「本物のきんつばは美味しい」レシピを200年間も守り続ける超老舗の思い

東京・日本橋にある榮太樓總本舗の店頭に展示された金鍔(きんつば)(筆者撮影)

「きんつば」と言われて思い浮かべるのは四角いもの、という人が多いのではないだろうか。でも、実は、本来のきんつばは、丸いものだった。200年前、東京・日本橋(にほんばし)の魚河岸で大人気を呼んだ、栄太郎さんが作ったきんつば。榮太樓總本舗は、文政元年(1818年)創業の和菓子の老舗だ。

株式会社榮太樓(えいたろう)總本鋪の東京・八王子工場と、東京・日本橋本社を訪ね、副社長の細田将己(まさき)さんにお話を伺った。八王子工場では、他の見学者さんと共に案内して頂いた。

「榮太樓のきんつば」の歴史

榮太樓總本舗の社名は、昔、きんつばを焼いて売っていた、ご先祖様の幼名に由来しているそうだ。

細田将己さん(以下、敬称略):創業のお菓子がきんつばです。ご先祖様の幼名が「栄太郎」だったんです。栄太郎が(東京の)日本橋の上にある屋台できんつばを焼いて売っていたのが始まりです。200年前の日本橋、橋の川沿いにある魚河岸の人に「栄太郎のきんつば、栄太郎のきんつば」とかわいがってもらって。今も本社がある日本橋のたもとに160年前、小さい店を「榮太樓總本鋪」という名前で出したのが始まりです。

細田:きんつばは200年前から変わらないレシピ、作り方でやっています。200年前の日本橋の人が「栄太郎のきんつばは、うめえ」と言っていたものを味わっていただければと思います。

きんつばのつばは刀の鍔(つば)

「きんつば」は、漢字では「金鍔(きんつば)」と書く。刀の鍔(つば)のような丸い形が本来だそうだ。

細田:きんつばの「つば」は刀の鍔(つば)です。きんつばというと四角いものを思い浮かべると思いますが、刀の鍔の形、丸い形をしているのが本来のきんつばです。

日本橋の店に展示されている「榮太樓のきんつば」。漢字で「金鍔(きんつば)」と書いてある(筆者撮影)
日本橋の店に展示されている「榮太樓のきんつば」。漢字で「金鍔(きんつば)」と書いてある(筆者撮影)

細田:柔らかい餡を小麦の皮で薄く包んで焼き上げ、刀の鍔の形に抜いていく。薄く包むことが出来ないけれど、きんつばの人気にあやかりたい菓子店が多く、簡易的にきんつばを作り始めて以来、形が四角く中の餡はかたい羊羹のようになってしまった残念な歴史があります。固い羊羹生地を四角く作る方が簡単で日持ちはしますが、生菓子としての金鍔は、味が全然違うんです。

丁寧に2〜3日かけて「あん場」で作るあんこ

細田:この小豆は襟裳(えりも)岬から名前をとったエリモショウズという品種です。和菓子職人はこの小豆を欲します。とにかく小豆の風味が濃いのです。よく「北海道産小豆使用」と書かれていますが、あれは品種が特定されたものではありません。うちはエリモショウズに特化しています。これじゃないと榮太樓のあんこにならない。数年前に北海道に上陸した台風の被害を受けて以来小豆の不作が続いていて、昨年は市場に小豆の在庫がなくなってしまったんです。値段も今までの倍ぐらいに跳ね上がってしまいました。

東京・八王子の工場を案内してくださる細田将己さん(筆者撮影)
東京・八王子の工場を案内してくださる細田将己さん(筆者撮影)

細田:さて、ここはあんこの場所と書いて「あん場」です。和菓子職人にとって一番大変なところです。砂糖も豆も30キロの袋に入っていて非常に重いです。新しく入職された和菓子職人は、大抵あん場から仕事をはじめ、何年か経験し、その店のあんの味を覚えてから職人になります。ここで安定しておいしいあんこが炊けないとおいしいお菓子にならない。同じ北海道産の小豆でも毎年味が違いますが、それを同じ味の餡に仕上げるのが職人の技です。

細田:小豆を煮てゆでこぼすことを「渋切り」といいます。小豆の朱色は、ポリフェノールのような良い成分によるものなのですけれども、最初にゆでこぼしてあげないと、渋いものになってしまうんです。

