震災直後メーカーに欠品禁じた企業 1/3ルール緩和から7年1/6課す企業も:SDGs世界レポ(3)

(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

食品ロスの一因となっている、食品業界の3分の1ルール。これを緩和すべく、2012年7月、農林水産省・消費者庁・環境省・内閣府などが「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」を設置した。その後、2012年10月、農林水産省、流通経済研究所と食品業界が「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」を立ち上げた。あれから7年以上経ち、今は2020年。3分の1ルールどころか、もっと厳しい6分の1を課してくる小売がいると、ある食品メーカーが教えて下さり、取材を受けて下さった。

3分の1ルールの概要。諸外国に比べて日本の納品期限が短く設定されている(流通経済研究所調べを元に筆者作成)
3分の1ルールの概要。諸外国に比べて日本の納品期限が短く設定されている(流通経済研究所調べを元に筆者作成)

3分の1ルールとは

3分の1ルールとは、賞味期間全体を3分の1ずつ均等に区切り、最初の3分の1を納品期限とし、次の3分の1を販売期限とするものである。法律ではなく、1990年代に大手小売が設定した商慣習である。これにより、年間1,200億円以上のロスが生じているというデータもある(流通経済研究所調べ)。

たとえば、6ヶ月間の賞味期間の食品があるとする。メーカーが小売などに納品する期限は次の通り。

日本:2ヶ月(3分の1)

米国:3ヶ月(2分の1)

イタリアなどヨーロッパ:4ヶ月(3分の2)

イギリス:4ヶ月半(4分の3)

日本が最も短い。

これが仮に「6分の1ルール」を課されているとすると、納品期限はさらに短くなり、製造後1ヶ月以内に納品しないと返品・廃棄という流れになる。

食品メーカーの現役社員はルール緩和を小売に依頼できない

本来、食品を作る人(メーカー)と売る人(小売)は、対等な立場にあるはずだ。だが、多数のメーカーから取り扱い商品を選択できる小売の方が強い立場にある。そのような優越的立場の濫用を、公正取引委員会は禁じているが、現実には、小売が課すルールに従わなければ、メーカーは「取引していただけない」立場にある。

筆者は2011年9月まで食品メーカーの広報責任者を務めていた。食品メーカーを辞めて独立し、2011年9月から3年間、セカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)というフードバンクの広報責任者を務めていた。

ちょうどその頃、2HJは、農林水産省事業の「全国フードバンク調査」に取り組んでおり、筆者も西日本の小売やフードバンク、福祉団体などを廻っていた。その際、ある小売(スーパー)の経営陣に対し、「賞味期限が短いものも長いものも一律3分の1というのはどうなのか」と伺ったところ、答えは「個別対応は難しい」というものだった。

2012年、「3分の1ルール」に転機が起こる

そこで筆者は、翌年2012年の4月13日に日本は数兆円分もの食糧を捨てている!小売業界の「3分の1ルール」という記事を書いた。

2012年6月に出演したNHK『特報首都圏』という30分番組では、「食品業界の3分の1ルールが食品ロスを生み出している」と発言した。

2012年7月、農林水産省・消費者庁・環境省・内閣府などが「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」を設置した。

2012年10月1日、筆者は「3分の1ルール」緩和へ ~食品ロス31万トンのドイツと500-900万トンの日本~という記事を書いた。

その数日後、農林水産省、流通経済研究所と食品業界が「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」を立ち上げた。

当時、広報を担当していたセカンドハーベスト・ジャパンには、複数のテレビ局と新聞社が取材に押し寄せた。

このように、3分の1ルールについては、2012年が一つの転機となった。

2011年、東日本大震災の直後の物が足りない時ですらメーカーに欠品を禁じた小売とは?

取材に応じてくださったメーカーは、今だに小売が「6分の1ルール」を課してくるという話をされた。

その話の前に、2011年の東日本大震災直後、欠品を禁じた企業についても教えてくださった。

食品メーカー:東日本大震災が起こって、世の中がめちゃくちゃの中でも「物を持ってこい!」と言われましたからね。もう何も手に入らないのに。それでも「欠品は許さない」と言われました。

ーそれはどこの会社ですか?

食品メーカー:それは・・・

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。世界資源研究所(WRI)とオランダ政府が運営し食品ロス削減を目指すチャンピオン12.3メンバー。著書に『賞味期限のウソ』『食品ロスをなくしたら1か月5000円の得』。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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