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「控除」って何? いまさら聞けない給与明細の見方

井戸美枝ファイナンシャルプランナー/社会保険労務士/経済エッセイスト
(写真:イメージマート)

お給料をもらう前に受け取る「給与明細」。

みなさんはチェックしていますか? いつも捨てている、という人は、待ってください。

額面と手取り金額が違いますね。法定控除を差し引くと、ざっくり8割強になってしまいます。

このように、給与明細は「基本給」や「残業手当」といった給与の内訳だけでなく、お給料から差し引かれた「税金」や「社会保険料」の金額など、さまざまな情報が記されています。昇給などでお給料が変わったタイミング(4月が多いでしょうか)、住民税が変わる6月、社会保険料の金額が変わる9月には、しっかり確認しておきたいところです。

ただ、給与明細には「控除」や「社会保険料」など、なじみのない項目も多いかもしれません。新入社員の方は、初めて税金や社会保険料を払う、というケースもあるでしょう。

そこで、本稿では、かんたんな給与明細の見方をご紹介します。あわせて、税金や社会保険の仕組みもチェックしておきましょう。

具体的にみていきましょう。

会社によって書式は異なりますが、給与明細には大きく分けて3つの項目があります。

給与明細の見本

「画像制作:Yahoo!JAPAN」
「画像制作:Yahoo!JAPAN」

3つのパートに分かれています。

○勤怠・・・・出勤日数や労働時間、残業時間など、就業に関係する項目です。

○支給・・・・基本給や残業手当、通勤手当など、支給(支払われるお金)に関係する項目です。

○控除・・・・税金や保険料など、控除(差し引かれるお金)に関係する項目です。

○勤怠データの項目です。

「出勤日数」「欠勤日数」「残業時間」「特別休暇日数」「有給日数」「有給残日数」などが記載されています。

間違えているケースは少ないと思われますが、出勤日数や残業時間などが間違っていないか、確認するのも良いでしょう。

○支給

会社から支払われるお金の明細の項目です。

「基本給」「非課税通勤費(月15万円までが非課税)」「残業手当」「家族手当」「資格手当」などが記載されています。

会社の規定によっては、「基本給」が、「本給」や「職能給」「職務給」など、細かく分かれている場合があります。

手当には、「時間外手当」や「深夜勤務手当」など超過勤務に関する手当、「役職手当」「資格手当」など仕事の内容や職務に関する手当、「家族手当」「住宅手当」など家族や生活に関する手当があります。

これらの手当は、それぞれの会社が独自に行っています。手当は、会社給与の15%くらいが多いようです。あらためて給与の内訳を確認するのも良いですね。

○控除

上記の支給からは、「税金」と「社会保険料」が天引きされます。お金を差し引くことを「控除」といいます。

税金は、「所得税」と「住民税」の2つがあります。

社会保険料は、「健康保険料」、「厚生年金保険料」、「雇用保険料」、40歳以上の人は「介護保険料」も支払います。

社会保険料を見て、こんなに天引きされるのか...と思われる方も多いかもしれません。ただ、これらは文字通り「保険」です。もしもの事態の時に、役立ちます。

たとえば、健康保険。ご存知の通り、治療を受けた際に医療費の負担を軽減する制度ですが、病気やケガで休業してお給料が支払われなかった場合、お給料の2/3程度が受け取れる「傷病手当金」という制度もあります。

厚生年金は、老後に受け取る年金以外にも事故などによって障害が残ったり、また死亡した場合にも、本人や家族に年金が支給される制度もあります。

雇用保険は、失業した際に受け取れる、いわゆる「基本手当」だけではありません。教育訓練給付金などキャリアアップなどに役立つ給付もあります。

社会保険料の金額は、「標準報酬月額」×「保険料率」で計算します。

「標準報酬月額」は、4〜6月のお給料の平均を、等級ごとに当てはめたもの。その年の「9月から翌年の8月」までの1年間、利用されます。社会保険版の月収ですね。8月と9月の給与明細を比べてください。9月から社会保険料が変わっているかもしれません。

雇用保険料は、健康保険、厚生年金とは違って、実際の賃金で計算します。個人負担率は0.3%。今年10月から0.5%に上がります。

このように、給与明細書を見ると、実際に支払われた手取りの金額や、税金や社会保険料をいくら支払ったかが分かります。手取り金額がわかれば、使う前に貯蓄をする「天引き貯蓄」もやりやすくなるでしょう。

また、給与明細は、会社の倒産や失業など、万が一の事態がおこった時に重要な証拠書類にもなります。少なくとも2年間は保管しておくと良いでしょう。

ファイナンシャルプランナー/社会保険労務士/経済エッセイスト

CFP®、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。前社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。国民年金基金連合会理事。経済エッセイストとして活動。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。近著に『残念な介護楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!増補改訂版』(日経BP社)『親の終活、夫婦の老活』(朝日新書)『フリーランス大全』(エクスナレッジ)『好きなことを我慢しないで100万円貯める方法』(幻冬舎)累計刊行数91万部。

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