煮た小豆をいったんゆでこぼす(筆者撮影)
煮た小豆をいったんゆでこぼす(筆者撮影)

細田:ただ、渋切りをやり過ぎると、今度は小豆の味がなくなって甘いだけの餡ができてしまうので、店によって、どれぐらい渋切りするかが違います。うちは、江戸の(東京の)菓子屋なので、渋切りを控えめに、なるべく味の濃い、うま味の強いあんを炊くようにしています。この赤さがうま味でもあり、渋味でもあり、それをどうコントロールするかが、年によって違うんです。

つやつやと輝いている小豆(筆者撮影)
つやつやと輝いている小豆(筆者撮影)

細田:豆を煮て、蜜につけた後、うちは一晩寝かせるんです。煮物は一回火を入れて冷まして温め直すほうが食材に味が染み込む。その過程が非常に重要です。昔はどこの和菓子屋さんも一晩寝かせる方法をやっていたらしいですが、今は効率重視でやらない店も多いようです。そのまま練り上げたあんと、一晩寝かせた後に練り上げるあんでは、味の深みが違います。私たちは江戸から続く昔ながらのやり方を続けています。豆を煮始めてからあんこができるまで2〜3日かかるものなんです。

美味しそうに仕上がっているあんこ(筆者撮影)
美味しそうに仕上がっているあんこ(筆者撮影)

日本一のきんつば名人が作る「榮太樓のきんつば」

―手作業で一個一個作っていくんですね!

細田:田中さんは、きんつばを作って何十年。きんつば作りで日本和菓子協会から称号をもらっている唯一の人で、日本一のきんつば名人です。田中さん、生地の大きさは2グラムぐらいでしたっけ?

田中:だいたい、そんなものですね。

日本一のきんつば名人、田中さん(筆者撮影)
日本一のきんつば名人、田中さん(筆者撮影)

細田:まんじゅうも大福も、あんこを包みますね。あんこを包む作業のことを、包むあんと書いて「包(ほう)あん」と言います。大福は、餅とあんこが1対1の配合です。おまんじゅうもそれぐらいです。包あんする和菓子のうち、きんつばは、一番皮が薄いお菓子です。江戸時代の人は「俺はきんつばを食いに来たんだから、あんこの量を多くして、皮を薄くしてくれ」という、想像ですけどそんな会話があったんじゃないかと。榮太郎さんは一番皮が薄いきんつばを作った。そこが人気だったんでしょう。

銅板で焼く前の、形づくられた美しいきんつば(筆者撮影)
銅板で焼く前の、形づくられた美しいきんつば(筆者撮影)

細田:きんつばの「つば」は刀の鍔。覚えて帰ってくださいね。この形が本来の形です。

本物のきんつばは日持ちしない

細田:押しながら回しながら、中のあんが透けて見えるように包んでいく。簡単に見えますけれども、ここまで薄く包むのは難しいですよ。

皮の生地を2グラム程度に分けていく(筆者撮影)
皮の生地を2グラム程度に分けていく(筆者撮影)

細田:これができないから、砂糖を大量に入れて日持ちする「ようかん」みたいなものを四角く切って、ホットケーキの種みたいなのを付けて焼き上げたのが「きんつば」になってしまったんです。

一つ一つ、丁寧に皮を薄く丸めていく田中さん(筆者撮影)
一つ一つ、丁寧に皮を薄く丸めていく田中さん(筆者撮影)

細田:うちのはこんがり焼きあがります。決定的に違うのは、あんです。普通のあんは砂糖の量が少ないので甘過ぎない。もともと屋台で熱々の焼き立てを食べていたので日持ちしません。江戸時代、きんつばはすごく人気のお菓子で、みんなが大好きだったんです。でも今はあまり人気がない。世の中のきんつばが日持ちを優先した結果、甘くなりすぎておいしくないから。でも私たちのきんつばはおいしいです。どんな食べ物も、おいしくなくすれば人気はなくなります。とても寂しい。残念です。うちは本物のきんつばを作り続けています。

細田:これは「きんつば鋏(ばさみ)」。うちの会社しか使いません。

右手に持っていらっしゃるのが「きんつばばさみ」(筆者撮影)
右手に持っていらっしゃるのが「きんつばばさみ」(筆者撮影)

細田:きんつばは、表面にごまが付けてあります。銅板で焼きます。もともと銅の色でしたが、何千回使っている間に黒い色になってきました。銅板で作ると熱の伝わり方が違います。

黒々とした銅板で焼かれていくきんつば(筆者撮影)
黒々とした銅板で焼かれていくきんつば(筆者撮影)

細田:江戸時代、庶民の住む長屋は、火事防止のため台所がなかったんです。みんな屋台で食事を済ませていました。お寿司も天ぷらもおそばも屋台。デザートとしてきんつばや大福の屋台が町中にあったんです。

見学者:きんつばは1日何個作るのですか?

