気候サミットとフードシステム「脱炭素の落とし穴」SDGs世界レポート(66)

気候サミット(by Adam Schultz/ Public Domain)

2021年4月22日から23日にかけて、ジョー・バイデン米大統領の呼びかけに応じた40の国と地域がオンラインで参加し、「リーダーによる気候サミット(Leaders Summit on Climate)」が開催された。 米国は、トランプ前大統領が離脱した「パリ協定」に華々しく戻ってきた(1)。

この気候サミットで、バイデン大統領が訴えたかったことを要約すると、次のようになる。

気候危機に立ち向かうには、これまで以上に世界中の国々の協力が必要である。そして、全世界が緊急性と意欲を共有する必要がある。世界各国が手を結ばなくては気候危機を解決することはできない。この10年間が決定的な意味を持つ。世界を成功に導くために、各国が今年とる対策が、すべての違いを生み出す。

2021年は気候危機に立ち向かう運命を決する年

それは、2ヶ月前の2021年2月26日に、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の発表した国別の削減目標(NDC:Nationally Determined Contributions)の進捗状況をまとめた報告書を受け、国連のアントニオ・グテーレス事務総長や国連気候変動枠組条約のパトリシア・エスピノサ事務局長が投げかけた言葉への応答だったのかもしれない。

グテーレス事務総長の言葉は以下のようなものだった(2)。

2021年は世界的な気候の緊急事態に立ち向かう「運命を決する年」です。今日の中間報告書は、私たちの地球にとっての重大な警告です。これは、どの国も気候変動を1.5に抑えるという「パリ協定」の目標を達成するために必要とされる野心的なレベルには達していないことを示しています。

国連気候変動枠組条約のパトリシア・エスピノサ事務局長の言葉は以下の通り(3)。

私たちは、パリ協定の目標を達成するための道筋から、かなり遠く離れたところにいます。私たちは目隠ししたまま、ぞろぞろと地雷原に向かって歩いているのです。次の一歩が大惨事を引き起こすかもしれないのです。

2021年2月時点で、提出された各国の公約がすべて履行された場合でも、世界の温室効果ガス排出量は、2030年までに、2010年比でわずか1%しか削減されない。「パリ協定」に沿って、地球温暖化を産業革命以前のレベルから1.5以内に抑えるためには、今後10年間で温室効果ガスを45%削減することが必要だと、改めて呼びかけたのだ。

この国連の呼びかけを米国のバイデン大統領が受けとめ、中国・EU・ロシア・インド・日本など、温室効果ガスを大量に放出している国を引き込んで開催にこぎつけたのが、今回の「リーダーによる気候サミット」だった。

しかし、気候サミットというと、スコットランドのグラスゴーで開催される「第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)」が2021年11月に控えている。同じような目的で、しかも急ごしらえのサミットを、このコロナ禍に行う意味があったのだろうか。

当然、バイデン大統領にも政治的な思惑があっただろう。トランプ氏によって分断されてしまった米国の傷は深い。バイデン氏が、国民の半数近くいるトランプ支持者たちに自分を大統領として認めてもらうには、今、目の前にある新型コロナと気候変動の危機に対して何らかの成果を見せる必要があったはずだ。トランプ政権の4年間ですっかり地に落ちてしまった世界各国からの信頼を回復させるためにも。

注)新型コロナについては、公約だった「大統領就任後100日間でワクチン接種1億回」という目標は早々と達成し、3月25日に接種回数の目標を2億回に引き上げたが、この修正目標も100日を待たずに達成している(4月24日時点で合計2.22億回。出典:One World in Data)。

「第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)」は、2020年11月に開催されるはずが、コロナ禍で1年延期となっていた。本来であれば、昨年のうちに各国の国別削減目標(NDC:Nationalally Determined Contributions)が発表され、今年から取り組まれていたはずだった。

そこに前述の国連気候変動枠組条約の報告があり、気候変動対策を「最重要課題」とするバイデン大統領としては、自分のリーダーシップを内外に示す、いい機会に思われたのだろう。実際、本気でこの問題に取り組もうと考えたら、すぐにでも各国の国別削減目標を見直させ、着手させないと手遅れになる。11月のグラスゴー(COP26)までのんびり構えている暇はないのだ。

それでは、各国の温室効果ガス削減目標と課題、脱炭素の「落とし穴」について見ていこう。

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奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。Champions12.3メンバー。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てられる食べものたち』他。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/第一回食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

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