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2020年の恵方巻、大手コンビニの食品ロスはどうだったのか?

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:アフロ)

*この記事は、2020年2月25日に公開した「2020年の恵方巻、大手コンビニの食品ロスはどうだったのか?SDGs世界レポ(6)」の連載と記事掲載が終了するにあたって、当時の内容に追記・編集したものです。

2020年2月3日、令和初の節分。2019年に続き、農林水産省は、恵方巻の食品ロスをなくすため、小売業界に呼び掛け、大手コンビニ3社を含む26企業がキャンペーンに参加した。ほとんどの会社は結果を発表しなかったが、ある大手コンビニの関係者から、具体的なデータを教えて頂いた。

全国の平均消化率は95.3%

大手コンビニの関係者によると、2020年2月3日(月)の恵方巻の消化率(売り切れた割合)は、金額ベースで95.3%。かなり高い。

地域別にデータが分かれており、最も高い消化率を誇るのが、北海道地区と南九州で96.4%。

静岡・東東海が96.3%、栃木・茨城96.2%、北九州96.2%、東海と中国地方でそれぞれ96.1%など、96%を超えている地域も多い。

逆に、消化率が最も低かったのが、新潟・北陸で、92.7%。沖縄が93.5%、東北が93.7%など。

兵庫・京滋(京都・滋賀)が94.2%、千葉94.7%、京浜94.7%、東東京94.8%、西東京94.9%。

地域ごとに差はあるにしても、全国平均で95%を超えており、かなり高い消化率と言えるのではないだろうか。

要因その1 食品ロス削減推進法の施行

高い消化率の要因となった一つは、2019年10月1日に施行された、食品ロス削減推進法ではないかと考える。

筆者は2019年2月3日の夜、恵方巻売れ残り調査を行った(1)。2020年2月3日の夜にも調査した(2)ところ、コンビニ・スーパー・百貨店問わず、全般的に夕方以降夜までに完売しているお店の軒数は増えており、売れ残り本数も全体的には減る傾向が見られた。

農林水産省は2019年1月11日、小売業界に対し「需要に見合った数を販売するように」と呼びかけていた。

2019年の節分と、2020年の節分との違いは何か?

食品ロス削減推進法が成立・施行されているかいないかが、違いの一つではないだろうか。

よくも悪くも、日本は、「法律」の、企業に対する規制力が大きい。法律ができたとなれば、企業が動く。

要因その2 クオカードプレゼントキャンペーン

この大手コンビニでは、2020年2月3日をはさんだ数日間、加盟店に対し、恵方巻の販売本数と消化率に比例して、500円のクオカードをプレゼントする「フードロスゼロ」を謳ったキャンペーンを実施した。販売本数が増え、消化率が高くなればなるほど、もらえるクオカードの枚数が増えるというものだ。

ある関係者は、「販売本数を増やそうとしていて、食品ロス削減と反している」と話していたが、一定の効果はあったのかもしれない。

関係者のコメント

このデータを提供してくれた大手コンビニ関係者は、

パンフレットに載っている金額から換算すると、全国での恵方巻の残金額は、およそ3,900円。平均で5.3本が売れ残っていることになる。

2019年より改善したとはいえ、全国規模で換算すると、恵方巻の売れ残りは、かなりの金額と量になる。

地方の一部で売れ残りが多くなっているので、販売を煽られている可能性もあるのではないだろうか。   出典:大手コンビニ関係者の言葉

と語った。

ならコープは全店舗で恵方巻完売

2020年2月8日、奈良生協連主催で、食品ロスの講演を行った。当日、ならコープ(3)の関係者が、「おかげさまで今年は全ての店舗で恵方巻を完売できた」と語っていた。

2019年にも増して、売れ残りがないよう努力した小売関係者は多かったと思う。

食品ロス削減はSDGsの12番

食品ロス削減に関係するSDGsのゴールは複数あり、最も関係が深いのが12番だ。

12番のゴールのターゲットの3番目では「2030年までに世界の食料廃棄を、小売・消費レベルで半減する」と目標を掲げている。

恵方巻だけが問題ではない

恵方巻だけが食品ロスの問題なのではない。一年365日、食品ロスは発生している。

1日しか売ることのできない季節商品というのは、他の食品にも増して、ロスになりやすい。クリスマスケーキであれば、12月24日・25日と、日をまたいで売ることもできるかもしれないが、恵方巻はそうはいかない。具材には、枯渇している海洋資源も含まれている。

今回、一定の結果が得られたが、関係者が語るように、改善したにしても、廃棄している食料は、まだまだ多い。さらなる改善につながるよう、今後とも、食品ロス削減の啓発活動に尽力していきたい。

参考記事

1)「売れ残り試算16億円?」節分夜35店舗の恵方巻、閉店前で残り272本 税金投入され大部分が焼却処分

https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20190204-00113564

2)2020年、恵方巻の食品ロスはどう変わったか?101店舗の調査結果

https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20200204-00161685

3)ならコープ

https://www.naracoop.or.jp

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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