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水分を80%含む生ごみの減らし方 においとコバエを抑え、汁だれを防ぐ 子どもの夏休みの自由研究に

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:アフロ)

「いつも記事を楽しく読んでいます」という読者の方から連絡があった。小学生のお子さんの自由研究に、食品ロスをテーマに何をしようか考えているとのこと。毎日、家庭で発生する、生ごみの重量を計測してみるのはどうだろうか。

自治体ごとに回収し、燃やして捨てているごみの中に、家庭から出された、賞味期限前・消費期限前の食べ物が捨てられていることが多い。

家庭ごみに混ざって捨てられた、賞味期限前・消費期限前の食品(筆者撮影)
家庭ごみに混ざって捨てられた、賞味期限前・消費期限前の食品(筆者撮影)

SDGs(持続可能な開発目標)を元に、政府は、2030年までに家庭からの食品ロスを半分に減らすと発表した(2000年度対比)。

SDGs(持続可能な開発目標)(国連広報センターHP)
SDGs(持続可能な開発目標)(国連広報センターHP)

食べ物は水分を含んでおり、重量が重く、燃えにくい。全国の自治体は、これを減らそうと努力している。つまり、食品ロスを減らそうとしている。

全国の自治体の多くが家庭用生ごみ処理機に補助金を出している

筆者は、当初、マンションのベランダでコンポスト(堆肥)づくりにチャレンジした。だが、少し難しく、かなり激しい臭いが発生してしまった。これでは近隣に迷惑をかけてしまう。

そこで、島産業の、家庭用生ごみ乾燥機、パリパリキューブを、自治体の助成金制度を利用し、半額で購入した。

島産業のパリパリキューブ(筆者撮影)
島産業のパリパリキューブ(筆者撮影)

全国の多くの自治体が、家庭用の生ごみ乾燥機購入に対し、半額などの補助を出している。

筆者は、地元で買おうと思い、電気屋さん数軒に電話したが、「家庭用生ごみ乾燥機」が通じなかったため、インターネットの通信販売を通して購入できるものの中から、買いやすい価格帯のもの、ということで島産業のパリパリキューブを選んだ。

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使い方は簡単で、生ごみを投入し、スイッチを押すだけ。

生ごみ乾燥機、パリパリキューブのスイッチ(筆者撮影)
生ごみ乾燥機、パリパリキューブのスイッチ(筆者撮影)

生ごみは乾燥させることで半分〜5分の1まで重量が減る

乾燥機にかける前とかけた後とで重量を測定した。

それでわかったことは、生ごみは、水分を含んでおり、水分を飛ばすことでかなりの重量が減る、という事実だった。

2017年6月から2018年8月まで、222回測定した重量変化の結果は、次の通り。乾燥前を青、乾燥後を赤で示した。

222回、生ごみを乾燥させた重量測定の結果。乾燥前が青、乾燥後が赤で示されている(筆者作成)
222回、生ごみを乾燥させた重量測定の結果。乾燥前が青、乾燥後が赤で示されている(筆者作成)

合計で114kgの生ごみを、毎回乾燥させることで53kgになった。減少したのは61kg。大人の男性の体重くらい減ったことになる。

枝豆の皮も乾いて軽くなる(筆者撮影)
枝豆の皮も乾いて軽くなる(筆者撮影)

水分を減らすことで、においが気にならなくなる。コバエが少なくなり、ごみ袋から汁がたれる、ということもなくなった。

パリパリキューブで乾燥させた後(筆者撮影)
パリパリキューブで乾燥させた後(筆者撮影)

水キリでもOK

京都市は、市民に対し、生ごみの「水キリ」を推奨している。

京都市 「生ごみ3キリ運動」推進中!

水を切るだけでも、かなり違う。

生ごみと堆肥をシェアするアプリ「ShareWaste」も登場

海外では、生ごみと堆肥をシェアするためのアプリ「ShareWaste」が登場した。

生ごみと堆肥をシェアするアプリ「ShareWaste」が、街のコミュニティを強くする (wired 2018年7月3日付)

コンポスト(PHOTO: GETTY IMAGES、wiredの2018年7月3日付の記事)
コンポスト(PHOTO: GETTY IMAGES、wiredの2018年7月3日付の記事)

日本でも、ゼロウェイスト(ごみゼロ)を最初に謳った徳島県上勝(かみかつ)町では、ほぼ全世帯で、上勝町が開発に協力したバイオ式電動生ごみ処理機、あるいはコンポストが利用されているそうだ。

はかるだけでも意識にのぼりロスが減る

神戸市が本格的に実施した食品ロスに関する調査では、計測するだけでも食品ロスが減ったという結果が出ている。

2018年4月12日発表 神戸市で一歩踏み込んだ「食品ロス実態調査」を実施しました(結果報告)

 手付かず食品・食べ残しの発生回数推移(4週間)神戸市で実施した、一歩踏み込んだ「食品ロス実態調査」(結果報告)より
手付かず食品・食べ残しの発生回数推移(4週間)神戸市で実施した、一歩踏み込んだ「食品ロス実態調査」(結果報告)より

水キリは面倒、家庭用の生ごみ乾燥機は今すぐ買えない、という場合は、測定するだけでも、このように意識にのぼり、食品ロスや生ごみが減る可能性がある。この夏休みに、ぜひやってみよう。

<参考書籍>

『ごみゼロへの挑戦 ゼロウェイスト最前線』山谷修作著、丸善出版

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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