1950年代から継続してきたキユーピー株式会社の社会貢献活動、食品ロス削減と人柄(企業柄)の良さ

第六回食品産業もったいない大賞受賞者の記念撮影(筆者撮影)

食品産業の持続可能な発展に向けて、余剰食品の削減や有効活用など、優れた取り組みを行う事業者や個人を表彰する顕彰制度「食品産業もったいない大賞」が、第六回を迎えた。今回の受賞者の表彰式及び取り組み内容の発表が東京都内で開催された。

農林水産大臣賞1点、農林水産省食料産業局長賞3点、審査委員会審査委員長賞6点が表彰された。その中から、農林水産省食料産業局長賞を受賞した、株式会社グリーンメッセージ(神奈川県大和市)とキユーピー株式会社(東京都渋谷区)の発表内容と、これまでの社会貢献活動の一端をご紹介したい。

キユーピー株式会社研究開発本部による発表(筆者撮影)
キユーピー株式会社研究開発本部による発表(筆者撮影)

「環境問題は一企業の努力だけでは解決できない、だから積極的に発信する」

今回の発表は、代表して、キユーピー株式会社研究開発本部の方から発表された。発表の締めに、次の言葉があった。

社会環境報告書以外にも、さまざまな場面において、社外に私たちの環境に関する取り組み、考え方を発信しております。

なぜ積極的に発信するのかといいますと、環境問題というものは、やはり一企業の努力だけでは解決できないと考えているからです。

ぜひ、未来を担う小さなお子さんや、お父さま方、お母さま方、お客さま、皆さまと一緒になって解決していきたいと考えております。

引き続き、私たちと皆さま、一緒になって社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

出典:キユーピー株式会社研究開発本部の発表内容より

この言葉から、キユーピーが、自社だけのことを考えるのではなく、もっと広い視野で社会全体の環境問題を考え、解決の一端を担おうとしていることが読み取れる。

キユーピー株式会社の発表(筆者撮影)
キユーピー株式会社の発表(筆者撮影)

カット野菜の製造工程で発生する未利用部(キャベツの芯や外葉)を牛の飼料に

今回の受賞者であるグリーンメッセージは、2013年、キユーピー株式会社と全農(全国農業協同組合連合会)が出資して、神奈川県大和市(やまとし)に設立した、業務用のカット野菜を取り扱う会社である。

設立の背景としては、カット野菜市場の急拡大を受け、全農とキユーピー、お互いの強みを生かして、業務用のサラダ野菜で事業を開始させていただきました。

出典:キユーピー株式会社の発表内容

カット野菜の製造工程では、毎日、膨大な量の野菜の端材が発生する。たとえば、キャベツの芯や、外葉などだ。

この端材を、キユーピーグループは「野菜未利用部」と呼び、乳牛用飼料へ再生利用(リサイクル)するための研究を進めてきた。

その結果、サイレージ化(牧草などを乳酸発酵させて貯蔵性を高めた飼料にすること)に成功したのだ。詳しくはキユーピー株式会社のプレスリリースに掲載されており、現在は「ベジレージ」という商品名で販売されている。

現在、キユーピーグループの2つの工場で行なっているこの取り組みを、2030年に向けて全国に展開していきたいと考えているそうだ。

キユーピー株式会社の発表風景(筆者撮影)
キユーピー株式会社の発表風景(筆者撮影)

マヨネーズの賞味期限延長や食品ロス削減の容器の採用

キユーピーが行なっているのは、野菜の端材のリサイクルだけではない。

主力製品の一つであるマヨネーズの賞味期限延長や、最後まで使いきりやすいボトルの採用も行なっている。

マヨネーズに関しては、かつて7ヶ月だった賞味期限を、製法の工夫や、酸素に触れづらい容器を採用することで、10ヶ月、さらに12ヶ月へと延長させた。

2018年11月には、一部の製品で、最後まで使いきりやすい容器である「スルッとボトル」を採用している。

筆者が全国での食品ロス講演で紹介しているキユーピーのマヨネーズの賞味期限延長について(キユーピー発信情報をもとに筆者作成)
筆者が全国での食品ロス講演で紹介しているキユーピーのマヨネーズの賞味期限延長について(キユーピー発信情報をもとに筆者作成)

捨てていた卵の殻も土壌改良剤やカルシウム強化原料に

以前は焼却処分していたという卵の殻も、今では土壌改良剤として畑に施肥(せひ)したり、カルシウム強化原料にして食品やサプリメントに用いたりして、100%有効活用しているそうだ。

