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トランプ氏の行く末 「共和党大統領候補指名は確実」と共和党重鎮、「刑務所行きだ」と元顧問弁護士

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
弾劾裁判で無罪評決を受けた後、トランプ氏は支持率を回復した。(写真:ロイター/アフロ)

 先日行われた世論調査で支持率を回復したトランプ氏。

 28日には、南部フロリダ州で開かれる保守政治行動会議(CPAC)で退任後初の演説を行い、大統領選再出馬への意欲を表明する可能性があるとも報じられている。

 そのトランプ氏について、共和党の重鎮ミット・ロムニー上院議員が、トランプ氏が2024年の大統領選に出馬したら、共和党大統領候補の指名を得るのは確実と明言した。

共和党大統領候補に指名されるのは確実

 ロムニー氏は、トランプ氏の不正選挙の訴えをはなから批判し続け、先日行われた弾劾裁判でもトランプ氏の有罪を支持した6人の共和党議員の1人だ。そのロムニー氏がこう言及した。

「トランプ氏はこれまでのところ、共和党では最大の声となっているし、大きなインパクトを持っている。彼の家族が選挙に出るかどうかはわからないが、トランプ氏は役割を果たし続けると思う。彼が2024年の大統領選に出たら、共和党大統領候補の指名を受けるのは確実だ。世論調査を見ると、潜在的な共和党大統領候補たちの中で、トランプ氏は大勝している。私はトランプ氏には次回も投票するつもりはない。過去にも投票しなかった。私が代表している共和党の小さな派閥を支持してくれる人を応援するつもりだ」

 26日には、上院共和党トップのミッチ・マコーネル氏がFOXニュースに対し、こう明言した。

「トランプ氏が共和党大統領候補に指名されたら、絶対に支持する」

 トランプ氏には議事堂暴動に対する道義的責任があると訴え、反旗を翻したかに見えたマコーネル氏も、トランプ氏が共和党の大統領候補に指名された場合は支持すると表明したのだ。

トランプ - ペンス体制が復活か

 トランプ氏が大統領選再出馬に向けて力を取り戻しつつある兆候は他にも現れている。

 共和党がトランプ派と反トランプ派に二分する中、前副大統領のペンス氏がトランプ氏と今も友好関係を保っていることが報じられたのだ。

 ペンス氏というと、1月6日の議事堂暴動は同氏をターゲットにしたものだという声もあがっていた。弾劾裁判でも「暴徒らはペンス氏を探していた。ペンス氏は、トランプ氏の選挙結果を覆せという要求に応えなかったからだ。暴徒らはペンス氏暗殺について話していた」と下院弾劾マネージャーは話していた。

 トランプ氏も、選挙人投票でバイデン氏の勝利を認めたペンス氏について「ペンス氏は我が国と我が国の憲法を守るためにすべきことをする勇気がなかった」と言ってペンス氏を批判していた。

 そんなペンス氏がトランプ - ペンス政権の4年間のレガシーを守るため、政治組織を作る可能性があると報じられている。23日、ペンス氏は共和党議員たちと会合を持ったが、その会合に参加した下院共和党議員のジム・バンクス氏がCNNに対してこう話したのだ。

「ペンス氏はこの4年間にトランプ - ペンス政権が残した成功の記録を守るための組織を作ろうとしている。彼は、トランプ氏との関係ついて、とても好意的に話していた。彼らはよく話をしており、この4年間と同じ友好関係を保っていると感じた」

 バンクス氏はまた、ペンス氏が現在の状況はオバマ政権がスタートした2009年時と似ていると指摘したという。

「ペンス氏は、民主党の大統領が生まれ、上下両院とも民主党が多数派となった2009年の状況と現在の状況は似ていると話した。2009年、民主党は莫大な財政出動を提案し、下院共和党議員は一人残らずそれに反対した。それは今週、下院本会議で(民主党が提案した)1.9兆ドルの財政出動案に対する採決が行われる状況と似ている。民主党が行き過ぎの政策を推進するほど、2010年時のような中間選挙となり、共和党は多数派を取り戻すことになるだろう。ペンス氏は当時の状況と今の状況が似ていると感じているようだ」

 確かに、オバマ政権スタート時は上下両院とも民主党が多数派だった。ところが、2010年の中間選挙では共和党が下院を奪還、2014年の中間選挙では、共和党が上院も奪還、ねじれ議会が生じて政権運営が難航した。ペンス氏は、バイデン政権も同じ道を辿ると考えているのだろう。

 2010年の中間選挙で共和党が下院を奪還したように、2022年の中間選挙で共和党が多数派になるにはトランプ氏の力が必要だと考えているのかもしれない。さらには、次期大統領選に向け、再びトランプ - ペンス体制を復活させようとしているのではないか。

トランプ氏は刑務所行き?

 ところで、前述のロムニー氏は、トランプ氏の共和党候補指名を確実視しつつも、「今から2024年までの間にはたくさんのことが起こりうる」とも述べている。

 実際、トランプ氏の前には、数々の訴訟という現実が横たわっている。

 22日には、米連邦最高裁が、トランプ氏に対し、納税記録などの財務記録をニューヨーク州のマンハッタン地検に提出するよう命じ、25日、米紙ニューヨーク・タイムズは、マンハッタン地検がそれらを入手したと報じている。

 マンハッタン地検はトランプ氏がポルノ女優と性的関係を持ち、口止め料を支払った件や、トランプ氏の企業の粉飾決算疑惑などを捜査しており、その一環としてトランプ氏の8年分の納税記録など財務資料の提出を求め続けていた。

 しかし、トランプ氏は大統領時代、大統領の免責特権を理由に納税記録の提出を拒んでいた。米連邦最高裁は昨年7月、提出を求める判決を下したが、トランプ氏側は新たな訴訟を起こして提出を拒んでいた。米連邦最高裁はトランプ氏側の訴えを退けた。

 トランプ氏は納税記録をマンハッタン地検に提出しなければならない状況に追い込まれたが、その記録はようやくマンハッタン地検の手に渡ったわけである。

 トランプ氏を取り巻く状況について、ポルノ女優への口止め料の支払いに関わったトランプ氏の元顧問弁護士で、選挙資金法違反や脱税で禁固3年の判決を受け、現在仮釈放中のマイケル・コーエン氏がケーブル局MSNBCに対し、こんな皮肉な発言をしている。

「マンハッタン地検の検事が求めていたのはトランプ氏の納税記録だけではなかった。検事はトランプ氏が所有している不動産に対する課税記録も求めていた。検事はそれを納税記録と比べるだろう。トランプ氏はカスタムメイドのジャンプスーツ(囚人服のことを指している)を探し始めなきゃね。トランプ氏にとってはいい状況には見えない」

 つまり、トランプ氏は刑務所行きになる可能性があるというのだ。

 トランプ氏を待っているのは共和党大統領候補指名か、それとも、カスタムメイドの囚人服か?

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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