感染が再拡大していても、都市によって、こんなにも対応が異なるものなのか。

 ロサンゼルスと東京の対応を比較すると、そんな疑問を抱かざるをえない。

カナダ全土より多いLAの感染者数

 今、ロサンゼルスでは、感染者数が急増し、病院も逼迫し始めている。

 米国時間7月16日には、1日の新規感染者数が4592人、1日の入院者数は2173人とこれまでで最多を記録した。総感染者数は7月18日時点で15万人を超えた。ロサンゼルスの人口は約1000万人なので、100人に1人以上の感染者がいる状況だ。

 感染増に伴い、ガルセッティ市長は感染拡大について、連日のように警鐘を鳴らしている。

「非常に危険な状況だ」

「ロサンゼルス郡の感染者数は、今や、カナダ全土より多い。また、ロサンゼルス郡を国とした場合、感染者数は世界で20番目に多い」

ロックダウン、アゲイン

 感染者数の激増から、カリフォルニア州のニューサム知事は、7月14日、再び営業停止を命じた。

 州内にあるレストランの室内営業、バー、ワイナリー、映画館、動物園、ミュージアムなどの営業の停止を命じたのだ。ロサンゼルス郡など特に感染者数が多い郡は、これらの施設に加えて、ジムや礼拝施設、必要不可欠の業務を行わないオフィス、美容室、ネイルサロンなどの営業停止も命じた。

 7月17日には、感染拡大が顕著な32の郡にある学校が、オンライン授業にするよう命じられた。公園やハイキングコースやビーチなどの屋外施設はオープンしてはいるものの、ロサンゼルスは、当初のロックダウンに近い状態に舞い戻されている。

 ガルセッティ市長は「ロサンゼルスは、2回目のロックダウンの瀬戸際だ」と言って、「外出禁止令」を再発令する可能性も示唆している。

人出状況が類似

 ところで、山中伸弥教授が自身のサイトで指摘しているのだが、googleの行動解析によると、「東京の人出は、感染者が急増しているロサンゼルスと類似している」という。確かに、両都市は、「緊急事態宣言」解除後の5月30日〜6月27日の人出状況のグラフ(下記)を見ると、似た折れ線グラフを描いている。経済活動再開後は、両都市とも新規感染者数の増加が顕著だ。

東京とロサンゼルスは人出の状況が類似しているという。出典:www.covid19-yamanaka.com
東京とロサンゼルスは人出の状況が類似しているという。出典:www.covid19-yamanaka.com

 しかし、現状、感染が再拡大している両都市の対応は対照的だ。

 ロサンゼルスは前記したように再ロックダウンへと舵を切っているが、東京は「緊急事態宣言」の再発令までには至っていない。この対応の違いは、感染者数も陽性率もロサンゼルスの方がはるかに高いからという理由で説明がつくのだろうか?

ロックダウンの基準

 ロサンゼルスが経済活動の制限を再び始めた背景には、カリフォルニア州が設定しているロックダウンの基準に達しているという理由がある。その基準とは、陽性者数が10万人あたり100人以上、または、14日間の10万人当たりの感染件数が平均25件以上で、7日間の平均陽性率が8%以上というものだ。

 ちなみに、東京における1週間の10万人あたりの新規感染者数は7月17日時点で10.79人で、平均陽性率は6.3%。感染者数も平均陽性率もカリフォルニア州の基準には全然達していない。

 つまり、カリフォルニア州の基準を採用した場合、東京は、ロサンゼルスのように営業を再停止する必要はないということになる。

 しかし、先般、日本が「緊急事態宣言」を解除した基準を見ると、「直近1週間の新規感染者数が10万人当たり0.5人程度以下」を解除の目安としていた。ここの基準は、カリフォルニア州の基準よりはるかに厳格で、東京の現在の陽性者数=10万人あたり10.79人は、日本の解除基準をはるかに超えていることになる。また、陽性率も今月1日の3.9%から急増している。

ロサンゼルスの検査件数は11倍超

 ロサンゼルスと東京では、検査数にも大差がある。ロサンゼルスは東京より感染者数ははるかに多いが、検査数もはるかに多い。7月17日時点での東京都の累計検査数は134,889人。累計陽性者数は8,933人。ロサンゼルスの場合、累計検査数は149万人超と、東京の11倍超で、累計陽性者数は15万人を超えている。この検査数の大きな差を考慮すると、東京には検査を受けていないために感染が判明していない陽性者が非常に多数潜在していることは確かだろう。

 山中教授も「検査数が数十分の1以下であること、入院者数が増加傾向にあることから要注意です」と検査数の少なさを問題視している。

 ちなみに、ロサンゼルスの累計検査数は、約3ヶ月前の4月21日時点で134,466人と、東京の7月17日の累計検査数に近い数に達していた。4月21日時点のロサンゼルスの陽性者数は16,971人と現在の東京の陽性者数の倍近い。1週間の平均陽性率も11.6%と現在の東京の陽性率の倍近かった。現在の東京の検査数と同じくらいの時点では、ロサンゼルスの状況の方がはるかに悪かった。

8割以上が「緊急事態宣言」再発令に賛成

 小池都知事は1日の検査数増加を図ろうとしているが、東京の検査数が今のロサンゼルスと同じ149万件超に達した時、陽性者数はどこまで増えているのか? それ以前に、149万件のような莫大な検査数に達することができるのかも疑問だ。達する頃には、すでに拡大を始めている感染経路不明の市中感染は全国に蔓延しているのではないか。

 市民の不安も高まっている。毎日新聞の世論調査によると、自分が新型コロナに感染する不安を「感じる」は81%に上っている。

 また、同じ毎日新聞の世論調査では、政府が再び「緊急事態宣言」を発令すべきだと思うかも聞いたところ「地域を限定して発令すべきだ」が64%で、「全国に発令すべきだ」の20%と合わせて8割以上の人々が政府対応の強化を求めている。

 感染者数が増加しているものの「緊急事態宣言」を出さないことについて、政府は、重症者が少なく、病院も逼迫していないという理由を述べていたが、この1週間で、感染は幅広い年齢層に拡大しており、重症者の数も増加している。市民の不安は高まっているのだ。

 不安なのは、それだけ、感染の実態がわからないからだろう。自分自身が感染しているのかいないのかわからないのは不安だし、濃厚であれなかれ、日常生活の中で接触した人が感染しているのかいないのかわからないのも不安である。

 小池都知事が都民の不安にどう応えるのか、注目したい。