細田:手包みなら1日500個前後です。焼きたては本当においしい。ごま油の香りとあんこの味。「きんつばってこんなお菓子なんだ」と。これが本物。食べたことがない味でしょう?私たちはこの味を「日本橋の味」として、もう一度、知っていただきたいと思っています。

手際よく回し、どの方向もまんべんなく焼かれていくきんつば(筆者撮影)
手際よく回し、どの方向もまんべんなく焼かれていくきんつば(筆者撮影)

細田:四角いのは、もともと「六方焼」と呼ばれていた別のお菓子なんですよ。六方焼はメジャーでないから、きんつばという名前を当てはめてしまった。消費者を誤認させます。本当に志がある人なら、オリジナルの物に対するリスペクト(敬意の念)があっていいはず。それがない。形もそうなのですが、すごく残念だなと思うのは、中をようかんみたいにしちゃったことです。

―日持ちするように。

細田:そうです。ようかんと普通のあんことは、糖度が違うんですね。糖度が45から50ぐらいがうちのあんこで、甘すぎずおいしいところなのですが、ようかんは糖度70アッパー(以上)で日持ちするんですよ。柔らかいと包みにくいから寒天を入れて硬くして、砂糖をいっぱい入れて。江戸時代、あれだけ人気だったきんつばをおいしくなくしちゃった。うちは日持ちしなくてもおいしい物を作って売りたい。

香ばしいごま油の香りのきんつば(筆者撮影)
香ばしいごま油の香りのきんつば(筆者撮影)

和菓子は生き物

細田:おいしくないあんこは風味がなく、ただ甘いだけ。中国産の小豆は味がしないんです。炊き比べるとびっくりします。北海道産は格別に風味が違う。値段は輸入物に比べると倍ぐらいしますけど。味は、豆の品種と炊き方、渋切りの回数で変わります。

見学者:輸入物のいちごは味が全くない。甘くもない。同じ品種でも生産者によって味が違うんです。土づくりや、肥料の質、管理の違いです。

細田:あまりにも安い値段で物を売ること自体に無理があると思います。同じメーカーとしてどう計算しても分からない謎の世界です。美味しさを犠牲にして日持ちと価格を優先した商品がスーパーに並んでいるのは非常に残念。日本がデフレから脱却出来ないと言われているのは、海外に比べて明らかに加工食品が安過ぎるから。値段は上げられないけれど、管理基準は年々厳しくなっていく食品会社の経営は厳しいです。大手しか生き残れない時代になりつつあります。

東京・日本橋の店構え(筆者撮影)
東京・日本橋の店構え(筆者撮影)

もともと、もなかは大福の余りものから作っていた

細田:昔の話ですが、もなかは、大福の余りものから作るのが普通だったそうです。売れ残った大福のあんこに砂糖と水あめを足して日持ちするように甘くしたのがもなかあんです。餅生地を切って型にはめて焼いて茶色になったのがもなかの皮。大福の再利用です。今は、もなかはもなか、大福は大福、余ったら全部捨ててくださいというのが当たり前の商習慣になってしまっている。

細田:江戸時代は決して食べ物が豊富ではないから、循環させないともったいなさ過ぎて、簡単に捨てるなんてあり得なかった。あめを作るときに出るロスも、昔は養豚場が引き取ってくれていましたけど、今は「菓子屋から出る残渣は豚が糖尿病になるから駄目」だと引き取ってくれません。今はバイオエタノール原料として引き取ってもらうなど、新しい試みはあります。

