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これからどう働く?フリーランス思考のすすめ

井戸美枝ファイナンシャルプランナー/社会保険労務士/経済エッセイスト
(写真:イメージマート)

「定年70歳」時代へ

あなたは何歳まで働くことをイメージしていますか?

60歳、65歳、70歳…あるいは生涯現役でしょうか。

あなたの年齢が20〜30代であれば、「定年70歳」が当たり前になっているかもしれません。

ご存じのとおり、日本人の平均寿命は延び続けています。寿命が延びたことで、退職後の時間が長くなり、その分必要なお金も増えました。加えて、少子高齢化にともなう人口減少によって、働き手が不足しています。

こういった理由から、退職する年齢は徐々に後ろ倒しになりつつあります。

すでに社会の制度も変わりつつあります。厚生年金は70歳まで加入できますし(※)、2021年4月の「高齢者雇用安定法」の改正では、企業に「従業員が望めば70歳まで働けるようにする努力義務」が課せられました(※)。

時代をさかのぼると、1950年代の男性の定年退職の年齢は55歳だったようです。1960年の男性の平均寿命は65.32歳、女性は70.19歳。男性は退職してから10年程度で亡くなる方が多かったと考えられます。

一方、2022年の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳。65歳で退職したとすれば、15年〜20年以上の退職後の期間があることになります。

退職後の期間という点だけで考えると、定年が70歳まで引き上げられることは、それほどおかしなことではないかもしれません。

(※)2022年10月から、厚生年金の加入対象者も段階的に拡大されています。正社員だけでなく、パート・アルバイトとして働く人も加入するケースが今後増えるでしょう。

(※)あくまで「努力義務」ですので、全ての企業が必ず実施する訳ではありません。しかし、今後、定年を迎えた従業員を再雇用する継続雇用期限を70歳まで延ばしたり、退職した従業員と70歳まで業務委託契約を結んだりする可能性があります。

長く働くための「フリーランス思考」

では、この「定年70歳」時代に、私たちはどう対応すれば良いのでしょうか。

その答えを出すことは簡単ではありませんが、ここで筆者が提案したいのは、①「フリーランス思考でできるだけ長く働く」②「いくつかの収入源を確保する」の2点です。

①から考えてみましょう。

実際のところ、清掃や建物管理など、すでに年齢を問わず働ける環境は存在しています。もちろんこうした仕事は社会に必要なものですが、報酬は高くなく、労働条件も良いとはいえないのが現状です。

単価の高い仕事を得たいと考える場合は、ある程度の汎用性があり、需要のあるスキルを身につけておく必要があります。

厄介なのは、そのスキルが時代によって変わること。働く期間が長くなったことで、その間に産業構造の変化が起こる可能性が高まっています。一部の例外はあるものの、1つのスキルで働き続けることは難しくなり、年齢に関係なく「学び続けること」が必要となりそうです。

これは、まさにフリーランスとして働いている状態に近いかもしれません。会社から渡された仕事を受動的にこなすのではなく、能動的に学ぶ必要があるからです。

とはいえ、何を学べば良いのか、どんな仕事をすれば良いのか、悩む人も少なくないでしょう。

これまで経験した業務内容、身につけたスキル、やりがいを感じる場面、能力を発揮できたと思う場面、苦手な業務などを書き出し、じっくり考えてみるのはいかがでしょうか。

これまでのキャリアや取得したスキル・資格を組み合わせて考えてみるのも1つの手です。「意外な組み合わせ」に需要があるかもしれません。

フリーランスとしての働き方については、拙著「フリーランス大全」にも詳しく述べています。ぜひご参考になさってください。

労働以外の収入源を確保するには

続いて②「いくつかの収入源を確保する」を考えてみましょう。

ここまでの話をひっくり返すようですが、70歳まで働けない場合も考えておく必要があります。勤め先に継続雇用などの制度があったとしても、個人の雇用が保証されるわけではありません。

そこで提案したいのが、自分自身の働く以外の収入源や資産を確保しておくこと。

具体的には、株式などへの投資、不動産の運用などが挙げられます。自分が働けなくなっても、お金を預けた企業に働いてもらう。そんなイメージですね。

たとえば、株式に投資する投資信託に毎月3万円ずつ積み立てて、年間の利回りが平均6%だった場合。運用益を元本に加える再投資型の運用をすると、30年後には約3013万円もの資産になります。

その内訳は、積み立てたお金が1080万円に対して、運用益が約1933万円。元本を大きく上回る運用益を得られる計算です。運用で得られた利益をさらに運用されることで、利益が増幅していく「複利効果」が大きな影響を及ぼしていることが分かります。この複利効果は投資期間が長いほど大きくなります。

投資の基本は、「長期間の運用」と「投資先の分散」です。

よって、手堅くかつ簡単に投資をしたい場合は、世界全体の株式に投資できるインデックスファンドが有力な候補となります。

インデックスファンドは、TOPIX、NYダウといった株価指数と同じような動きを目指す投資信託のこと。日本だけではなく、先進国や新興国の株式のインデックスファンドを購入することで、市場全体の平均的な運用成績を得ることも可能です。

インデックスファンドを選ぶ際は、「手数料」と「純資産総額(残高)」をチェックしましょう。株価指数と連動するインデックスファンドなら、商品ごとの運用成績にほとんど違いはありません。よって、手数料が安いファンドが有利といえます。

ただ、この先、株価が下落する場面もあるかもしれません。そうしたタイミングで売却することがないように、投資はあくまでも余裕資金で行いましょう。

また、仕組みが分からない商品には、お金を出してはいけません。世の中にはさまざまな金融商品がありますが、おすすめできるものばかりではありません。複雑な仕組みの商品も増えていますが、こうした商品が優れているとも限りません。たとえ人気商品だと謳われていても、自分でしっかり調べても納得ができない商品には投資しないようにしましょう。

まとめ

いかがでしょうか。

長期間に渡って世界全体に投資を行いながら、65歳以降も働く準備をしておく。そうすれば、経済的に安定した老後を送れる可能性は高くなるはずです。

もちろん、ここでご紹介した方法以外にも、人に合った方法があるはずです。無理にリスキリングをする必要はもちろんありませんし、経済的な条件が整ったのであれば、早めに退職するのも1つの方法です。

いずれにせよ大切なのは、「自分で考える」ということ。当たり前かもしれませんが、誰にでも共通する魔法のアイディアはありません。自分に合った方法を考えながら、少しずつ準備を進めていきましょう。

ファイナンシャルプランナー/社会保険労務士/経済エッセイスト

CFP®、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。前社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。国民年金基金連合会理事。経済エッセイストとして活動。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。近著に『残念な介護楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!増補改訂版』(日経BP社)『親の終活、夫婦の老活』(朝日新書)『フリーランス大全』(エクスナレッジ)『好きなことを我慢しないで100万円貯める方法』(幻冬舎)累計刊行数91万部。

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