日本が国をあげて取り組む忘年会・新年会の3010(さんまるいちまる)運動、イタリア人に話したら「?」

Man eating lunch from southern Italy(写真:アフロ)

年末年始の忘年会・新年会シーズンに入り、宴会での食べ残しをなくす「3010(さんまるいちまる)」運動が、国をあげてますます活性化している。福井県で始まったおいしい福井食べきり運動。2000年代には長野県松本市で30・10(さんまるいちまる)運動となった。

長野県の啓発ポスター「残さず食べよう!30・10運動」(長野県の公式サイトより)
長野県の啓発ポスター「残さず食べよう!30・10運動」(長野県の公式サイトより)

松本市長が、宴会での食べ残しを憂いて、「市役所職員は、宴会の最初の30分間は席について食べることに専念しよう」という「30(さんまる)運動」を提案した。その後、市民にも啓発しようと、最後の10分間に席に戻って食べきることを唱える「30・10」へと発展した。その運動は近隣の都市や全国の市区町村にも広がり、今や国をあげての国民運動となった(表記は松本市方式の「30・10」の場合と環境省方式の「3010」の場合とがある)。

第二回食生活ジャーナリスト大賞授賞式のテーブルには筆者が準備した「3010運動」の啓発ツールが置かれた(撮影:監物南美氏)
第二回食生活ジャーナリスト大賞授賞式のテーブルには筆者が準備した「3010運動」の啓発ツールが置かれた(撮影:監物南美氏)

2018年11月30日には環境省が外食時の「おいしい食べきり」全国共同キャンペーンの実施についてという報道関係者向けの資料を発表している。農林水産省、消費者庁と共に、この運動に力を入れていくという趣旨だ。

筆者も、環境省の公式サイトにある 「3010(さんまるいちまる)」啓発用三角柱POPをダウンロードして、画用紙で作った啓発ツールを持ち歩き、飲み会の時にはこれをテーブルに置くようにしている。それだけでも効果がある。

イタリア人に「3010(さんまるいちまる)」を説明したら・・・「??」

2018年10月、イタリア国内を取材した時にも、このツールを持っていった。日本の国民運動として紹介しようと思ったのだ。

取材に同行してくれた佐藤友啓(ともひろ)さんが、ピエモンテ州の行政の人たちに説明してくださった。

イタリア・ピエモンテ州の行政の人たちに日本の3010(さんまるいちまる)を紹介する佐藤友啓(ともひろ)さん。写真、左手に置いてあるのが3010(さんまるいちまる)のクリアファイル(筆者撮影)
イタリア・ピエモンテ州の行政の人たちに日本の3010(さんまるいちまる)を紹介する佐藤友啓(ともひろ)さん。写真、左手に置いてあるのが3010(さんまるいちまる)のクリアファイル(筆者撮影)

ただ、特に反応はなかった。

数日後、障害者が働くレストランのMagazzini O'zに行った。イタリアのCOOPは、フードバンクのバンコ・アリメンターレやカリタスマーケットなどに食材を提供している。

Magazzini O’z に集まったCOOP職員やバンコ・アリメンターレ職員、カリタスマーケットの職員。 カメラマンFrancesca Nota氏撮影
Magazzini O’z に集まったCOOP職員やバンコ・アリメンターレ職員、カリタスマーケットの職員。 カメラマンFrancesca Nota氏撮影

ここでも日本の3010(さんまるいちまる)について紹介した。参加者の多くは英語を使わずイタリア語のみだったので、英語で説明して、それを、同行してくれたERICA社のGiada(ジャーダ)氏がイタリア語に通訳してくれた。

3010について説明する筆者。右は佐藤友啓氏、左は英語をイタリア語に通訳してくれた、ERICA社のGiada(ジャーダ)氏。カメラマンFrancesca Nota氏撮影
3010について説明する筆者。右は佐藤友啓氏、左は英語をイタリア語に通訳してくれた、ERICA社のGiada(ジャーダ)氏。カメラマンFrancesca Nota氏撮影

