この1年、コロナ禍でハローワークやDV相談、給付金申請など、役所の窓口は常に混み合っている。長時間待たされて苛立つ人など、窓口では殺伐とした雰囲気が漂うこともあるのだが、その現場で働いている人の多くは短期契約を繰り返す女性非正規公務員だ。

「役所で働いていれば安心」という価値観はもはや過去のものとなり、全国の市区町村で働く職員の約半数が非正規公務員である。特に今年度から始まった1年ごとに契約(任用)される「会計年度任用職員」の約8割が女性で占められているのだという。

年収200万円前後という人が多く、”官製ワーキングプア”として問題化される中で襲いかかったのが、コロナ禍であった。

昼は役所で相談員、夜は飲食店で副業パート

婦人相談員の藍野美佳さん(52歳)は、コロナ禍がはじまった昨年3月ごろから仕事が急増し始めた。緊急事態宣言下のステイホームの影響で増加したDV相談に加え、夫のもとから逃げているDV被害者が特別定額給付金を受給するための書類作成とそれに伴う面談に追われた。

そこからDVや生活相談など、新規の相談に繋がり、担当するケースは増大していったという。藍野さんの勤める市役所には婦人相談員は彼女一人しかいない。

「相談者にとって行政窓口は、何とか生き延びた末にたどり着いた最後の砦。『ここなら大丈夫』と信頼してもらうことが大切です。緊急に動かなければならない案件も多く、GW中も出勤して弁護士のところに同行したり、LINEに寄せられる相談に対応したりしました」    

休日返上で働く藍野さんも会計年度任用職員。勤務は週30時間、手取りは月10万円ほどにしかならない。藍野さん自身、シングルマザーでこれだけでは生活が立ち行かないため、婦人相談員になった8年前から、役所の仕事が終わった後、飲食店等でのアルバイトを掛け持ちする生活。ファミレス、焼肉店、ホテルの清掃、倉庫でのピッキングなどさまざまなバイトをしてきたという。

「役所で9時から16時まで働き、シフトによっては夜中から朝までバイトに入り、栄養ドリンクを飲んで出勤するのが常でした。私自身がDV被害者で支援を受けて救われた経験があるので、この仕事に対して強い思いがあるのです」

しかし昨年8月、そんな藍野さんを大きなアクシデントが襲う。出勤途中に自損事故を起こし、10日間入院することになったのだ。

「1ヶ月ほど休みなく働いていた矢先、一歩間違えば即死していてもおかしくない大事故でした。50代になったころから今の生活に肉体的しんどさを感じていましたが、今は本気で転職を考え始めています」

相談者の命に関わる欠かせない仕事であり、多くの人たちの命を救ってきたであろう仕事が低賃金、昇給なし、さらには会計年度任用職員という1年ごとの契約となったことについて憤りと限界を感じている。

女性非正規公務員の実態を訴える集会に1200人

この状況は彼女に限ったことではない。地域住民の命に関わる公務の現場で、非正規で働く多くの人々は低待遇の中、疲弊しているーー。こうした状況を何とかしようと、3月20日、東京・千代田区で非正規公務員の当事者らが呼びかけ、緊急集会「官製ワーキングプアの女性たちーコロナ後のリアル」が開かれた。オンラインを含め、約1200人が参加した。

集会では藍野さんのほか、ハローワークや学童保育、学校図書館等で非正規公務員として働く女性たちからの発言が続いた。いずれも専門知識や資格を必要とする仕事であるにもかかわらず、賃金は安く、年度ごとの契約となるため、来年も仕事があるかどうかの保証すらない状態だ。

集会で基調講演を行った竹信三恵子さん(ジャーナリスト)は非正規公務員問題の背景にはその多くを占める女性たちに対して「男性に養われているのだから低待遇で構わない」という社会通念があると指摘する。

「コロナ禍にあっても強い使命感を持って働き続ける一方で、”一年雇い止め制度”が合法化され、低待遇が固定化する中で、引き裂かれるような思いで働いている人がいる。非正規公務員の待遇悪化は公共サービスの劣化にも直結する。非正規公務員のネットワークをつくり、この状況に立ち向かっていかなければならない」と話した。

集会で講演するジャーナリストの竹信三恵子氏(筆者撮影)
集会で講演するジャーナリストの竹信三恵子氏(筆者撮影)

同じく基調講演を行った上林陽治さん(地方自治総合研究所)は、各国の女性公務員の比較を行い、公務員に占める女性比率が高い国ほど、男女平等度合いが高いという事実を明らかにした。

今回の主催者らは今後も当事者と繋がり、情報を発信していきたいとしている。詳しくはこちらまで。https://nrwwu.com  当日の動画も視聴できる。