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情報が錯綜する支援物資の液体ミルク 使われたのか?使われなかったのか?北海道と岡山県に直接伺った

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
Baby Milk Various(写真:Shutterstock/アフロ)

2018年9月23日付の北海道新聞で「被災地支援の液体ミルク使われず 東京都が千本提供 道、各町に『利用控えて』」と報じた内容に一部誤解があったのではと議論が起きている。2018年9月25日付のねとらぼが、被災地支援の「『液体ミルク』使われず」報道は誤解か 北海道庁「(利用を控えるよう)連絡をしたつもりない」と報じている。

筆者も2018年9月24日(祝)付で北海道支援で未使用の液体ミルク、東日本大震災でも使われず 2016年熊本や2018年岡山・愛媛で活用という記事を書いた。冒頭の、北海道新聞の記事を引用した。

筆者の記事を読んだ省庁の方が、「(使われなかったという記事が)誤報ではないかという情報が出ているので、北海道庁に取材した方がよいと思う」とわざわざご連絡を下さった。打ち合わせで外出していたため、夕方近くになってしまったが、北海道庁に連絡して確認した。

北海道の地域保健課「必要な地域・人は使い、必要でない地域・人は使わなかった」

北海道庁の、地域保健課の方が対応してくださった。

回答いただいた内容をまとめると「必要な地域や必要な人は液体ミルクを使い、必要でない地域や必要でない人は使わなかった」とのこと。だから「使わなかった」地域や人もあれば、「使った」地域や人もあるというのが事実だ。

2018年9月11日時点での被災地の状況は、すでに水が出る状況で、給水車も来ていたとのこと。基本的に通常通りに戻っていたので、母乳が出る人や、今まで使っていた粉ミルクを使える人は、そちらを使ったそうだ。

一方、一部の市町村では、液体ミルクを必要としたので、そこでは配ったとのこと。

また、水が出る地域であっても、人によっては、母乳の出が悪いなどの状況もあり、地域や人などの違いによって状況が様々だったので、「地域や人によって、使った場合と、使わなかった場合があった」とのことだった。

震災時は、精神的に不安定になるので、普段から食べたり飲んだり、慣れているものがいいと言われる。現状では、液体ミルクを普段から飲み慣れている人は少ない。だから「飲み慣れているものがよかったのでは」ということもあったそうだ。

読売新聞に「喜ばれた」と書かれた岡山県では実際には「住民に必要なく、使われていなかった」

筆者の記事では、北海道新聞の記事に加え、2018年8月28日付の読売新聞の記事も引用した。

7月25日、西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市にトラックが到着した。荷室から降ろされたのは紙パックの液体ミルク2100個。フィンランド製で1パック200ミリ・リットル入りだ。東京都が「支援物資として送りたい」と考え、大手小売りのイオンに頼んで輸入した。

 「母乳が出にくい母親にとって、液体ミルクはありがたい」

受け取った倉敷市の担当者は、顔をほころばせた。市は豪雨被害の大きかった同市真備町をはじめ、被災者からの要望に応じて配布する。市内の保育園などには先行して配った。

都はこの支援に先立つ6月12日、イオンと災害時の液体ミルク調達に関する協定を結んでいた。都内で大地震が発生し、授乳に困る母親が出ることを念頭に置いたものだったが、「液体ミルクを西日本豪雨の被災地に送れば役立つはず」と都職員らが機転を利かせた。

8月6日には、復旧作業が続く愛媛県にも540個を届けた。

出典:2018年8月28日付 読売新聞東京版朝刊

ところが、筆者の記事を読んだという岡山県の方からメールを頂いた。「倉敷市では使われていなかったと思っていた。なぜなら、そのような記事をFacebook(フェイスブック)で見たから」とのこと。

真実はどうなのだろうか。

岡山県倉敷市の倉敷保健所に伺ってみた。回答の概要は次の通りである。

「東京から送って頂いた液体ミルクが(2018年)7月25日に到着した。その時にはすでに水もあり、粉ミルクもあるので、液体ミルクは使わなかった。避難所には子どももいなかったし、母親の母乳は出ていた。」

出典:岡山県倉敷市 倉敷保健所の回答

被災地の状況は日々刻々と変わっていくので需要と供給に齟齬が生まれる

西日本豪雨の被災地である岡山県や、震度7の地震が発生した北海道には、液体ミルクが送られていた。岡山県では必要がなかったので使われず、北海道では一部必要な地域や人があったので使われた。

両方の地域で批判も多くあったようだが、被災地の状況は時間単位で変わっていくので、さっきまで必要だったものが「もう要らない」となることもある。北海道の方がおっしゃる通り、地域や人によって状況は様々なので、必要とするものも違っただろう。

岡山県の支援物資に関するFacebookの投稿では、専門家の方も、それぞれの立場から液体ミルクに関する意見を述べておられ、参考になる。支援物資に関しては、供給側と受け手側にどうしても齟齬が生まれてしまうので、配布しなかったことを一方的に非難することはできないだろう。

「新聞記事は鵜呑みにしてはいけない」「行政に確認する」

今回の「液体ミルク」の記事に関し、筆者が反省した点は、新聞記事を鵜呑みにしてしまったこと。事実とは違っていた。

また、自治体の役所が休みの祝日に記事を配信してしまったこと。一日待ってでも、現地の自治体に新聞記事の真偽を確認してから記事を書くべきだった。

今後、記事を書いていくにあたり、留意していきたい。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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