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ラスベガス銃乱射事件から4ヶ月 新たな重要参考人が浮上、そして明らかになった新事実とは?

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
58人の死者と851人の負傷者を出し、近年では米国史上最悪の銃乱射事件となった。(写真:ロイター/アフロ)

 58人が死亡し、851人が負傷(うち、422人は銃撃により負傷)したラスベガス銃乱射事件からもうすぐ4ヶ月。1月19日、ラスベガス・メトロポリタン警察が、81ページに及ぶ調査報告書をリリースした。捜査当局は事件後、2000を超える情報や21560時間に及ぶビデオなどを調査したが、現在までのところ、乱射後自殺したスティーブン・パドックの犯行動機の解明には至っていない。

 しかし、今回の調査報告で注目されていることが2点ある。

パドックは、マンダレイベイホテルから1100発以上の銃弾を乱射した。(筆者撮影)
パドックは、マンダレイベイホテルから1100発以上の銃弾を乱射した。(筆者撮影)

新たな重要参考人が浮上

 一つは、新たな重要参考人が浮上したことだ。捜査当局は「銃撃犯は一人しかいなかった。それはパドックだ」と断定したものの、何らかの形で、犯行に関与した別の人物がいる可能性がある。現在、FBIが、その人物を捜査中で、60日以内に、起訴される可能性があるという。

 二つ目は、パドックの4台のラップトップコンピューターから数百枚にのぼる児童ポルノ画像が発見されたことだ。捜査当局は、現在、この児童ポルノ画像の出所を調査している。昨年10月には、パドックの弟ブルースのコンピューターからも、600枚もの児童ポルノ画像が発見され、ブルースは逮捕された。

パドックの家は、ラスベガスから120キロほど北のメスキートという街にある。(筆者撮影)
パドックの家は、ラスベガスから120キロほど北のメスキートという街にある。(筆者撮影)

銃の所持数が激増、カリフォルニアのビーチも銃撃ターゲットに

 他にも、調査報告書から、以下のような事実が明らかになった。

1. 事情聴取を受けていたパドックの恋人マリルー・ダンレーには罪が問われない模様だが、ダンレーによると、パドックは細菌恐怖症で、匂いにも敏感であった。また、犯行の1年前からは、パドックは徐々にダンレーと距離を置くようになり、二人は恋人のような親密な関係ではなくなっていたという。

2. 事件の前月、ダンレーも、パドックが銃撃を起こしたマンダレイベイホテルに宿泊していたが、その時のパドックの様子を奇妙に感じていた。パドックが絶えず窓の外の、事件現場となったコンサート会場の方を見たり、窓の前を動き回っていろいろな角度から会場の方を見たりしていたからだ。

3. パドックは友人や親族に「いつも気分が悪く、痛みや疲れを感じている」と話していた。

4. パドックがかかっていた医師は犯行の一年前に最後にパドックに会っているが、パドックは様子がおかしく、感情を殆ど見せなかったという。医師は双極性障害を疑った。パドックに抗うつ剤の服用を勧めたが、パドックは拒み、抗不安剤の処方だけを受け入れた。パドックは薬を怖がり、よく服用を拒んでいたという。

5. ギャンブルに負けて大きな借金を負っていたという報道があったが、パドックは借金を完済していたこともわかった。

6. カリフォルニア州のサンタモニカやラホヤビーチも銃撃のターゲットに考えていた。昨年5月、パドックは、ベニスビーチやサンタモニカのフェアマウントミラマーホテル、サンディエゴ近郊のラホヤビーチをグーグルマップで検索し、「サンタモニカビーチはどれほど混雑しているのか?」とグーグルで質問していた。

7. 所持する銃の数が、犯行前に一気に増えていた。2016年9月以前の34年間の間で、パドックは29丁の銃を購入したが、それ以降の11ヶ月の間に、55丁以上の銃や照準器、ケース、バンプストック(全自動小銃のように高速連射を可能にする装置)、弾丸など100個以上のアクセサリーを購入していた。ホテルの部屋からは23丁の銃が発見されたが、うち12丁はバンプストックが装備されたものだった。銃撃に使われた弾丸の数は1100弾以上で、4000弾以上の弾丸が未使用のまま残っていたという。

8. ホテルの部屋からは、監視装置とシュノーケル用具(マウスピースつきの青いプラスティックチューブやスキューバ用マスクなど)が発見された。

パドックは、家の近くにある銃販売店にも姿を現していた。(筆者撮影)
パドックは、家の近くにある銃販売店にも姿を現していた。(筆者撮影)

ISが関与したのか?

 調査報告書が発表される前日、共和党議員のスコット・ペリー氏が、パドックがテロリストと関与していた可能性があると訴えた。

「変です。全然納得が行きません。事件から4ヶ月経ちました。犯人は死に、捜査当局は単独犯だと言っていますが、我々は検死結果を得られていない。それ以上に困ったことに、最近、私はこの事件に関して、南の国境からテロリストが侵入した可能性があるという信頼できる情報を知らされました。また、事件が起きる前、ISは、昨年6月と8月の2度、ラスベガスを攻撃すると警告していました。また、事件後、4度、ISは自分たちの犯行だと主張しているんです。しかし、捜査当局は、犯人はテロとは関係なく、単独に行ったと言っている。納得が行きません」

 捜査当局は、パドックがISなどの思想集団と関わっていた証拠はないと一貫して主張している。今回、新たに浮上した重要参考人がどういった人物なのか、今後の捜査の行方が注目される。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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