「もぐもぐタイム」で注目の菓子、今も入手困難 2018年だけで過去30年分のメディア露出の2倍以上に

(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

「現代用語の基礎知識」が選ぶ、ユーキャン新語・流行語大賞の第35回 2018年ノミネート30語が発表された。その一つに選ばれた「もぐもぐタイム」。インターネット検索数が前年に比べて最も上昇した人や製品などを表彰する「Yahoo!検索大賞2018」の中間発表でも、「そだねー」などと共に選ばれた。

「もぐもぐタイム」は、平昌オリンピックで、女子カーリング日本代表チームが、試合のハーフタイムにおやつを食べる時間を指している。

この時に選手らが食べていたことで話題となったお菓子は、店頭では開店30分で売り切れ、インターネット通販では数ヶ月待ちの状態で(2018年7月4日付朝日新聞北海道版朝刊26面)、今も入手困難な状態が続いているという(2018年9月26日付、北海道新聞朝刊15面による)。この会社のサイトを訪問すると、2018年10月3日付で「発送時期につきましては平成31年1月以降の予定」と、3ヶ月以降の発送と案内されている。

2018年の一年間だけで過去30年分のメディア露出件数の2倍を超えている

日本最大級のビジネスデータベースサービス、G-Search(ジーサーチ)を使って、この菓子名の、過去30年間の主要メディア150紙誌への露出件数を調べてみた。

1988年から2018年11月11日までで合計148件。そのうち、1988年から2017年までの30年間で49件。2018年の一年弱(2018年1月1日から2018年11月11日まで)で99件だった。2018年のこの一年足らずで、過去30年間のメディア露出件数の2倍を上回るほどになっていた。

「もぐもぐタイム」で注目された菓子名のメディア露出件数の推移(1988年から2018年11月11日まで)(G-Searchの検索件数を元に、グラフは筆者作成)
「もぐもぐタイム」で注目された菓子名のメディア露出件数の推移(1988年から2018年11月11日まで)(G-Searchの検索件数を元に、グラフは筆者作成)

2018年のメディア露出件数のうち半数近くがテレビ

次に、2018年の、この菓子のメディア露出件数99件の内訳を調べてみた。

トップがテレビ番組放送データで44件。次が全国紙で14件。次いでスポーツ紙13件、地方紙(北海道新聞)11件、地方紙(北海道新聞以外)10件、通信社関連4件、週刊誌2件、業界紙1件。テレビが全体の半数近くを占めている。

マスメディアの影響力は、いち企業の製造態勢を大きく揺るがす

「フードファディズムはなぜ食品ロスを生み出すのか」という記事に書いたが、かつて、テレビが「寒天は健康やダイエットにいい」と報じ、一つの企業が増産態勢に踏み切った翌年、ブームが一段落し、売り上げや利益が減少に転じたことがあった。創業以来、48年間、増収増益の会社だった。この会社の会長は、当時を回顧し、「ブームは最大の不幸」と述べている(書籍『リストラなしの「年輪経営」いい会社は「遠きをはかり」ゆっくり成長』塚越寛著、光文社)。

一般名称の「寒天」ですら、こうなのだ。ましてや固有名詞の製品名であれば、影響は一社に集中するだろう。

「もぐもぐタイム」で注目された菓子の会社の社長は、「彼女(選手)たちの活躍があってこその結果」と感謝しているという(2018年9月26日付 北海道新聞朝刊15面)。

ただ、その一方で、長年贔屓にしてきて下さったお客が買えない状況になっていて、それがつらいとも話している。

今も根強い人気に感謝しつつ、渡辺社長は言う。

「長年のお客様に『今は手に入りにくいですね』と言われるのがつらいです。落ち着いて皆さんに買っていただきたいですね」

出典:2018年7月4日付 朝日新聞北海道版朝刊26面

平成8年に発売したこの製品は22年以上のロングセラーで、この会社の人気ナンバーワンだ。新製品を1,000品目発売しても生き残るのは3品目、という意味で「千三つ(せんみつ)」とも言われる食品業界。ここまでのロングセラー商品になれたのは、企業努力と共に、長年買って下さった方のお陰だろう。

需要と供給のバランスが取れた状態がみんなハッピー

消費者心理を考えると、メディアで騒がれれば興味を持ち、買って食べてみたくなるのが自然だ。ただ、そこで増産したり品切れしたりで需要と供給のバランスが崩れると、事業者側で食品ロス(フードロス)の可能性が生じてしまう。影響は食品ロスだけではない。増産態勢になれば、そこで働いている人へ余計な負荷がかかってしまう。飲食店の検索サイトで賞を受賞したことのある飲食店経営の知人は「テレビで飛びついた客は、殺到するけど、すぐいなくなる。テレビの取材は受けない。紙(媒体)は受ける」と話していた。

マスメディア、特にテレビは、影響力の大きさに自覚を持ち、地方で地道に経営している企業の製品の固有名詞を大々的に報道するのが本当にいいことなのか、熟考してから報じて欲しい。

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導いた。『食品ロスをなくしたら1か月5,000円の得』『賞味期限のウソ』。食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして2018年、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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