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箕面市のPRラッピング列車も登場 目前に迫った北大阪急行電鉄の延伸事業を見る

伊原薫鉄道ライター
ラッピングトレインのお披露目会での一コマ。箕面市のゆるキャラも駆け付けた

 大阪府北部を走る北大阪急行電鉄(以下「北急」)は2023年8月23日に、延伸工事を進めている千里中央~箕面萱野間を2024年3月23日に開業させると発表した。8月1日には、延伸区間の沿線をイメージした「箕面ラッピングトレイン」の運行も開始し、好評を博している。新たな一歩を踏み出そうとしている北急の“これまで”と“これから”を見てみよう。

延伸に向けラッピング列車が運行開始

今回登場した2種類のラッピング列車。鮮やかな塗装が目を引く(特記以外の写真は全て筆者撮影)
今回登場した2種類のラッピング列車。鮮やかな塗装が目を引く(特記以外の写真は全て筆者撮影)

 今回デビューしたラッピング列車は、箕面大滝や紅葉を基調としたデザインの「箕面四季彩(みのおしきさい)もみじ号」2編成と、箕面市PRキャラクター「滝ノ道ゆずる」「モミジーヌ」を描いた「ゆずるとモミジーヌ仲良しトレイン号」1編成の、2種類計3編成。どちらも10両編成のうち両端2両ずつにラッピングが施されている。赤色や黄色、緑色などを使った鮮やかなデザインで、ホームに入ってきたときのインパクトはなかなかのもの。北急は路線の大半が地上区間となっているが、青空との対比も美しく、PR効果は抜群だ。また、車内の吊り広告や液晶モニタなども箕面市をPRするものとされている。

箕面市のゆるキャラ「滝ノ道ゆずる」と「モミジーヌ」が描かれた「ゆずるとモミジーヌ仲良しトレイン号」2号車の側面。子供にも大人にも人気となりそうだ
箕面市のゆるキャラ「滝ノ道ゆずる」と「モミジーヌ」が描かれた「ゆずるとモミジーヌ仲良しトレイン号」2号車の側面。子供にも大人にも人気となりそうだ

 ラッピング列車の愛称は公募によって決定。運行開始を前にした7月29日には、桃山台駅近くにある車庫で愛称表彰式とお披露目会も行われた。式典には、北急の岩元仁常務取締役や箕面市の上島一彦市長も参加し、「1970年の開業以来、吹田市と豊中市を走ってきた当社の路線が箕面市へと延びる。来年春の開業に向け、安全・安心を第一に準備を進めてゆく」(岩元常務)、「半世紀以上前からの、沿線住民の夢だった延伸がいよいよ実現する。このラッピング列車を通じて箕面の自然の豊かさや便利さ、住みやすさなどを多くの人に知っていただきたい」(上島市長)とコメントした。

「箕面四季彩もみじ号」の先頭車。自然豊かな箕面の四季が色鮮やかに描かれている
「箕面四季彩もみじ号」の先頭車。自然豊かな箕面の四季が色鮮やかに描かれている

 なお、今回ラッピングされた車両は3編成とも延伸開業に向けて新たに製造されたもので、2014年にデビューした9000形の続き番号となっている。基本的な仕様はほとんど変わらないが、防犯カメラを各車両の2カ所に設置するなど、時代に合わせたアップデートが行われた。

大阪万博を契機に開業

万博会場の横を走る北急の車両。現在この線路跡は中国自動車道となっている(写真提供:北大阪急行電鉄)
万博会場の横を走る北急の車両。現在この線路跡は中国自動車道となっている(写真提供:北大阪急行電鉄)

 北急が開業したのは、1970年2月24日のこと。翌月に開幕する、日本万国博覧会(大阪万博)のメインアクセス手段として建設された。同線は江坂~万国博中央口間の約9kmで、江坂駅からは大阪メトロ(当時は大阪市交通局)御堂筋線に乗り入れ、一体的に運営されている。「わずか9kmなら、大阪市交通局の路線として建設すればよかったのでは?」と思う方もおられるだろうが、大阪市交通局はその名の通り大阪市の一部局であるのに対し、北急の区間は吹田市と豊中市にあたるため、自ら建設や運営を進めづらいという事情があった。そこで、この地域を営業エリアとする阪急電鉄が核となり、大阪府や民間企業なども出資する第三セクターという形で北急が設立されたのである。

 大阪万博が閉幕した翌日の同年9月14日には、仮設の千里中央駅から万博会場に向かう部分が廃止され、代わりに現在の千里中央駅を終着駅とする形で“再開業”。以降は千里ニュータウンに住む人々の通勤通学やお出かけの足として、半世紀以上にわたり使命を果たしてきた。ちなみに同線は一時期、初乗り運賃が日本で最も安く、現在も100円と“日本最安タイ”を誇るが、これは万博輸送が想定以上に好調だったことで建設費の大半がまかなわれた結果。相互直通運転を行う路線は2社の初乗り運賃が必要となり割高感が生じるものの、北急と大阪メトロの場合はこの安さのおかげで負担が軽減されている。

