米・新型コロナの検査が受けられず死亡か 感染者急増で封じ込めを断念 検査に優先順位

ドライブスルー検査が各地で始まった米国では、確認された感染者数も急増している。(写真:ロイター/アフロ)

 感染が我が身に迫っている危機感に襲われているからだろうか、ジョンズ・ホプキンス大学が出す、新型コロナウイルスによる感染者数や死者数の集計を確認することが、筆者の朝の日課になっている。

 集計は、アメリカでの感染者数の急増を示している。3月21日は前日20日より約7000人も感染者数が増えていた。検査数が増加しているから感染者数が増えるのも当然ではあるが、このペースで増えて行けば、イタリアの感染者数を超えるのは時間の問題かもしれない。

 それに、最近、救急車の音が以前よりも頻繁に聴こえてくるようになったのも、とても気になっている。

 外出禁止令はカリフォルニア州に続き、ニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州、イリノイ州、オハイオ州、ルイジアナ州、デラウェア州でも出され、全米の3分の1にあたる1億100万人の人々が外出禁止の対象となっている。

 トランプ氏は、ニューヨーク州に対しては「大規模災害宣言」も行ったが、同様の宣言はカリフォルニア州やワシントン州に対しても行われる可能性があるという。

感染者数予測は様々

 アメリカでの新型コロナによる感染者数については、様々な予測が行われている。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、コロンビア大学の研究者の分析に基づき、今後2カ月で感染者が65万人に上る可能性があると報じた。

 ジョンズ・ホプキンス大学のマーティー・マカリー教授は「米国内では、5万~50万人の感染者が歩き回っている」と話している。

 国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長のアンソニー・ファウチ氏は「思い切った封じ込め策を取らなければ、感染者数は数百万人に達する」という見解を示した。

 アメリカの感染者数は最大9600万人に達すると推定している学者もいる。

  CDCは、対策を講じない限り、感染者数は1億6000万人から2億1400万人になるというシナリオもたてている。

医療崩壊を懸念

 検査数が増えて感染者数が増大する中、アメリカでは、今、医療用マスクや人工呼吸器、ベッドなどが不足し始めており、医療崩壊が危惧されている。特に、ニューヨーク州やカリフォルニア州、ワシントン州など感染者数が多い州は、医療器具の不足が深刻化している。

 筆者が住むロサンゼルスでは、病院の医師が「N95マスクが不足しているため、持っている人がいたら寄付してほしい」とテレビで窮状を訴えている。

 医療用マスク不足から、病院の従業員たちは、マスクの手作りまで始めた。また、市民の間からは、マスクを寄付する者も現れている。

 ベッド数不足から、閉鎖されていたLA郊外のロングビーチ市の地域病院も再開されようとしている。

 LA郊外のポモナ市にあるシェラトン・フェアプレックス・ホテルは、23日から、ホテルの244の客室を、新型コロナの感染者や症状があり検査結果を待っている人々の隔離用に提供することになった。

 官民一体となって、地域ぐるみで、新型コロナと闘おうとしている姿勢が見てとれる。

 しかし、そうしなければならないほど、アメリカはリソース不足のため、増える感染者に対応できない状況になっており、医療崩壊の危機に瀕しているのである。

検査に優先順位へ

 この状況から、検査数拡大を重視してきた米政府は、ここにきて、検査に優先順位をつける方向へとシフトし始めた。

 米国時間3月21日、ペンス副大統領は検査のガイドラインを発表、感染リスクが高い「入院している患者、医療従事者、症状を見せている介護施設の居住者、心臓や肺に基礎疾患を抱える65歳以上の高齢者」を優先的に検査することに対して、国民に理解を求めたのだ。日本同様、軽い症状の人々の検査は後回しにされることなったのである。

 検査規模拡大を訴えていたファウチ氏も「すべてのアメリカ人が検査を受ける必要はない。みなが検査を受けにいくと、感染防護用具、マスクやガウンなどが無駄に使われることになるかもしれない。それらは、患者のケアに当たっている医療従事者のためにとっておかなくてはならない」と訴えた。

