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冬生まれの子はアトピー性皮膚炎のリスクが高い? 赤ちゃんのお肌の守り方は

堀向健太医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。
(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

冬は、空気が乾燥し皮膚のバリア機能が下がります。

冬は、皮膚が乾燥しやすいですよね。

例えば健康な女性39人の皮膚のバリア機能を測ると、顔や腕の皮膚のバリア機能は夏より冬がさがることが報告されています(※1)。

※1)Kikuchi K, et al. Exogenous Dermatology 2002; 1:32-8.

アトピー性皮膚炎もまた、皮膚のバリア機能の低下が発症のきっかけになることが分かっています。

ちなみに皮膚のバリア機能は、研究の多くでは皮膚から蒸発してくる水分量を調べて評価します。

皮膚の一番表面にある角質が傷んで皮膚のバリア機能が下がっていると、体のなかの水分が蒸発しやすくなるのです。

例えば肉に食品ラップをかけているときに、その食品ラップの性能によって、肉の乾き方がかわる…そんな感じでしょうか。

写真AC
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皮膚から蒸発する水分の量のことを『経皮水分蒸散量(TEWL)』といいます

TEWLが高い程、皮膚のバリア機能が低いと推測されると、ざっくり考えてください。

その、TEWLを用いて、皮膚のバリア機能とアトピー性皮膚炎の発症を調べた研究があります。

アイルランドで生まれた赤ちゃん1903人の皮膚のバリア機能(=TEWL)を調べておき、1歳までのアトピー性皮膚炎の発症リスクを調査した研究です。

すると皮膚のバリア機能が下位25%の赤ちゃんの方は、上位25%の赤ちゃんより、アトピー性皮膚炎を約8倍発症していたという結果でした(※2)。

※2)Kelleher M, et al. J Allergy Clin Immunol 2015; 135:930-5.

冬生まれの子どもは、アトピー性皮膚炎を発症しやすい?

写真AC
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そして、冬生まれの子どもはアトピー性皮膚炎を発症しやすいのではないかという報告もあります。

台湾における健康保険のデータベースを使用して集められたデータによる研究において、アトピー性皮膚炎を発症した約3万人と、年齢と性別が同じ約12万人を比較した研究です。

すると、5月生まれの人よりも、10月に生まれた人は1.15倍、11月に生まれた人は1.13倍、12月に生まれた人は1.17倍、アトピー性皮膚炎の発症が多かったそうです(※3)。

※3)Kuo CL, et al. Allergy 2016; 71:1626-31.

子どものアトピー性皮膚炎のうち、生後6か月までの発症が45%という報告があります(※4)。ですので、乾燥しやすい冬に発症しやすい月齢を過ごすことが、アトピー性皮膚炎の発症リスクを上げているのかもしれません。

※4)Illi S, et al. J Allergy Clin Immunol 2004; 113:925-31.

生まれつき皮膚のバリアが弱くても、できることがあります

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では、生まれつきならば、どうしようもないのでしょうか?

いえいえ、そうでもありません。

日本で生まれたハイリスクの赤ちゃん116人に対し、うまれて1週間以内にTEWLを測っておき、保湿剤を毎日塗るグループ、乾燥したところにワセリンだけ塗るグループに分けて、生後32週(=約8ヶ月)までみていった研究があります(※※)

※※)“ハイリスク”とは、お父さん、お母さん、もしくはきょうだいに1人以上のアトピー性皮膚炎がある場合を指し、半数はアトピー性皮膚炎を発症する可能性があります。

アトピー性皮膚炎の発症リスクは、毎日保湿剤を塗っていると皮膚のバリア機能が低くても皮膚のバリア機能が高い子どもと同じ程度になったのです(※5)。

※5)Horimukai K, et al. Allergology International 2016; 65:103-8.

すなわち、生まれつき皮膚のバリア機能が低くても、保湿剤でカバーできる可能性があるということですね。

できれば、スキンケアを早めに始めておくことをお勧めします。

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冬生まれの子どもがアトピー性皮膚炎を発症しやすいのは、日光へさらされる時間が少ないことなども関係するのではという最近の研究結果もあり(※6)、保湿剤によるスキンケアのみで予防はできない可能性もあります。

※6)Rueter K, et al. J Allergy Clin Immunol 2019; 143:1012-20.e2.

しかし、これからの季節、保湿剤を毎日しっかり塗ることは、健康な肌を守りアトピー性皮膚炎の発症を少なくする可能性があるといえるでしょう。

もし、赤ちゃんのアトピー性皮膚炎や皮膚トラブルを気にされている保護者さんは、是非スキンケアを実践していただければ嬉しく思います。

※こどものスキンケアに関しては、以下の記事で3回にわけて解説しています。

こどものアトピー性皮膚炎に対するスキンケア をエビデンスから考える(第1回/全3回)

こどものアトピー性皮膚炎に対するスキンケア をエビデンスから考える(第2回/全3回)

こどものアトピー性皮膚炎に対するスキンケア をエビデンスから考える(第3回/全3回)

医学博士。日本アレルギー学会指導医。日本小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5500人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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