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山口茜が史上最多タイ日本初の3連覇に挑戦=世界バドミントン選手権

平野貴也スポーツライター
女子単の山口茜は、日本勢初となる3連覇に挑戦する【筆者撮影】

 世界バドミントン選手権が8月21日からデンマークのコペンハーゲンで開催される。女子シングルスの山口茜(再春館製薬所)は、日本勢初の3連覇を狙う。

 山口のほかに、2018年、19年に男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)と女子ダブルスの松本麻佑/永原和可那(北都銀行)が2連覇を果たしているが、3連覇を達成すれば日本初。男子シングルスの林丹(リン・ダン=中国)、男子ダブルスの蔡贇/傅海峰(カイ・ユン/フ・ハイユン=中国)が持つ最多連覇記録に並ぶか、今大会の大きな見どころとなる。

 現在は、2024年パリ五輪の出場権獲得レースが展開されている。世界ランキングに反映されるのは、直近1年間で各大会の成績に応じて獲得したランキングポイントの上位10大会分の合計。23年5月からの大会を対象とする24年4月30日の世界ランキングによって、五輪の出場権獲得者が決まる。

 世界選手権はレース中で最も高いポイントが設定されている大会。誰が世界王者の栄誉に輝くかという点だけでなく、誰が五輪出場に大きく前進するかという点でも注目される。以下、種目別の展開と日本の出場選手を紹介する。

山口が3連覇狙う女子単は「BIG4」の争いか

女子シングルスのBIG4と呼ばれる上位候補。上からアン・セヨン(韓国)、山口茜(再春館製薬所)、チェン・ユーフェイ(中国)、タイ・ツーイン(台湾)【筆者撮影】
女子シングルスのBIG4と呼ばれる上位候補。上からアン・セヨン(韓国)、山口茜(再春館製薬所)、チェン・ユーフェイ(中国)、タイ・ツーイン(台湾)【筆者撮影】

 女子シングルスは、近年の国際大会で上位を占めている4選手が「BIG4」と呼ばれている。

 最新の世界ランクで山口を抜いて1位となったアン・セヨン(韓国)、3連覇を狙う山口、東京五輪で金メダルの陳雨菲(チェン・ユーフェイ=中国)、銀メダルの戴資穎(タイ・ツーイン=台湾)が順にシードを獲得している。

 ただし、7月に東京で行われたダイハツジャパンオープンで山口がグレゴリア・マリスカ・トゥンジュン(インドネシア)に準々決勝で敗れたように、ベスト8以上の選手は、それほど力量差はなく、十分に勝負できる。特に、8枠のシードの中には、3度優勝しているキャロリーナ・マリン(スペイン)もおり、すんなりとはいかないだろう。山口は、準々決勝でトゥンジュンと再戦する可能性もある。

 山口はBIG4の比較で、遅れを取ってはいけないプレッシャーを感じている。「そこ(4強入り)に対して、任務みたいなところがあって、そこまでの道のりで(ダイナミックさを欠いた)小さい展開の試合になってしまったり、向かっていったりすることが難しく、思い切ったプレーが少なくなっている。ほかの3人は安定感が違う」と課題を挙げた。

 ただ、プレッシャーを感じているのは、他選手も同じだ。「戴もほかの3人は私より安定していると話していた」と伝えると苦笑い。山口は「それぞれ感じていることは同じかもしれないとも思いますけど、自分が感じていることが自分自身には重く乗って来る。自己満足でいいと思うので、納得する練習が必要」と自信を持って臨むための準備を重視した。前回は自国開催の世界選手権でプレッシャーを乗り越えただけに、今大会も粘り強さと相手を驚かす発想力に富んだ山口らしい思い切ったプレーが期待される。

 この種目には、ジャパンオープンでケガから復帰した17年の女王・奥原希望(太陽ホールディングス)も出場するが、負傷欠場が続いて世界ランクが下がっているため、ノーシード。1回戦を勝ち上がれば、17年決勝の相手であるプサルラ・V.シンドゥ(インド)と対戦する。

混合複、2大会連続で銀メダルの渡辺/東野は初優勝なるか

混合複で初優勝を狙う渡辺勇大/東野有紗【筆者撮影】
混合複で初優勝を狙う渡辺勇大/東野有紗【筆者撮影】

 混合ダブルスは、2大会連続銀メダルの渡辺勇大/東野有紗(BIPROGY)が第2シードから初優勝を狙う。最大のライバルは、2連覇中で第1シードの鄭思維(ジェン・シーウェイ)/黄雅瓊(ファン・ヤチョン=中国)だが、7月のジャパンオープンでは、撃破に成功して優勝。大舞台でもう一度、強敵を破って頂点に輝けるか。