 アメリカでは各地でドライブスルー検査が始まり、FDAは45分で結果が出る検査キットも認可したばかりなのだが、検査態勢が整い、感染者が増えても、医療側が感染者の受け入れに対処できない状況を、米政府は懸念し始めたのだ。

少数にしか検査を行わず

 実際、ロサンゼルス郡は検査により感染者を発見して隔離することで感染拡大を封じ込める戦略を断念し、感染のピークを遅延させる戦略へシフトした。米紙ロサンゼルス・タイムズは、「ロサンゼルス郡は感染封じ込めのために患者を検査することは断念し、陽性という結果が出た時に治療法を変更する可能性がある患者だけ検査するよう医師たちに通達した」と報じている。

 医師たちは、この通達について、感染は疑われるものの、風邪のような症状で自宅隔離できる患者の検査は行わず、入院治療が必要だと判断した場合だけ検査を行うということだと解釈しているという。

 同じ状況はニューヨークでも見られる。

 米紙ワシントン・ポストによると、ニューヨークのマウント・サイナイ病院には、毎日、呼吸器症状がある100人以上の患者が緊急治療に訪れているが、そのうち、新型コロナの検査が行われるのは少数だという。医師たちは、市中感染拡大の状況から、発熱、咳、呼吸器症状、風邪のような症状で来る患者はみな感染していると仮定してはいるものの、治療薬がまだない以上、彼らを検査してもどうにもならないと考えているようだ。

 つまり、医師は感染を疑っても、患者が治療が必要になるような症状を示していない限りは検査を行わず、自宅で隔離させる方針を取っているのだ。それだけ、リソース不足は深刻ということになる。

検査拒否され、死亡か

 しかし、問題は、検査を受けらなかったために、重篤化して死亡した人も出てきていると考えられることだ。

 ロサンゼルスのCBSテレビが、3月20日、とても悲しいニュースを報じた。

感染症状を示していたが、検査をされずに亡くなったフリオさん(左)と妻のジュリーさん(右)。写真:losangeles.cbslocal.comより
感染症状を示していたが、検査をされずに亡くなったフリオさん(左)と妻のジュリーさん(右)。写真:losangeles.cbslocal.comより

 LA郊外のサン・ガブリエル市に住むフリオ・ラミレズさん(43歳)は、国内旅行から帰宅後、発熱、筋肉痛、空咳など風邪のような症状を見せ始めた。機内で隣に座っていた乗客が咳をしていたという。

 基礎疾患はなく、病気にもかかったことがない健康体のフリオさんだったが、9日、受診に行こうと病院に電話。しかし、医師は電話で、タミフルと風邪薬を処方しただけだった。11日、フリオさんは再び病院に電話したが、返事はなかった。

 13日、呼吸困難に陥ったフリオさんは、妻のジュリーさんに車椅子に乗せられ、緊急治療棟に行った。そこではレントゲン撮影をされ、結果が伝えられることにはなったものの、結局、医師からは診察されず、新型コロナの検査もされなかったという。

 フリオさんは16日朝、亡くなった。

「病院側は、車椅子に乗った呼吸困難な夫を目にしたら、診察すべきだった」

とジュリーさんは涙ながらに訴えている。

 フリオさんが感染していたかは不明だ。検視局は、病院側が死因を肺炎と断定したため、検視を行わないという。そのため、ジュリーさんは夫が新型コロナで亡くなったか、独立機関で検査してもらうという。

 フリオさんのようなケースは、氷山の一角ではないのか。検査を受けられず、新型コロナが原因なのかわからぬまま、命を落としていく人々。

 そうならないためにも、誰もが等しく検査を受け、治療を受けられるよう、リソースが拡充されなけばならない。

 ロサンゼルスでは、前記したように、閉鎖されていた地域病院が再開されたり、ホテルが感染者のために客室を提供したりする動きがあるが、今は、地域ぐるみでリソース拡充を図り、新型コロナと闘う時なのだ。