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亀田興毅氏を激怒させた“ヒロキング問題”…「ボクシングはブレイキングダウンとは違う」

本郷陽一『RONSPO』編集長
写真提供・3150FIGHT ヒロキング(左)と坂が公開スパーリングで対戦

元3階級制覇王者の亀田興毅氏(36)がプロデュースした『3150FIGHTvol4』(6日・エディオンアリーナ大阪)はIBF世界ミニマム級タイトル戦が“疑惑裁定”で「無効試合」になるなど話題を集める大会となったが、実は、亀田氏を激怒させる事件が起きていた。ヒロキングこと福重浩輝(29、KWORLD3)が、日本スーパーフェザー級チャンピオンの坂晃典(30、仲里)と公開スパーリングを行ったが、リング上のインタビューで、解説をしていた元日本スーパーライト級王者の細川バレンタイン氏(41)に食ってかかり、放送席に殴りこむようなプロレスまがいのパフォーマンスを見せたのだ。

 元日本王者の細川バレンタイン氏に喧嘩売る

 新春を彩ったボクシングの一大イベントに泥を塗った。

ダブル世界戦のアンダーカードで、日本王者の坂と公開スパーリングを行ったヒロキングこと福重が、突然、リング上でのインタビュー途中に、「ユーチューブでごちゃごちゃ言うてる奴がリングに上がってけえへん」と、最前列の解説席にいた細川バレンタイン氏に嚙みついたのだ。

 よほどのマニアでないと話が理解できない展開に場内は唖然とした空気に包まれた。

 自称「日本で一番有名な4回戦ボクサー」のヒロキングは、当初、藪吹リョ―(折尾)と4回戦で対戦予定だった。だが、藪吹が病気欠場となったため、急きょ、スーパーフェザー級の日本王者である坂との2ラウンドの公開スパーに切り替えられた。ほとんど遊ばれて終わったヒロキングは、リング上でのインタビューでまずは「相手は現チャンピオン。エキシビションを急にやってもらって光栄です。僕はC級なんでA級とはできないのですが、リングに上げてもらって最高です」と感謝を述べたのだが、突然、スイッチが入り、解説席の細川バレンタイン氏に、喧嘩を売り始めたのである。

「ゴチャゴチャ言うてる奴に今回のエキシビションをオファーしてくれたみたいですが、リングに上がってけえへん。ボクシング愛があるなら体でわからせるのが先輩じゃないんですか。好き放題言って…オレはバレンさんの上でも下でもない」

 坂に決まる前に細川氏にヒロキングの公開スパーの相手としてオファーをしていた内幕をバラしてヒートアップした。

 昨夏の皇治戦からの因縁

 実は、両者の因縁は、細川氏がユーチューブでヒロキングを批判したことから始まる。昨年の8月にヒロキングは、K-1、RIZINなどで活躍している人気キックボクサーの皇治とエキシビションマッチを行ったが、頭突きなどの反則行為を繰り返していたことを「いかなる理由があっても反則はあかん。ボクシング界の恥」などと厳しく指摘した。

 元日本王者として、至極まっとうな指摘だったが、ヒロキングが反論。昨年末には、KWORLD3の亀田大毅会長が“立会人”となり、ユーチューブで直接対決となる両者の対談が行われた。そこでも「なぜボクシングをやっているの?」「なぜ新人王に出ないの?」と速射砲のように質問を投げかける細川氏に、その都度、ヒロキングが反論。不穏な空気が流れて、最後は細川氏が「おれは難しいと思うけど、(1月6日の試合では)変わった自分を見せてくれよ。でも、違うものは違うとボロくそ言うよ」と宣言。“和解”どころか、“遺恨”が残るムードで終わっていた。その対談で投げかけられた批判を根に持っているヒロキングが、試合後にリング上から喧嘩を売ったのである。

「なんでボクシングをやっているか?と聞いてきたけど、オレは気持ちで返したいたくさんの人がいるのでやっている。あんたのためにやっているんじゃない。それだけ。わかってください」

