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日本バドミントン、ガイドライン策定で再始動へ 代表は19日から合宿

平野貴也スポーツライター
バドミントン日本代表は、19日から男女別合宿で再始動(写真は元日)【著者撮影】

 日本バドミントン協会は、5月30日に都内で理事会を行い、19年度の事業報告や決算承認のほか、新型コロナウイルスのまん延防止のため中断している大会の再開に向けた準備事項の確認などを行った。理事会後、銭谷欣治専務理事が取材に応じ、今後の日本代表活動および国内大会再開に向けた方針を語った。

6月19日から日本代表が始動、ジャパンOPは開催地変更へ

「ダイハツヨネックスジャパンオープン」は、開催地を変更して行う見込みだ。19年大会では、女子単で奥原(右)と山口の日本勢対決の決勝戦が実現するなど盛り上がりを見せた【著者撮影】
「ダイハツヨネックスジャパンオープン」は、開催地を変更して行う見込みだ。19年大会では、女子単で奥原(右)と山口の日本勢対決の決勝戦が実現するなど盛り上がりを見せた【著者撮影】

 まず、日本代表については、6月19日から男女別(混合複は男子側に含む)に、約10日間の国内合宿を行う方針であることが明らかになった。元来は、都内にあるNTC(ナショナルトレーニングセンター)を活動拠点としているが、他競技団体との兼ね合い等により準備が整わないため、独自に場所を確保する予定。日本代表を率いる朴柱奉ヘッドコーチらが両合宿を視察・指導できるように、開催日は完全重複を避ける見込みだ。

 国際大会は、3月の全英オープンを最後に中断されているが、8月から再開される。ただし、BWF(国際バドミントン連盟)は、グレードの低い大会を中止にし、その期間に中断期間で延期や中止になったグレードの高い大会を間に挟み込む形で調整しており、世界ランク上位選手が出場する大会は、年末までのスケジュールが過密。そのため、BWFは世界ランク上位選手に課している出場義務の緩和を検討中だ。日本代表は、出場義務の確認を行ってから、選手派遣大会を決める方針だ。

 また、9月22~27日には、日本で行われる国際大会であるダイハツヨネックスジャパンオープンが組まれているが、予定していた横浜アリーナでの開催は断念。現在は、武蔵野の森総合スポーツプラザに打診中で、6月中旬には開催の是非を決定する。

五輪レースの再開は21年、桃田らの出場確実は変わらず

3月に全英OPで初優勝を飾った男子複の遠藤大由(左)/渡辺勇大らは、五輪出場権獲得がまだ決まっていない【著者撮影】
3月に全英OPで初優勝を飾った男子複の遠藤大由(左)/渡辺勇大らは、五輪出場権獲得がまだ決まっていない【著者撮影】

 2021年に延期された東京五輪の出場権争いについては、すでに獲得済みのランキングポイントを有効とした上で、3月以降に中止・延期された大会分を21年の同期間に行い、合算して21年5月4日更新のランキングポイントを元に出場選手が決まる。

 日本勢では、すでに多くのポイントを獲得している男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)や女子シングルスの奥原希望(太陽ホールディングス)、山口茜(再春館製薬所)、女子ダブルスの福島由紀/廣田彩花(アメリカンベイプ岐阜)、混合ダブルスの渡辺勇大/東野有紗(日本ユニシス)が五輪出場を確実としているが、その他の選手は、出場確定に向けて、再開する五輪レースが重要となる。

 通常、日本A代表は、BWFワールドツアースーパー500以上(100、300、500、750、1000と数字が大きいほどレベルが高い)の大会に派遣されているが、銭谷専務理事は「来年3月のドイツ、スイス、インドはメイン(の選手)を出していくと思う」と五輪レース対象となる見込みのスーパー300の大会にもA代表を派遣する方針であることを明かした。来年3月には、スーパー1000の全英オープンも行われるが、こちらは20年開催分が五輪レースの対象で、21年の五輪出場には無関係となる。大会の格付けと、個人にとっての優先度・重要性がマッチしない選手も出てくることが予想される。

 なお、五輪レースが19年4月末から始まっているため、21年五輪出場権決定時に、五輪ポイントのランクと世界ランクでは、日本の選手の順位が変わる可能性があるが、五輪ポイント上位の選手を日本の代表とする方針は変わらない。

国内大会、「全日本総合の開催はマスト」

全日本総合は、代表選定に関わる重要な大会。銭谷専務理事は無観客でも開催は「マスト」とした。写真は19年大会の男子単を制して喜ぶ桃田【著者撮影】
全日本総合は、代表選定に関わる重要な大会。銭谷専務理事は無観客でも開催は「マスト」とした。写真は19年大会の男子単を制して喜ぶ桃田【著者撮影】

 国内大会については、21年シーズンの日本代表選定に関わる全日本総合選手権の開催を、銭谷専務理事は「マスト(絶対)」と表現。「代表選考に関わる。(新型コロナウイルスのまん延の)第2波、第3波が来た場合、無観客でもやらないと(いけない)」と話した。しかし、全日本総合の出場権獲得に関わる日本ランキングサーキットや全日本社会人選手権などがすでに中止となっており、出場選手の決定方法も見直しが必要な状況だ。

 銭谷専務理事は「中学、高校等を含めてランキングサーキットの大会がなくなったので、出場権をどう決めるのか。例えば、ジュニア年代に関しては、ジュニアナショナルのメンバーで合宿を行えるので、強化本部がそこで選ぶ形になると思う。日本ランクは5月10日時点で凍結しているので、その時点でのランキングをベースに決めざるを得ない。全日本学生選手権については、東日本大会と西日本大会が中止となったが、インカレ(全国大会)は中止の報告を受けていない。開催されない場合は、学連(全日本学生連盟)として(出場権獲得者を)どう決めるかが懸案事項となる」と現状での見通しを話した。

育成年代含む活動再開に向けた独自ガイドラインを公表へ

5月30日の理事会後、報道陣の取材に応じた日本バドミントン協会の銭谷専務理事【著者撮影】
5月30日の理事会後、報道陣の取材に応じた日本バドミントン協会の銭谷専務理事【著者撮影】

 いずれにせよ、国内で大会を行うためには、活動が新型コロナウイルスの再度のまん延につながらないように、対策を行わなければならない。今後の国内における練習や試合の実施に向けた対策として、日本バドミントン協会は、独自のガイドラインを策定中だ。銭谷専務理事は「ほぼ、95%出来上がっている。来週中(6月第1週)にはホームページで発表する」と話した。

 コンタクトスポーツではないため、極端な禁止事項は盛り込まないが、段階を経て禁止事項を解除していく方法を推奨する部分はあるようだ。銭谷専務理事は「日本代表選手は対策の意識が高いが、怖いのは、ジュニアのクラブやスクール。そこでの対策の指針を早く出したい」と広域で行われている育成活動などの場を含めた対策方法のシェアを重視する姿勢を示した。

 早く活動を再開したいのは、トップ選手も、草の根で活動する選手も変わらない。広く実施できる対策がシェアされ、現場に笑顔が戻ることが、何よりも望まれる。もちろん、国内の非常事態宣言が5月25日に全面解除されたとはいえ、今後も状況を注視しながら対応しなければならないが、対策ガイドラインの公表や、代表活動の再開などによって、日本バドミントン界は少しずつエネルギーを取り戻していく構えだ。

スポーツライター

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカーを中心にバドミントン、バスケットボールなどスポーツ全般を取材。育成年代やマイナー大会の取材も多い。

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