世界一 パニック買いをした国 コロナの時代の食品ロス(オーストラリア編)SDGs世界レポ(45)

Sydney, Australia, March 18, 2020(写真:ロイター/アフロ)

オーストラリアのスコット・モリソン首相が、菅首相との会談のために、2020年11月17日から18日にかけて来日するという。同国では、新型コロナウイルス対策で2020年3月から外国人の入国を禁止し、自国民に対しても帰国後14日間の隔離を義務づけている。今回、訪日するモリソン首相も、帰国後には14日間自主隔離することになるため、11月30日から12月10日にかけて開催される連邦議会も、最初の数日は出席できず、オンラインで参加するのだそうだ。「そこまでしてなぜ?」といぶかる記者に、モリソン首相は「日本との関係は特別だから」と答えたと、2020年11月13日付の朝日新聞が伝えている。

国家元首ですら、帰国後14日間の自主隔離をしなくてはならない、ということからも分かるように、オーストラリアは、新型コロナウイルス感染症への対応が早く、しかも対策を徹底させた国だ。

2020年1月30日、WHOのテドロス事務局長は、感染が中国以外でも拡大する恐れがあるとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」だと宣言しながらも、まだ「貿易や人の移動を制限することは勧告しない」と言っていた。にもかかわらず、オーストラリアは、2月1日には中国からの旅行者の入国を禁止している。日本も2月1日から中国からの旅行者に入国制限をしたが、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席の訪日が予定されていたためか、「中国の湖北省に滞在歴のある外国人」と限定していた。湖北省というのは、最初にロックダウン(都市封鎖)された武漢市のあるところだ。

オーストラリア政府は、2020年3月に入ると、新型コロナウイルス感染症対策として、stay-at-home(自宅待機)、1.5mのソーシャル・ディスタンシング、手洗いや咳エチケットを守ること、集会の制限、レストランやカフェなどの外食産業の閉鎖(テイクアウトはOK)、映画館やジムなどの娯楽施設の閉鎖、外国人への入国規制や州境を越える移動の制限などを指示した。

早めの感染対策が奏功し、オーストラリアは当初、台湾・韓国・ニュージーランドと並び、新型コロナの感染抑制に成功した国として称賛された。ところが新規感染者数の減った2020年5月から6月にかけて、徐々に外出規制などを緩和しはじめると、ビクトリア州でパンデミックの「第2波」が発生してしまう。州政府は7月からメルボルンなどの都市部で外出制限などの規制をしたものの、感染者が減らなかったため、8月からは再びロックダウンに踏み切ることになった。外国人の入国禁止に加え、州をまたいでの移動制限も行なったため、オーストラリアの観光産業にとって大きな痛手となった。

1)ビフォア・コロナの食品ロス

まず言えるのは、オーストラリアは、世界で最も食品の安全性が高い国のひとつだということ。「栄養不足のない国」で1位、「世界食料安全保障指数(食料の入手しやすさ)」で7位と、FAO(国連食糧農業機関)からお墨付きをもらっている。オーストラリアは国内消費量よりも多くの農作物を生産していて、71%が輸出にまわされているという。食料自給率の高い、豊かな農業国である。

オーストラリアは栄養不足のない国(Coronavirus (COVID-19) response, Australian Government)
オーストラリアは栄養不足のない国(Coronavirus (COVID-19) response, Australian Government)

また、オーストラリアといえば、英国WRAP(ラップ / 廃棄物・資源アクションプログラム)のライセンスを受け、いくつかの州政府によって、消費者に食品ロスを啓発するための「Love Food Hate Waste(食べものを愛し、無駄を憎もう)」キャンペーンが運営されている。世界初の無料スーパー「オズ・ハーベスト・マーケット」もある。大手スーパーの「Woolworths(ウールワース)」や「Coles(コールズ)」では「Odd Bunch(オッド・バンチ)」や「I'm Perfect(アイム・パーフェクト)」と銘打って、積極的に規格外の農産物が販売されている。また、廃棄される規格外の野菜を飼料にして育てたヒツジを「モッタイナイ・ラム」として売り出すなど、食品ロスの削減に感度の高い国という印象だ。

前述の「Love Food Hate Waste」キャンペーンもそうだが、他国でうまくいっている食品ロス削減対策を見習って、自国の取り組みに活かそうとしているのも、オーストラリアの食品ロス削減対策の特徴と言えるかもしれない。オーストラリアは食品ロス問題の解決のために、2019年、英国から食品ロス問題の専門家であるマーク・バーセル(Mark Barthel)氏を招聘している。バーセル氏は、Tesco(テスコ)・Walmart(ウォルマート)・Marks&Spencer(マークス&スペンサー)・Nestle(ネスレ)などの大手食品企業や、国連、FAOなどの国際組織と共に、25年間、食品ロス削減に取り組んできた専門家である。バーセル氏は「オーストラリアの小売業者にとって割引の廃止は大きな課題となるが、”buy one get one free”(ひとつ買ったら、ひとつは無料)のようなキャンペーンを廃止することは、生鮮食品のロスの削減に大きな違いを生む」と語っている。

それでは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以前のオーストラリアの食品ロスの状況がどのようなものだったかを見てみよう。(以下 有料記事 9,401文字)

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。食品ロス削減を目指す、政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。著書に『賞味期限のウソ』『あるものでまかなう生活』。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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