トランプ前大統領が、米国時間10月9日、アイオワ州の州都デモインで「アメリカを救え」と題する支持者集会を開いた。アメリカの大統領選では、民主党と共和党が党としての大統領選候補を決めるための党員集会や予備選が全州で開催されるが、その皮切りになるのが同州で開かれるアイオワ党員集会だ。そのため、今回、トランプ氏がアイオワ州で集会を開いたことは、2024年の大統領選を見据えてのことではないかという憶測も飛び交っている。

 トランプ氏はまだ正式に大統領選出馬を表明していないものの、ケーブル放送のC-SPANは、“キャンペーン2024”というタイトルまでつけてこの集会をライブ中継したことから、トランプ氏の宣伝をしていると批判された。

「ハイチ人の多くはエイズ」という根拠なしの人種差別発言

 じょじょにプレゼンスを高めているトランプ氏だが、今、同氏の吐いたある暴言がアメリカで波紋を呼んでいる。10月7日、友人のショーン・ハニティー氏が司会を務めるフォックス・テレビの番組でした以下の発言だ。

「ハイチから何百人、何千人もの人々が、我が国に流入している。ハイチにはエイズという大きな問題がある。ハイチの人々の多くはたぶんエイズを持っているだろう。彼らは我が国に入ってきていて、我々はそれに対して何もしていない。みなを入れている。まるで我が国は自殺願望があるようだ」

 テキサス州とメキシコの国境には、9月半ば、大統領暗殺や大地震による混乱が続くハイチから逃れて来た人々がアメリカへの亡命を求めて殺到し、国境の川を渡るなどして流入していた。トランプ氏は彼らの多くはエイズを持っていると決めつけ、彼らを受け入れれば、アメリカでエイズが広がって亡くなる人が出てくると訴えたのである。もちろん、この発言には何の根拠もない。

 メキシコ系移民をレイピストと呼び、イスラム教徒の人々を入国禁止にし、新型コロナウイルスを中国ウイルスと呼ぶなどしてきたトランプ氏は、相変わらず、人種差別的姿勢を改めていないことがわかる。

憎悪と不和の種をまく

 当然のことながら、ツイッターでは、このトランプ発言に対して批判が巻き起こっている。

「これは言論の自由ではない。人種差別発言だ。社会を害している」

「彼はどの時代にいるの? ハイチがエイズのホット・スポットだったという作り話は80年代初期に終わったのよ」

「なぜトランプの声を載せるの? もう止めて」

 ハイチ大使館もトランプ氏の発言は根拠がないとし、「これらの卑劣なコメントは移民に対する憎悪と不和の種をまくことだけを狙っている。文明人は、トランプ前大統領がハイチの人々を誹謗したことに無関心でいるべきではない」と訴えている。

 ちなみに、ハイチの人々に対するトランプ氏の差別発言はこれが初めてではない。2017年には、トランプ氏が、大統領補佐官たちと行ったブリーフィングの際に、ハイチ政府からアメリカに送られるハイチ人はみなエイズを持っていると言及したことが、米紙ニューヨーク・タイムズに報じられた。

 また、2018年には、米紙ワシントン・ポストが、トランプ氏がハイチやアフリカの国々について「なぜ肥溜めみたいな国からあんなにやってくるんだ」という暴言を吐き、アメリカはノルウェーのような国からより多くの移民を入れるべきだと訴えたと報じている。

 今も人種差別発言を続けるトランプ氏。得意とする暴言で求心力を高めて、次期大統領選での再選を狙っているのか?

 トランプ氏に対する共和党支持者の支援は今も根強い。今回集会が行われたアイオワ州で、Des Moines Registerが実施した最新の世論調査によると、53%の州民がトランプ氏に好意的な見方をしており、共和党支持者だけに絞ると91%が好意的な見方をしている。 Harvard CAPS-Harris pollが9月に発表した世論調査によると、共和党を支持する有権者の58%がトランプ氏が次期大統領選で大統領候補になることを支持している。

 アフガンからの不手際な米軍撤退によりバイデン大統領の支持率が低下する中、集会を開いてプレゼンスを高めているトランプ氏。今も暴言を吐き続ける同氏に大統領候補になる資格があるのか。