アメリカ食品医薬品局(FDA)の化学者、食品から発ガン性が懸念されている化学物質を検出

発ガン性のリスクがあると懸念されているグリホサートを主成分とするラウンドアップ。(写真:ロイター/アフロ)

 アメリカでは、朝の食卓によく並ぶグラノーラやコーンミール。日常的に食べられているこれらの食品に発ガン性のリスクがあると懸念されている化学物質グリホサートが残留していることが、アメリカ食品医薬品局(FDA)の内部メールから判明し、懸念が広がっている。内部メールは英ガーディアン紙が入手したものだ。

 問題の内部メールとは、2017年1月、FDAの化学者リチャード・トンプソン氏が同僚に送った以下のメールである。

「小麦クラッカー、グラノーラ、コーンミールを自宅から持ってきたが、これらすべての食品にかなりの量のグリホサートが残留していた。手元にある食品の中で、グリホサートが残留していなかったのはブロッコリーだけだった」

 トンプソン氏が自宅から持ってきた食品を非公式に調べたところ、それらにはかなりの量のグリホサートが残留していたのである。

 また別の化学者が書いた内部メールには、トウモロコシからも、EPA(アメリカ合衆国環境保護庁)に報告義務がある、許容量以上のグリホサートが検出されたことが指摘されていた。

 FDAは2年ほど前から、食品にグリホサートが残留しているかテストを行なっており、年内か来年初頭にはその結果が発表される予定になっているが、この内部メールにより残留が早くも確認されてしまったわけだ。

 グリホサートは、モンサント社の「ラウンドアップ」という除草剤に含有されている主成分として知られ、多くの農業従事者が穀物生産の過程で使用している他、公園や庭などの除草用としても世界中で広く使われている。日本でもよく使われている除草剤の一つだ。しかし、以前から、その安全性が議論されてきた。FDAやモンサント社は法定許容量以下なら健康被害はないと主張しているが、健康被害を引き起こす可能性があるという研究結果も出されているからだ。

 2014年には、「環境調査と公共衛生ジャーナル」が、農地で長期間グリホサートに晒されている農業従事者は非ホジキンリンパ種になるリスクが高まるという研究論文を掲載。

 2015年にはWHO(世界保健機関)の傘下で、化学物質の人体における発ガン性を評価しているIARCが、グリホサートを発ガン性の可能性がある化学物質のリストに加えている。

 また、2017年には、カリフォルニア州が、グリホサートをガンを引き起こす可能性がある化学物質のリストに加えた。

 民間の調査でグリホサートが検出された食品が多数あることもわかり、カリフォルニア大学サンフランシスコ校が行なった尿テストでは、試験を受けた人々の93%からこの物質が検出されるというテスト結果も出ている。

 グリホサートは、微量であっても人体に入ると内分泌撹乱物質となり、肝機能や腎機能を変える可能性があるという研究結果もある。

 その一方で、グリホサートとガンの相関関係を否定する研究結果も出されている。

 2015年には、欧州食品安全機関が、食品中のグリホサートは人体にガンを引き起こす可能性が低い化学物質であると発表。

 また、「ラウンドアップ」の使用者がガンを発症したかを知るため、除草剤を使用した5万人以上の人々を追跡調査したアメリカ国立ガン研究所は、グリホサートとガンの相関関係は見られなかったという研究結果を昨年11月に発表している。

 グリホサートの安全性をめぐって、肯定派と否定派が真っ向から対立している状況なのだ。

 U.S. Right to Knowによると、現在、モンサント社に対して400件以上の訴訟が起きており、約3500人の原告が“グリホサート に晒されたために自分たちや自分たちの家族が非ホジキンリンパ腫を発症した、モンサント社は健康リスクを隠蔽している”と主張しているという。

 6月18日から、サンフランシスコ郡最高裁判所で、集団訴訟裁判が始まるが、今回のFDAの内部メールで判明した事実も裁判に影響を与えるかもしれない。裁判所はグリホサートの安全性にどんな判断を下すのか、裁判の行方が注目される。