ここでも、やはり、反応はなかった。反応がないというより、「意味がわからない」「は?」というリアクションだった。

12月1日、TBSラジオ「久米宏ラジオなんですけど」で久米宏さんの言葉

2018年12月1日、TBSラジオの「久米宏ラジオなんですけど」に生出演し、久米宏さん・堀井美香さんと30分間、食品ロスについてお話しした。

コーナーの後半で、久米さんが、次のような趣旨をおっしゃった。

僕、結局ねえ、この「食品ロス」って、一生懸命、ものを食べているかどうかってことに、最終的には・・

我が日本民族は、一生懸命、農産物とか畜産物を、懸命に、美味しく味わって、一口一口、ちゃーんと、一生懸命食べてるかどうかっていう、ことじゃないかっていう風に思ったんです。いい加減にもの食ってんじゃないかって。ヒョイっとそのへんで買ってきてね、なんだかわからないものパクパク食べて、あ、今夜の食事おしまいだ。じゃなくて、

これは何なんだ、っていう。いったいどういうもので出来ているんだ、誰が作ったのか、ってことを考えて、懸命にものを食べるっていう。

(中略)

食べ物って、言ってみりゃ、命よりも大切だっていうとこ、あるんですよ。逆転してるんですけどね。

(中略)

だから懸命に、今でも、ものを食べて、残せないんです、ものを。どうしても、レストラン行っても、絶対残せないっていう。もう、身についちゃって、お腹いっぱいでも食べちゃう。

ものを一生懸命食べないと、結局、それが、なんか、食物をおろそかにしてしまうことに繋がるんじゃないかって、ご本を読んで、僕の結論だったんです。食べる姿勢からまず直さないといけないと思ったんですよ。食品に向かう姿勢、ですか。食べ物に対する。懸命に食べないと、ちゃんとよく噛んで、味わって、ちゃんと飲み込むっていうね。それが食べ物なんだっていうことを考えると、そう、おろそかに食べ物を捨てられないっていう風に思ったんですよ。

出典:2018年12月1日 TBSラジオ「久米宏ラジオなんですけど」より久米宏さんの発言の趣旨
TBSラジオ「久米宏さんラジオなんですけど」(番組公式サイトより)
TBSラジオ「久米宏さんラジオなんですけど」(番組公式サイトより)

久米さんのお話を伺って、「どう思いますか?」と問われた時、イタリア取材中に経験した、時間が迫っていても時間をかけて食事を味わう姿勢についてお話した。

結局は、食べ物に対する日本人の姿勢が、食品ロスを生み出す一因になっているのではないか、と思ったのだ。

立食パーティで名刺交換などがメインだと、どうしても食べ物は残ってしまいがち(筆者撮影)
立食パーティで名刺交換などがメインだと、どうしても食べ物は残ってしまいがち(筆者撮影)

義務感で食べ、義務感から残さないって・・・

イタリアと日本とを単純には比べられないが、イタリア取材で得た体験を踏まえて日本を表現する時、「義務感」や「やらされ感」というキーワードが思い浮かんだ。義務感で、いやいや、職場の飲み会に参加する。3010(さんまるいちまる)運動として指示されたから、義務感から「残さないようにする」。

イタリアの人から見たら、「最初の30分間は席について食べ、最後の10分間は席に戻って食べきる」という、軍隊の規則か何かのような「3010(さんまるいちまる)」は、あまりピンとこないのではないか。

刺身。「和食」はユネスコ無形文化遺産に認定されている(筆者撮影)
刺身。「和食」はユネスコ無形文化遺産に認定されている(筆者撮影)

これからも「3010(さんまるいちまる)」は啓発していくつもりだ。が、イタリアや他の国から日本を見ると、本来楽しんで味わうべき食事で、「30分は席を立たない」とか「10分前に席に戻ってくる」などとするのは、ちょっと滑稽な部分もあるかもしれない。「なんでそんなことをしなければならないほど日本人は宴会で食べ物を残してしまうの?」という・・・

そもそも「宴会」や「忘年会」の趣旨は何なのだろう?集うこと?話すこと?飲むこと?食べることが主じゃなくて残すくらいなら、そんなに食べ物を頼む必要あるの?その参加費って、朝から晩まで働いて稼いだお金だよね?食べ物を捨てるって、稼いだお金を捨てることなんだけど・・・非正規社員の方は高い飲み会代にも泣いているみたいなんですけど・・・

農産物や畜産物を作った人にとっても、料理した人にとっても、お金や時間やエネルギーをそこに費やしている。廃棄するほど虚しいことはない。

久米宏さんがおっしゃっていたように、食べ物に対する姿勢、根本的なところから直さなければいけないのではないだろうか。日本は、ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」という素晴らしい食文化を持っている国なのだ。

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