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「日本は世界2位の多さ」使い捨てプラスチック排出 フィリピンはコンビニ・ショッピングモールで紙袋使用

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
フィリピン・セブシティのショッピングモールSM内のスーパーマーケット(筆者撮影)

先日、「食品ロス」のテーマで専門家として取材を受けた。そのメディアでは食品ロスと並行してプラスチック問題も記事として企画している。プラスチック問題の専門家に取材したところ、「G7サミットで海洋プラスチック憲章に署名しなかったのはコンビニ業界が猛反対したから」と発言したそうだ。報道では「国民生活や国民経済への影響を慎重に検討する必要があると判断したため」(2018年8月21日付 産経新聞)『政府は「国内調整の時間がなかった」などと説明している』(2018年9月2日付 朝日新聞)などとあり、決して少なくない反対意見を考慮したと推察される。

2018年9月12日よりフィリピン・セブに出張している。農林水産省ASEAN事業としてASEAN諸国で食の人材育成をするため、ビサヤス大学や他大学の学生に食品ロスの講義や、農産物をロスにしないための食品加工・商品開発のワークショップを実施するためである。

農林水産省ASEAN事務局の方達と、夕食をとりにショッピングモールへ行った。

フィリピン・セブシティのショッピングモール、SM(シューマート)(筆者撮影)
フィリピン・セブシティのショッピングモール、SM(シューマート)(筆者撮影)

夕食のあと、スーパーマーケットへ行った。包装袋は、プラスチックから、すべて紙袋になっていた。

フィリピン・セブシティのショッピングモールSM内のスーパーマーケット(筆者撮影)
フィリピン・セブシティのショッピングモールSM内のスーパーマーケット(筆者撮影)

2016年、フィリピンの首都、メトロマニラ(MM)のコンビニエンスストアへ行った時、すでに包装袋は紙袋になっていた。ただ、フィリピンにたびたび出張される方によると、首都は変わっているが、地方都市は違うとのこと。

筆者が青年海外協力隊として赴任していた、ルソン島の中都市、タルラック(Tarlac)に住む女性に聞いてみた。

タルラックのSM(シューマート)は、紙袋は使用していませんが、生分解性のビニール袋を使用しています。他の食品施設では、既に2年前(2016年)に、紙袋を使用しています。

出典:フィリピン・タルラックの大学職員の言葉

フィリピンは女性活躍でも世界トップクラス

世界経済フォーラムが毎年発表している「世界ジェンダー・ギャップ報告書」の2017年版によれば、フィリピンは世界で10位。女性の活躍度を示すとも言えるこの順位だが、日本は114位である。

「2017年世界ジェンダー・ギャップ報告書」におけるASEAN各国の順位(JETROウェブサイトより)
「2017年世界ジェンダー・ギャップ報告書」におけるASEAN各国の順位(JETROウェブサイトより)

もちろん、この背景には、フィリピンでは高所得層や高等教育を受けた女性たちの多くがメイドを雇用していることなど、複数の要因がある。だが、筆者が赴任していた大学の学長は、ここ20年以上、ずっと女性だ。大統領も女性だった時期があった。

日本は、ASEAN諸国を「途上国」として認識するかもしれないが、このように、女性が社会で力を発揮できる土壌や、包装材のプラスチックからの転換は、少なくともフィリピンでは日本より進んでいる。

フィリピン・セブシティのショッピングモール。東南アジアの中でもフィリピンはショッピングモールの数が多い(筆者撮影)
フィリピン・セブシティのショッピングモール。東南アジアの中でもフィリピンはショッピングモールの数が多い(筆者撮影)

とはいえ、フィリピンにはスモーキーマウンテンと呼ばれるごみの山があり(現在は閉鎖)、ごみを売って生活する人たちは、現在、その近くのトンド地区にいる。リゾート地であるボラカイ島は、環境汚染のため閉鎖されたし、一部の海にはごみが浮かんでいるし、すべてが理想的な訳ではない。

メトロマニラ・トンド地区で暮らす女の子(筆者撮影)
メトロマニラ・トンド地区で暮らす女の子(筆者撮影)

環境省「プラスティック資源循環戦略」に海洋プラスティック憲章の数値目標を反映する方針

「海洋プラスティック憲章」に署名しなかった日本と米国だが、一転、環境省が策定中の戦略に、憲章の数値目標を盛り込むとしている。

環境省が海洋プラスチックごみの拡大防止に向け策定中の「プラスチック資源循環戦略」に、今年6月の先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)で提起された「海洋プラスチック憲章」の数値目標を反映させる方針を固めたことが20日、分かった。

(中略)

ここにきて政府が憲章が示した方向性を受け入れることにしたのは、対応が後ろ向きと受け止められるのは避けたいとの思いがある。プラスチックごみの主な輸出先だった中国が輸入規制に踏み切り、ごみの行き場が失いつつあることも大きい。

出典:2018年8月21日付 産経新聞

日本は世界2位の多さ 1人あたり排出の使い捨てプラスチックごみ

昨今ではプラスチックストロー廃止の件が報道されている。だが、ストローだけでなく、ペットボトルや、カフェやスーパー・コンビニで使われるプラスチック容器など、考えなければならない課題はたくさんある。

世界銀行の報告書(2012年版)によれば、世界で出される生活ごみは年間13億トン。世界の食品ロス量も、年間13億トン(FAOによる)。

食品ロスや海洋プラスチック問題など、環境配慮に関する動きを見ていると、世界的に日本が進んでいるとは言い難い。2018年5月に開催されたSDGsのセミナーでも「日本は周回遅れ」と評されていた。国連環境計画(UNEP)によれば、日本は、1人が排出する使い捨てプラスチックごみ量が、世界で2番目に多い(1位は米国、海洋流出ではなく、国民が排出する使い捨てプラスチックごみ量)。他国の先進事例を発奮材料とし、よい取り組みを取り入れていきたい。

関連資料:

海洋プラスチック問題について 環境省 平成30年7月

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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