド・コミュニティ=ゲートを設けて住民以外の出入りを制限している居住区)に引っ越す可能性について。

 明らかに、この件は、バーナムの物件を掲載している不動産業者が始めたもの。不動産業者は関心を掻き立てたかったのだけれど、世界中のプレスが夫妻について言及するものならなんでも飛びつくとは思わなかったのです。夫妻がアレルギーが出るような話を出せば、ザ・サン、グローブ、そのほかのタブロイドメディアはその話を載せるでしょう。彼らがここに移住した目的は、溶け込め、楽しむことができ、一員になれるような素晴らしいコミュニティを得ることでした。私たち(モンテシトの住民)は人々のプライバシーをリスペクトするのに非常に長けています。物件を誇大宣伝したい不動産業者たち、ご注意を」

 つまり、この記事によると、夫妻の引っ越し話は、地元の不動産業者が売り物件を宣伝するために流したデマだというのである。その不動産業者は、まさかメディアがそれを大きく報じるとは思わなかったようだ。

夫妻が直面しているカリフォルニア州の問題

 とはいっても、夫妻は、現在の豪邸についてはある問題を抱えていると思われる。それは水。気候変動の影響を受けて山火事が頻発しているカリフォルニア州はこの10年、干ばつ状態が続いている。

 このことから、昨年7月、ギャビン・ニューサム州知事は15%自主的に節水するよう州民に求めたものの、昨年11月時点で6%しか節水されなかった。そのため、1月18日から、屋外での散水を制限する緊急規制が実施されている。

 夫妻が約1460万ドル(約16.6億円)で購入した豪邸(9寝室、14バスルーム、テニスコート、ティーハウス、遊び場、サウナつきのスパ、シアター、ゲームルーム、ワインセラー、5台分のガレージがある)には、プールや池、様々な植物や木々が植えられた広大な庭があり、庭の景観を維持するには大量の水が必要だ。毎月約230万円をガーデニングに費やしていると言われている夫妻にとって、散水制限は大問題である。

豪邸が大量の水を使用

 1年間有効となった緊急規制では、降雨後48時間は芝生に散水してはならない、サイドウォークにスプリンクラーの水を散水してはいけない、シャットオフノズルなしのホースで洗車をしてはならないなどを取り決めており、罰金は最大500ドルとなっている。

 これに加えて、夫妻が住むモンテシトではさらなる制限が加えられている。散水は午後6時〜午前10時の間とすること、プールの水は許可を得た上で5年おきに排水したり給水したりすること、池の水を排水したり給水したりするには許可が必要であること、噴水はリサイクル水しか使用できないことなどだ。

 モンテシトには人気テレビ司会者のオプラ・ウィンフリーや俳優のロブ・ロウ、シンガーのアリアナ・グランデやケイティ・ペリーなどハリウッド・セレブらの豪邸もあるが、豪邸はモンテシトに供給されている水の多くを消費していると言われている。また、モンテシトに供給されている水の約85%が、豪邸の広大な庭の景観を維持するために使われているという。

 カリフォルニア州では2014年に大きな水不足が起きたが、英紙テレグラフによると、その時、オプラ・ウィンフリーは、40エーカーの豪邸に何千ガロンもの水をトラックで運び入れたという。また、水を超過使用した住民837人に対し、53万2000ドルを超える罰金も科された。

 夫妻の豪邸は川などがない土地に建っているため、特に水不足に弱いという。敷地内に個人的に設置された井戸の水を使用することもできるだろうが、その水はモンテシトの地下水帯水層から来る水であることから、地元で問題にされる可能性もある。

制限使用量超えで罰金の地区も

 水不足の影響を受けているセレブは他にもいる。女優のキム・カーダシアンや俳優のウィル・スミスなどのセレブも居住するロサンゼルス郊外のラス・ヴァージネス地区には、4月から、水使用量がわかる水量測定システムが設置される。これにより、居住者は使用量が制限を超えていないかどうかリアルタイムに知ることができ、月の制限使用量が150%を超えた場合は、超過使用量に応じて罰金が科される。同地区の担当者は、大半の世帯が150%を超えることはないとみてはいるものの、水道料を気にせずに水を大量に使用している富裕層に対して警告を与えることに意味を見出しているようだ。

 広大な庭の景観を維持するために必要な大量の水。ハリー王子とメーガン妃夫妻なら、オプラ・ウィンフリーのように金に糸目をつけず水を運び入れることもできるだろうが、夫妻は環境保護を重視していることでも知られる。美しい庭の景観を楽しみたいという私利私欲よりも、水不足問題を抱えるカリフォルニア州の公益を重視する判断をすると願いたい。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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