 ヒロキングは、ここまで言うと、なんと、リングを下りて、解説席の細川氏の前へいき、殴りかからんばかりに詰め寄って毒づいたのだ。

「あんたのためにやっていないから。覚えとけ。いつでもやったるわ。今からでも文句があるのなら、こいよ!」

 もう完全にプロレスの世界である。

 細川氏は、ただ笑って何も応じなかったが、直後の番組内で「いろいろと彼も言いたいことがあったんでしょうが、ダメなところはダメ。僕は、ボロかす言うだけなんで」と反撃。そして、よほど、そのパフォーマンスが許せなかったのだろう。「喋っているうちはいいんですが、何かあれば、彼を葬ってしまいますんで」との爆弾発言を行ったのである。

 だが、これらのヒロキングの行動に亀田興毅、大毅の両氏が激怒した。

「今回の興行はABEMAのボクシングチャンネルの解説にふさわしく本当にボクシングが好きな人に向けてマッチメイクした。そんな神聖なリング上で、ああいうパフォーマンスは許されない。なぜあんなことをやったのか、こっちがビックリですよ。僕らが、やらせたわけではないですよ。試合前に、注目度を高めるプロモーションとして、会見などでトークで盛り上げるのは、全然アリだと思うけれど、試合に入った中で、あれをやったらあかん。僕は、今プロデューサーの立場で、ヒロキングを管理するのは、会長の大毅やけど、大毅も、あの後に、こっぴどく叱りつけていた。ボクシングはブレイクダウンとは違うんやから」

 ユーチューバーで総合格闘家の朝倉未来がスペシャルアドバイザーを務める1分間勝負の総合格闘技イベントの「ブレイキングダウン」は、そのエンターテインメントを追求する演出の部分が波及効果をもたらして大人気を博している。亀田興毅氏もボクシング界が、そこから学ぶ部分がたくさんあると考えているが、ワールドワイドに統括された組織のもと、ランキングが定められ、その頂点に世界王者が君臨している真剣勝負のボクシングのリング上にだけは、そういうパフォーマンスを持ち込まず、一線を引くべきだとの意見を持つ。

 過去に神聖なる引退試合の10カウントを途中で止めさせた経験のある亀田興毅氏の言葉に説得力はそれほどないが、その人間が激怒するほど、ボクシングの聖域を汚すヒロキングの暴走だった。

 ヒロキングは、亀田史郎氏のユーチューブ企画からプロボクサーになった経緯があり、現在は3勝2KOのグリーンボーイ。その4回戦ボーイは公開スパーを終えた後の会見ではこんな話をしていた。

「チャンピオン(坂)にボクシングをしっかりやらないとダメやと思いしらされました。でも、4回戦で4度も(格上と)エキシビションをやっているボクサーは僕だけ。A級に上がったときにしっかりとベルトを取れるようにやります。アンチはたくさんいるが、多くの人に伝わるような試合をして、見せていく試合をして、ボクシングを勉強していくだけ。まっすぐ自分の決めたことを貫いて、いけるとこまでいきたい」

 その意気やよし。偉大なるモハメッド・アリも“ビッグマウス”と呼ばれたトラッシュトークで試合を盛り上げていた。だが、ボクシング界の“TPO“をわきまえないパフォーマンスは、ボクシングの品位と価値を下げる単なる愚行。細川氏も語っていたが、見えない努力があり、結果を残してこそビッグマウスもキャラクターも認められる。今回の騒動の顛末を教訓にしてもらいたい。

『RONSPO』編集長

サンケイスポーツの記者としてスポーツの現場を歩きアマスポーツ、プロ野球、MLBなどを担当。その後、角川書店でスポーツ雑誌「スポーツ・ヤア!」の編集長を務めた。現在は不定期のスポーツ雑誌&WEBの「論スポ」の編集長、書籍のプロデュース&編集及び、自ら書籍も執筆。著書に「実現の条件―本田圭佑のルーツとは」(東邦出版)、「白球の約束―高校野球監督となった元プロ野球選手―」(角川書店)。

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