―クリスマスの後、リサイクルセンターはクリスマスケーキだらけでしたよ。

細田:恵方巻とクリスマスケーキはたたかれますよね、これから。おかしいでしょう、と。

―恵方巻きもクリスマスケーキも、もともと生き物です。

見学者:予約制にするとか何とか言っていますけれども、それでも相当出るでしょうね。

―あれはパフォーマンスです。食品ロス削減じゃない。捨てるほうがもうかるシステムなので。

「シャンパン」「バームクーヘン」は本物しか名乗れないはず

細田:「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉の一つの例がバームクーヘンです。バームクーヘンは、カール・ユーハイムさんというドイツ人が日本に持ってきて伝えてくれたお菓子です。ドイツにはバームクーヘンとはこういうレシピでこういう作り方をするという厳格な決まりがあります。それ以外はバームクーヘンと名乗らないという、シャンパンのような話があるわけです(筆者注:スパークリングワインのうち、シャンパーニュ地方で作ったものしか「シャンパン」と名乗ってはいけない)。

細田:ユーハイムさんは、それをすごく大事に守っている。でもここ10年〜15年、バームクーヘン「のようなもの」が山のように出てきた。今のお客さまは柔らかいふわふわのバームクーヘンの食感に慣れてしまっているので、本物を食べると「硬い」と言うんですよ。「いつも食べているのと違う」という。本場ドイツの人に言わせると、ユーハイム以外のバームクーヘンは似ているだけで違うお菓子。ポリシーを持ってやっている人、商売になればいいやと思ってやっている人、そこには大きな違いがあると思います。

細田:きんつばも、目の前で焼いたから、おいしくできるわけです。本物を食べれば本当においしい。それを体験すること。安くてうまいものは世の中にはない。安くてもそこそこうまく作る技術はできているけど、本物のおいしさとは違う。

見学者:コンビニのお菓子はパティシエの人が食べても「おいしい」と。でも「プロのわれわれが見て何だかよく分からないものが入っている」と言うんです。消費者、特に子どもがそれに慣れてしまえば「これでいいじゃん」という話になってしまう。

細田:(飴などの菓子の)裏面の原材料表示は、本当に、よくご覧になったほうがいいと思います。

榮太樓・生クリームバニラ飴のパッケージ裏面。北海道・根釧地区の生クリームや、マダガスカル産バニラビーンズを使っていることがおもてと裏の双方に明記されている。賞味期限表示もロスを減らす年月表示になっている(筆者撮影)
榮太樓・生クリームバニラ飴のパッケージ裏面。北海道・根釧地区の生クリームや、マダガスカル産バニラビーンズを使っていることがおもてと裏の双方に明記されている。賞味期限表示もロスを減らす年月表示になっている(筆者撮影)

見学者:農産物は味を良くしても評価されないシステムなんですよ。ただ単に出して市場で値段が付けられるので、量が安定しているほうが優先で、おいしさの評価は一切ないんです。

細田:うちにとって良かったのは、値段を自分たちで決められて、おいしさ最優先でできる百貨店の商品開発をやっていることです。流通市場の厳しいスーパー・コンビニ向けの商品開発だけだと、まず「原価」ありきなんですよ。原価を下回らないと作っても意味がないという議論にしかならない。流通市場では小売価格は既に決められている場合が多いし、決められた価格以上だと物は売れない。百貨店の高品質なものを作っている榮太樓がスーパー・コンビニに並んでいれば、安売りはされにくいです。お客さまも安心・安全なブランドだと、手に取っていただけます。

日本橋のお店を取材した12月には、お年賀用の飴が並んでいた(筆者撮影)
日本橋のお店を取材した12月には、お年賀用の飴が並んでいた(筆者撮影)

農家さんとの信頼関係をお客様に伝える

細田:私たちは北海道に通って農家さんたちと親交を深めているので、昨年のように市場に小豆が本当になくなっても「榮太樓さんには出してあげる」と言ってくれます。値段は高いですけれども。小豆を一番使う方は製餡(せいあん)メーカーや大手のパン屋さんなので、彼らの動向によって値段も作付け面積も大きく変わります。今回の台風による不足の騒動で、北海道産の小豆からカナダ産や中国産に切り替えるメーカーは多いと思います。

榮太樓のきんつば。ぐるなびの「接待の手土産セレクション2019」では特選に選ばれた(筆者撮影)
榮太樓のきんつば。ぐるなびの「接待の手土産セレクション2019」では特選に選ばれた(筆者撮影)

