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神村学園、注目コンビのFW福田&MF大迫を擁して初の全国制覇へ

平野貴也スポーツライター
C大阪内定のMF大迫(14番)ら注目選手がそろう神村学園【筆者撮影】

 鹿児島の技巧派集団が、天下を獲りに行く。全国高校総体(インターハイ)サッカー競技男子は、7月24日から徳島県で開催される。Jリーグで活躍するMF橘田健人(川崎F)、FW高橋大悟(北九州)らを輩出している神村学園高校(鹿児島)は、過去最高成績が全国ベスト4。今季は、1年次から注目を集めてきたFW福田師王、MF大迫塁の2人が最上級生となり、悲願の全国制覇を狙う。

欧州プロクラブも関心、FW福田「自分の価値を証明する大会」

6月は戦列を離れていたFW福田。万全のコンディションで全国大会に臨めるか【筆者撮影】
6月は戦列を離れていたFW福田。万全のコンディションで全国大会に臨めるか【筆者撮影】

 U-19日本代表候補の福田は、この世代で最も注目されている点取り屋。相手と競り合いながらゴールを奪うだけでなく、質の高いキープ、ポストプレー、ラストパスもこなすオールラウンダーだ。

 春には欧州4クラブの練習に参加。国内外で争奪戦となっており、進路が注目されている。鹿児島県大会を優勝した後、九州大会はプレータイムを制限。その後、6月は右足内転筋の痛みのために実戦から離れたが、それもインターハイを見越した調整。どのようなコンディションで出てくるか分からないが、有村圭一郎監督は「最後は、福田が点を取る。あるいは、あそこ(福田)にボールを送って、周りが点を取る形。アイツが点数を取れなければ負けるし、取れるところにいれば勝てるというゲームになる」と絶大な信頼を寄せる。

 昨年は5ゴールを挙げて得点王に輝いたが、チームはベスト8で敗退。福田は「目標は、もちろん優勝すること。個人としては、得点王など結果を残したい。自分の価値を証明する大会だと思っています」と自らのゴールでチームを引っ張る気概を示した。

C大阪内定の大迫が主将、ピッチ内外でチームをけん引

左足のキックで攻撃のタクトを振る、司令塔の大迫【筆者撮影】
左足のキックで攻撃のタクトを振る、司令塔の大迫【筆者撮影】

 福田とともに1年次から主力として活躍してきたMF大迫塁は、C大阪への来季加入が発表されている。今季は、主将を務め、ピッチ内外でチームの中心となっている。ルーキーの頃から巧みなポジショニングと配球を見せていたが、昨季は攻撃面を強化。そして最終学年を迎えた今季は、最終ラインからの攻撃のビルドアップ、中盤でのゲームメイク、2列目からゴール前への飛び出し、攻撃から守備への切り替え……と、すべてに関わる大黒柱となっている。

 ボールを保持し、ポジションを入れ替えながらチームで作り出したスペースを使って攻撃を組み立て、ボールを失ったらすぐに奪い返しにいく神村学園のサッカーの体現者となる存在だ。プレー面で軸となるが、大迫は「相手がどこでも、うちがやるべきことは変えてはいけない。ボールを保持することも、粘り強い守備で戦うところもやり続けないといけない。それを全員がやり続けたら勝ちは見えてくる。優勝するために、自分が何をできるか。頼れる仲間もいるので、1人ではなく、一緒にやっていきたい」と主将らしくチームワークを強調した。

注目の1年生MF名和田「師王さん、塁さんにも負けたくない」

U-16日本代表でも10番を背負う、注目ルーキーのMF名和田【筆者撮影】
U-16日本代表でも10番を背負う、注目ルーキーのMF名和田【筆者撮影】

 1年次から全国大会で活躍してきた2人が主役を張るチームだが、今季のプリンスリーグ九州で首位を走るチームは、脇役には収まりそうにない選手が多く揃っている。中でも、攻撃センスに秀でる1年生MF名和田我空は、期待の星だ。

 昨年、神村学園中学校を初の日本一に導いた攻撃の核で、U-16日本代表でも10番を背負う。日本代表FW古橋亨梧(セルティック)を手本に周囲との連係から突破する形を磨いており、サイドでもセンターでも相手守備陣を混乱させ、ゴールを陥れる。名和田は「(大迫)塁さん、(福田)師王さんがいて、チームが注目されている。自分もプロを目指しているので(多くの関係者にプレーを見てもらう)最大のチャンス。全国大会では、塁さんにも師王さんにも負けたくない。得点王も狙って、少しでも成長できる大会にしたい」とインターハイ全国大会にかける意気込みを示した。

 まだ高校生のフィジカルに慣れている段階だが、それでもリーグ戦で3ゴールを挙げるなど、力を発揮。有村監督は「試合に出ている以上、1年も3年も関係ない。できないなら出なくていいと言っていますし、その点は、自覚を持ってやってくれている。高校に入ってからは、いろいろな責任を持ちながらサッカーをしなさいと話していて、点を取り切ること、守備の強度が、まだまだですけど、ちょっと出てきていると思う」と成長を認める。

プリンスリーグ九州は無敗で首位、得点数トップの攻撃力

ドリブルをする則松(8番)と、その外から追い越しをかける吉永(16番)。FW福田、MF大迫に注目が集まるが、サイドも人材豊富だ【筆者撮影】
ドリブルをする則松(8番)と、その外から追い越しをかける吉永(16番)。FW福田、MF大迫に注目が集まるが、サイドも人材豊富だ【筆者撮影】

 チームは、プリンスリーグ九州では無敗。8試合で17点を奪っており、得点数は、リーグトップ。攻撃が特長のチームで、ほかにも楽しみな選手が多い。チーム内得点王は、ゴールに向かう姿勢の強さが魅力のFW西丸道人(2年)。右サイドはキック精度の高いMF積歩門(3年)や、ともに攻撃参加が得意なDF有馬康汰(2年)、DF長沼政宗(2年)がクロスを供給。左は、ロングスローも投げるレフティーのMF則松隼人(3年)や推進力のあるU-16日本代表のDF吉永夢希(1年)がおり、こちらも、大迫を経由して福田や西丸が決める攻撃の経由地となる。

 神村学園は、1回戦シードのため、大会2日目の25日に初戦を迎える。相手は、Jクラブ注目のMF名願斗哉(3年)を擁する履正社(大阪)と、明桜(秋田)の勝者。組み合わせが決まった当日、有村監督は平静を保って「なんとか一つずつ頑張って、倒していくだけ。どこに入っても驚かないようにはしていました」と話した。どこが相手でも、引けを取ることはない――そんな自信が漂っていた。中心となる福田、大迫を軸に、攻撃センスあふれるメンバーをそろえた神村学園が見据えているのは、初の決勝進出、そして頂点だ。

令和4年度全国高等学校総合体育大会サッカー競技・男子

大会トーナメント表

(リンク先:日本サッカー協会公式サイト内、大会日程・結果)

スポーツライター

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカーを中心にバドミントン、バスケットボールなどスポーツ全般を取材。育成年代やマイナー大会の取材も多い。

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