半世紀にわたる悲願だった延伸計画

千里中央駅北側の延伸工事部。手前の少し汚れた部分が1970年の開業当時に建設されたトンネルで、黒い接続部分の奥が新たに建設されたトンネルだ(2022年11月撮影)
千里中央駅北側の延伸工事部。手前の少し汚れた部分が1970年の開業当時に建設されたトンネルで、黒い接続部分の奥が新たに建設されたトンネルだ(2022年11月撮影)

 そんな北急にとって、大阪万博以来の大変化となるのが、延伸事業だ。延伸される区間は千里中央~箕面萱野間の約2.5kmで、新たに箕面萱野駅と箕面船場阪大前駅の2駅が設けられる。千里中央駅から箕面船場阪大前駅の先まではトンネル区間、そこから箕面萱野駅までは高架区間で、既にトンネルや高架橋、駅といった土木構造物は完成。レールも全線にわたって敷設が終わっており、現在は駅の内装や電気・信号関係の工事などが行われている。

箕面船場阪大前駅北側で地下から高架となる付近。奥には箕面萱野駅が見える。既にレールや信号機が設置されていた(2023年9月撮影)
箕面船場阪大前駅北側で地下から高架となる付近。奥には箕面萱野駅が見える。既にレールや信号機が設置されていた(2023年9月撮影)

 新設される2駅の周辺は、これまで鉄道が通っておらず、千里中央駅や近接する阪急北千里駅・箕面駅に路線バスや自転車、自家用車などで出る必要があった。北急線の延伸によって、梅田や淀屋橋、難波など大阪市中心部に乗り換えなしで直通できるように。利便性が飛躍的に向上することから、マンション建設などが進んでいる。同時に、商業施設や公共施設の整備も進められ、街全体が大きく姿を変えつつある。

新たな終点となる箕面萱野駅の現況。撮影場所の両側にある大規模ショッピングモールと直結する(2023年9月撮影)
新たな終点となる箕面萱野駅の現況。撮影場所の両側にある大規模ショッピングモールと直結する(2023年9月撮影)

延伸区間の沿線では再開発が進む。写真は箕面船場阪大前駅前で、右の建物は箕面市立文化芸能劇場(2023年5月撮影)
延伸区間の沿線では再開発が進む。写真は箕面船場阪大前駅前で、右の建物は箕面市立文化芸能劇場(2023年5月撮影)

 延伸計画は1980年代に国の運輸政策審議会が取りまとめた答申に盛り込まれたものの、長らく進展がなかった。だが、2008年に行われた箕面市長選で延伸の実現を目指す候補者が当選したことで、動きが加速。大阪府と北急に加えて国や阪急電鉄、学識経験者を集めた検討委員会が結成され、本格的な検討が始まった。2014年には路線の概要や費用負担の割合などについて関係者間で合意。翌2015年末には事業に必要な国からの特許や認可を取得し、2016年12月に着工へとこぎつけた。高架橋区間での用地買収が遅れたことや工事区間に地中障害物が見つかったことから、当初は2020年度とされていた開業時期は3年延期されたが、その後は順調に進んでいる。2023年8月には延伸線における運賃も認可され、延伸線内の初乗り運賃が160円(加算運賃を含む)となることを発表。事業は最終段階を迎えており、おそらく今年中には試運転が始まることだろう。

 延伸によってさらなる飛躍を遂げようとしている、北大阪急行電鉄とその沿線。一人の鉄道ファンとして、そして子供のころからこのエリアを良く知る人間として、開業を楽しみに待ちたい。

千里中央駅北側の終端部。現在は車止めが設置されているが、これが取り払われる日も近い(2022年11月撮影)
千里中央駅北側の終端部。現在は車止めが設置されているが、これが取り払われる日も近い(2022年11月撮影)

鉄道ライター

大阪府生まれ。京都大学大学院都市交通政策技術者。鉄道雑誌やwebメディアでの執筆を中心に、テレビやトークショーの出演・監修、グッズ制作やイベント企画、都市交通政策のアドバイザーなど幅広く活躍する。乗り鉄・撮り鉄・収集鉄・呑み鉄。好きなものは103系、キハ30、北千住駅の発車メロディ。トランペット吹き。著書に「関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか」「街まで変える 鉄道のデザイン」「そうだったのか!Osaka Metro」「国鉄・私鉄・JR 廃止駅の不思議と謎」(共著)など。

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