「食の問題なのにネットや法律の話ばかり」大学時代、飲食店3軒でバイトした経験者が語るバイトテロ問題 

塩竈しらはた(宮城県仙台市)の寿司(筆者撮影)

いわゆる「バイトテロ」が、主に大手企業のコンビニや飲食店で次々発生している。様々な分野の専門家がこの問題について語っている。ITリテラシーの観点からはインターネットの専門家、法的措置の問題からは弁護士、リスク管理の点からはコンサルタント、労働問題の観点からは活動家、など。

ほとんどのケースで食べ物を不適切に扱う動画をアップするという食の問題でもあるのに、なぜ食に関わる人が出てこないのか、不思議に思う。

インターネットに載せる・載せない以前に、食べ物を不衛生に扱うこと自体、許されない行為だ。

今回の問題は、ITリテラシーの欠如もそうだが、それ以前に、アルバイト自身と雇用者双方の、食べ物に対する姿勢の問題が根本的にあるのではないか。

「教育をしていた」と言うが、その教育とは、どれだけ食の「命」に言及した教育だったのか。食べ物はすべて動植物の命から発生しており、一歩誤れば、人の命を奪う。今の社会ではおろそかにされているが、食は命に関わる重要なものだ。

社員教育とは名ばかりの、ただの注意喚起とマニュアル通りの禁止事項通達ではなかったか。

一連の報道を見ても、いつもネットの話か法的措置、労働問題の話ばかり。食のことなのに、どうもズレているように感じて仕方がない。

「食べ物が好きだから食べ物のバイトをした」

かつて大学時代に飲食店3軒でアルバイトしていたAさんは、

食べ物が好きだから、食べ物の仕事(アルバイト)を選んだ。

食べ物をごみ箱に入れるとか、床に落とすとか、一度口に入れて吐き出すとか、そんなこと考えたこともない。

出典:大学時代に飲食店3軒でアルバイトしていたAさんの言葉

と語る。

Aさんは、北海道料理の居酒屋と、遊園地の正面にある喫茶店と、個人経営のレストランの3軒でアルバイトをした。

北海道料理の居酒屋は、いわゆるチェーン店だったが、厨房やホールで、食品をぞんざいに扱うような人はいなかったし、そこまで大量の食品ロスは発生していなかった、と言う。

今回のバイトテロでは、時給が低いことが要因に挙げられているが、Aさんは、

時給がめちゃくちゃ高い訳ではなかったし、時給の高さだけで言えば、家庭教師の方がずっとよかったです。

でも、仕事は、時給が高い低いだけで決められるものではない。食べ物が好きで、食べ物に触れる仕事がしたかったし、飲食の仕事の方が楽しかった。

出典:大学時代に飲食店3軒でアルバイトしていたAさんの言葉

と語る。

居酒屋は、お酒のグラスや大皿など、重いものを一気に運ぶので、体力的にキツかったそうが、Aさんは、仕事が大変だから、お店に対して何か事を起こしてやろうという気持ちなど、思いもよらなかったそうだ。

食べ物への敬意の無さと過剰出店が背景にあるのでは

アルバイト側にも当然責任はあるが、雇用者側も、食をぞんざいに扱う姿勢だから、このような事態が発生しているのではないか。

いくらマニュアルで「こういう動画アップは禁止です」と言っても、そこに食べ物への敬意や愛情がなければ、形だけのアルバイト教育で、何も伝わらないのではないか。食品製造業者(メーカー)の品質管理体制と比べると、ごみ箱に捨てるとか、口に入れてから吐き出すとか、床に落とすとか、あまりの劣悪さに言葉を失う。

「慢性的な人手不足」は、食の安全を守ることより事業拡大を優先し、過剰過ぎる出店(オーバーストア)を繰り返す当事者(企業)自身が生み出しているのではないか。

バイトテロが起きるコンビニや飲食店は食べ物に魂と愛情を込めて仕事してほしい

バイトテロが起きるコンビニや飲食店は、アルバイト自身にも問題がある反面、雇用者側の食への意識にも問題があると考える。

前述の、飲食店3軒でアルバイトした経験者Aさんとは、実は、筆者自身である。

北海道料理の居酒屋も、遊園地の前の喫茶店も閉店してしまっているが、個人経営の「明倫館(めいりんかん)」は、検索したところ、今も営業していた。

明治時代の洋館をイメージした外観。山口県萩市の学校が店名の由来だ。

【明倫館/奈良市】ここに明倫館があることに感謝。幼き日を思い出す懐かしの味・ハンバーグ。

明倫館(めいりんかん)(BIGLOBE BEAUTY)

nob建築プランが作った明倫館さん

店内は木を基調にし、テーブルや椅子などは、すべて手作り。

料理にもお店の建築にもこだわりを持ったお店である。

食べ物に対する敬意と強い思い入れを持つ経営者のいる店では、見るに耐えないような振る舞いなど、起こり得ないのではないだろうか。

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導いた。『食品ロスをなくしたら1か月5,000円の得』『賞味期限のウソ』。食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして2018年、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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