細田:農作物は信用第一。長年取引している人に優先して出すので、いいときも悪いときも買い続けることが大事です。収穫のときには必ず行って、一緒にお手伝いして。農家さんの写真を店の展示で出して「こういう人たちが作っている」と伝えたいんです。私たちの菓子は単なる大量生産の工業製品ではなく、農産物に多少の加工を加えさせていただいたもの。消費者は、出来上がった商品を食べるだけでなかなかそこまで思いが行き着かない。そういうことを伝えられるメーカーになりたいと思って、ひたすら考えています。

細田:今、完全無農薬・無化学肥料の農家さんと一緒に餅米を作っています。餅が伸びる大福はもち米じゃなくて餅粉から作られています。餅の粉に水を加えて蒸すと餅状のものができるんですよ。スーパー・コンビニに出ている餅の99%は、餅粉を使った歯応えのない餅です。でも本来の餅は、もち米を蒸してペッタンペッタンついて作るものです。もち米だけではあっという間にカチカチにかたくなってしまうので、それを何日防ぎたいかということから入れる砂糖の量を変えていくわけです。それであんこを包めば大福になります。砂糖を入れれば入れるほど硬くなりにくくなりますので、日持ちはしますが、おいしさは反比例する。でも1週間も2週間も硬くならない餅というものは本来おかしいと思います。

和菓子は農産物由来 無限に大量に作れるわけではない

―欠品は許されないと思うんですけれども、お菓子は農産物から作っているので(足りなくなることもあると思いますが)どうされているんでしょう?

細田:難しい課題です。リスクを取りながらやっていくしかないですね。百貨店向けなら思い切りこだわってできますけど、とてつもない量を出さなきゃいけないものに関しては(欠品できないから)無茶はできないですね。「販売はこの数を超えたらできません」とお願いしておく。おのずと販売するチェーンも限られます。

東京・日本橋で販売されていた季節限定の芋きんつば(筆者撮影)
東京・日本橋で販売されていた季節限定の芋きんつば(筆者撮影)

―農産物はなくても何となく許されるけれども、加工食品は、農産物からできているのに欠品が許されない。そこが食品ロスを生み出しています。

細田:そうですよね。同じ食品なのに、工業製品だと思われているふしがある。真面目にやればやるほど追い詰められていきますよね、メーカーは。いいものを作ろうと思えば。

SDGsのゴール12番「つくる責任 つかう責任」(国連広報センターHP)
SDGsのゴール12番「つくる責任 つかう責任」(国連広報センターHP)

細田: SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の12番「つくる責任、つかう責任」が、うちのテーマだと思っています。きちんとした原料を使い、きちんとしたものを作る責任、メーカーには絶対あるはずなんです。何でもいいわけじゃない。そうしないと循環しない。値段だけを考えて、年によって使用量が大きく増減してしまえば、農家さんもリスクが大きすぎて作ることをやめていってしまう。メーカーが消費者に伝えていくしかない。ロスも一定量は出ますけど、いかに少なくできるかもチャレンジです。

株式会社榮太樓總本舗の副社長、細田将己さん(筆者撮影)
株式会社榮太樓總本舗の副社長、細田将己さん(筆者撮影)

取材を終えて

東京の八王子工場、東京の日本橋本社の両方を、2度にわたって取材させて頂いた。2回の取材から伝わってくるのが、真面目過ぎるくらいの真摯さである。老舗の看板を守る責任感もあると思うが、どの食品関連企業もこれくらい誠実な商売をすれば日本も違ってくると確信した。

工場にも、本社や店頭にも、これまで受賞してきた数々の受賞盾などが展示されていた。でも、細田さんは、あえてそこに触れることはなかった。筆者だったらつい自慢してしまうと思う。おそらく、受賞するしないにかかわらず、榮太棲の商品と品質に自信を持っておられるから、言及する必要はないのだろう。

飴づくりの工程も見せて頂き、日本橋の飲食店でもお食事させて頂いたので、機会を改めて記事としてご紹介させて頂きたい。

謝辞

ギリークラブの渡辺幸裕さんには、東京・八王子工場の視察と、東京・日本橋の取材の両方をアレンジし、同席して頂きました。感謝申し上げます。

関連情報

榮太樓總本舗 金鍔(きんつば)の小ばなし

榮太樓總本舗 創業200周年サイト

榮太樓總本舗通販サイト

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導いた。『食品ロスをなくしたら1か月5,000円の得』『賞味期限のウソ』。食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして2018年、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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