ロシア疑惑 公開されたムラー報告書の中身 「大統領としては終わりだ」とトランプ氏

公開されたムラー報告書は黒塗り部分も多い。(写真:ロイター/アフロ)

「これで大統領としては終わりだ。私はもうだめだ」

 これは、本日、アメリカのニュースの見出しによく引用されたトランプ発言だ。

 米国時間の本日4月18日に公開された448ページに及ぶムラー氏の調査報告書によると、2017年5月、ムラー氏が特別検察官に任命されたことを知った時、トランプ氏はそのことを教えてくれたジェフ・セッションズ氏(この時、司法長官を務めていた)に弱音とも取れるような上記の一言を放ったのである。

 米国民が公開を待ち望んでいたムラー氏の調査報告書。

 黒塗り部分が非常に多いのだが、その中には、先日、バー司法長官がわずか4ページにまとめた要約文の説明とは隔たりがある見解が記されている。

 実際、「ムラー氏の報告書とバー司法長官の要約文では意見の相違があるだろう」という予測も出ていたが、その通りだったと言える。(詳しくは、終わらぬロシア疑惑 「司法長官は何かを隠している」とウォーターゲート事件隠蔽の首謀者 をお読み下さい) 

 専門家からは「バー司法長官はうまく色付けして書いていた」という批判の声も上がっている。

 先日、バー司法長官の要約文が発表された後、トランプ氏は“共謀も司法妨害もなかった”と明言し、勝利宣言をした。

 しかし、公開された報告書によれば、トランプ氏は司法妨害を行おうとしていたし、トランプ陣営はロシアの介入に気づき、それから利益が得られることがわかっていたのだ。しかし、ムラー氏はロシアとの共謀の証拠は見つけられず、司法妨害については結論が出せなかったのである。

側近たちが司法妨害を食い止めた

 まず、トランプ氏の司法妨害疑惑について。

 報告書によると、トランプ氏は司法妨害をしようと側近たちに指示を出していたが、側近たちはトランプ氏の指示を実行せず、司法妨害が起きるのを未然に食い止めていたことがわかった。

 それについて、報告書にはこう記されている。

「捜査に影響を与えようとする大統領の取り組みはたいてい成功しなかった。大統領の側近たちが指示を実行したり、リクエストに応じたりするのを拒否したからだ」

 例えば、トランプ氏はムラー氏解任を側近に指示していたことがわかった。2017年6月、当時大統領法律顧問を務めていたドン・マクガーン氏に電話をして「司法長官代行に電話し、ムラー氏を解任するよう伝えてほしい」と指示していたのだ。しかし、マクガーン氏はその指示に従わず、代わりに辞任した。トランプ氏を、ウォーターゲート事件の際に捜査していた特別検察官を解任する画策をし、最終的には辞任に追い込まれたニクソン元大統領の二の舞にしてはならないと考えたからだ。

 ムラー氏は司法妨害について、バー司法長官の見解とは裏腹に、こう結論づけている。

「司法妨害が起きなかったという結論は出せなかった」

 つまり、司法妨害についてはまだ疑惑が残っているとしたわけである。

ロシアから利益が得られると期待

 また、トランプ氏のロシアとの共謀疑惑について、報告書には、トランプ側がロシアから利益が得られると期待していたことが書かれているが、共謀や連携が起きたかは証明できなかったと以下のように記されている。

「捜査は、ロシア政府がトランプ政権から利益を得られることに気づいてその確保に動き、また、トランプ陣営がロシアが盗んでリリースした情報から選挙上利益が得られると期待していたことは証明したが、トランプ陣営のメンバーが、選挙妨害活動において、ロシア政府と共謀したり連携したりしたことは証明しなかった」

 また、トランプ氏は繰り返し、選挙陣営の側近たちにクリントン氏が削除したメールを見つけるよう依頼していた。

トランプ発言から5時間以内にハッキング

 さらには、2016年7月、トランプ氏が「ロシアよ、もし聞いているなら、紛失した(クリントン氏の)メール3万通を見つけてくれるといい」と演説で促してから約5時間以内というタイミングで、ロシア側がクリントン氏の個人事務所を狙ってハッキングしたことも、以下のように記されている。

「トランプの発言から約5時間以内に、GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報部)のオフィサーたちは初めてクリントンの個人事務所を狙った。トランプ候補の発言後、ユニット26165は、クリントンの側近のメールアドレスを含む、ドメイン(黒塗りにされている)の15のメールアドレスに悪意のあるリンクを作って送った」

 また、ムラー氏はトランプ氏に書面で質問をしていたが、トランプ氏はそれに対し、30回以上も「思い出せない」「覚えていない」などと回答していた。ムラー氏は書面回答では不十分だと考え、トランプ氏に事情聴取したいと考えていたようだ。しかし、大統領を事情聴取のために召喚するには手続きに時間を要するため、見送った。

求められるムラー証言

 トランプ陣営とロシア陣営の双方はお互いに利益を得ようとしていたし、トランプ氏は司法妨害をしようとしていたのである。

 報告書にはまた「議会は大統領が司法妨害したかどうかを見つける能力を持っている」とあり、出せなかった司法妨害に関する結論については議会が判断するよう示唆している。

 早くも、民主党大統領候補からは、黒塗りされていない全報告書と報告書の元になった証拠書類の提出を求める声や、ムラー氏を証人として議会に召喚すべきだという声が上がっている。

 また、下院司法委員会のナドラー委員長も、ムラー氏の議会証言を求めている。

 収束したかに見えたロシア疑惑だが、これから本当の事実が見えてくるのかもしれない。