キユーピーの発表風景(筆者撮影)
キユーピーの発表風景(筆者撮影)

1960年代から工場見学、1973年から食情報誌「キユーピーニュース」の発行

キユーピーの社会貢献活動は、今に始まったことではない。古くは1956年、卵殻を農家へ提供したことに始まり、1960年のベルマーク、1961年の工場見学、1962年「キユーピー3分クッキング」の開始、1973年には食情報誌「キユーピーニュース」の発行を始めている。

キユーピーの発表風景(筆者撮影)
キユーピーの発表風景(筆者撮影)

参考:

キユーピーの「横顔」

10年以上、企業活動を拝見し、「社会貢献」の根っこの強さを確信

筆者が最初にキユーピーの社会貢献部門の方と出会ったのは、2008年、食品メーカーの広報室長を務めている時だった。フードバンクのセカンドハーベスト・ジャパン主催のシンポジウムで、食品メーカーとしての寄付活動の発表を、当時、新任だった前田淳(あつし)さんが聞きに来てくださった。

その後、震災を機に筆者が退職して独立し、セカンドハーベスト・ジャパンの広報を務めている時、前田さんが、自社の備蓄食品である「安心備食」をシンポジウムで発表してくださった(2012年3月)。

2012年3月、セカンドハーベスト・ジャパン主催シンポジウムでキユーピーの備蓄商品について発表する前田淳さん(筆者撮影)
2012年3月、セカンドハーベスト・ジャパン主催シンポジウムでキユーピーの備蓄商品について発表する前田淳さん(筆者撮影)

筆者も全国各地で食品ロスやフードバンクの講演をする中で、キユーピーの取り組みについてお話ししてきた。キユーピー東北支店に出向いての意見交換や、佐賀の工場へ訪問しての視察も行なってきた。

参考:

キユーピー「社会と環境について語るブログ」

2013年から2015年まで社会人大学院生として通った東京大学大学院農学生命科学研究科には、キユーピー創始者である中島董一郎(なかしまとういちろう)氏の記念ホールがあり、その奥には、キユーピー株式会社の研究結果や企業理念、過去の商品や創始者の年譜などを展示している展示室がある。キユーピー社員の方でもご存知ない方がいる「穴場」で、何人もの方をご案内した。

2014年7月には、キユーピーの方と共に、品川女子学院に呼ばれて、講演をする機会を頂いた。

2014年7月、品川女子学院での講演でキユーピーの紹介をする筆者(関係者撮影)
2014年7月、品川女子学院での講演でキユーピーの紹介をする筆者(関係者撮影)

2015年6月には、東京都・調布にある、キユーピーマヨテラスを訪問。今年度まで会長を務めていた食品企業の勉強会「葵会」として視察した。

2015年6月、食品企業の会「葵会」でキユーピーマヨテラス訪問(関係者撮影)
2015年6月、食品企業の会「葵会」でキユーピーマヨテラス訪問(関係者撮影)

2015年6月から現在まで務める東京大学農学部・農学生命科学研究科の広報室会議(毎月開催)の広報オブザーバーでは、広報誌「弥生」の中で紹介するよう推薦させて頂いた。

10年以上、その取り組みを拝見してきて感じるのは、「社会貢献」というのは、見かけだけの取り繕いではすぐにわかってしまうということ。キユーピー株式会社のように、根本的な考え方が根付いていないと、どこから見ても揺るぎのないものにはならない、ということだ。

発表するキユーピー株式会社。SDGsを環境報告書に取り入れている(筆者撮影)
発表するキユーピー株式会社。SDGsを環境報告書に取り入れている(筆者撮影)

企業は人格ならぬ「企業格」を持っている キユーピーの人柄(企業柄)の良さ

キユーピーの社訓の中でも、他社に見ないユニークなものは「親を大切にすること」だ。

今の世の中、必ずしも親が「親」としての役目を果たしていない例もあるわけだが、キユーピーの社訓には、お世話になった人への感謝の心が現れている。

企業は、「人格」ならぬ「企業格」を持っている。

人柄、というのは、にじみ出てくる。

食べ物を扱う事業活動をしている以上、食べ物の資源を生かし、食品ロスをできるだけ減らし、企業活動を持続可能なものにし、自社だけがよければいい、ではなく、自社のビジネスを支えてくれている社会全体への貢献を考えていくということが大切だ。食品メーカーはじめとした食品関連企業の中でも、その人柄(企業柄)の良さが際立つキユーピーの活動を見ていると、そのことがとてもよくわかる。