 日本勢では、21年に銅メダルを獲得している山下恭平/篠谷菜留(NTT東日本)も上位を狙うが、2回戦で対戦する可能性がある緑川大輝/齋藤夏(NTT東日本/ACT SAIKYO)も急成長中。レースでは、緑川/齋藤が上位に立っている。渡辺/東野を追って世界ランク8位以上での五輪出場権獲得を狙う2組の対戦が実現すれば注目だ(※ダブルス種目で同国から最大2組出場する条件が8位以内に2組以上)。

 また、2016年リオデジャネイロ五輪の女子ダブルスで金メダルを獲得した松友美佐紀も金子祐樹(ともにBIPROGY)とのペアで出場。五輪レースでは、日本勢4番手と苦しんでおり、大舞台で躍進の突破口を開きたい。

女子複は4組が出場、中国・韓国に対抗できるか

松本(写真)/永原は、日本勢最多となる3度目の優勝を目指す【筆者撮影】
松本(写真)/永原は、日本勢最多となる3度目の優勝を目指す【筆者撮影】

 女子ダブルスの日本勢は、18年と19年の金・銀ペアが主力。2連覇した松本麻佑/永原和可那(北都銀行)が第4シード。日本勢最多となる3度目の優勝を目指す。準優勝2回の福島由紀/廣田彩花(丸杉)は、第5シードから悲願の初優勝を狙う。

 五輪レースで2組を追う志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)は、第7シード。3回戦で中西貴映/岩永鈴(BIPROGY)と対戦する可能性がある。このヤマからメダルを獲得するには、第1シードで優勝候補の陳清晨(チェン・チンチェン)/賈一凡(ジァ・イーファン=中国)のヤマを突破する必要があるが、松山は「世界選手権は、レースとか関係なく、一生に一度は取りたいと2人で話している。絶対にメダルは、最低でも取りに行きたい」と臆することなく挑む姿勢を示した。

 五輪レース開幕後、日本は中国、韓国勢に阻まれることが増えているだけに、24年パリ五輪に向けて互角以上に渡り合える結果と内容が期待される。

男子複は大混戦、21年王者の保木/小林も有力候補の一角

21年王者の保木/小林は、大混戦の種目で2度目の優勝を目指す【筆者撮影】
21年王者の保木/小林は、大混戦の種目で2度目の優勝を目指す【筆者撮影】

 男子ダブルスは、21年世界王者の保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸)が日本のエース。最も展開が速い種目で先手争いがポイントとなる。韓国、中国、台湾、マレーシア、インドネシア、インドといったアジア各国のエースペアの実力が拮抗し、優勝候補を挙げるのが難しい状況。保木は「五輪レースで一番大事。チャンスを本気でつかみに行きたい」と混戦の覇者に名乗りを上げた。

 五輪レース開幕後に調子を上げている古賀輝/齋藤太一(NTT東日本)は、勝ち上がれば2回戦で東京五輪王者の李洋(リー・ヤン)/王斉麟(ワン・チーリン=台湾)と対戦する可能性がある。

絶対王者が自国でV2狙う男子単、若きエース奈良岡は初のメダルなるか

日本の若きエース奈良岡功大は、初のメダル獲得を狙う【筆者撮影】
日本の若きエース奈良岡功大は、初のメダル獲得を狙う【筆者撮影】

 男子シングルスは、最強王者ビクター・アクセルセン(デンマーク)が自国で2連覇を狙う。

 日本勢は、若きエース奈良岡功大(FWDグループ)が第4シード。初のメダル獲得が期待される。準決勝まで勝ち進めば、王者アクセルセンと対戦する可能性がある。

 西本拳太(ジェイテクト)と常山幹太(トナミ運輸)は、近いヤマに入った。常山は2回戦で、西本は3回戦で、第2シードのアンソニー・シニスカ・ギンティン(インドネシア)と対戦する可能性がある組み合わせ。ともに2回戦を勝てば、日本勢2番手での五輪出場権争いを繰り広げている2人の直接対決が3回戦で実現する。

 世界のトッププレーヤーが主戦場とするBWFワールドツアーよりも参加選手が多いビッグトーナメント。7日間の戦いの後、栄冠に輝くのは果たして誰か。

スポーツライター

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカーを中心にバドミントン、バスケットボールなどスポーツ全般を取材。育成年代やマイナー大会の取材も多い。

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