中学生&高校生のみのチームが全日本3位! マイナースポーツ「カバディ」に新時代

自由の森学園中学・高校の男子チーム(幕後方)「ジモディ」が全日本3位【著者撮影】

 カバディ、カバディ……とつぶやきながらプレーする、ちょっと変わった特徴を持つスポーツ「カバディ」に、新しい時代の風が吹いた。第30回全日本カバディ選手権大会が11月2、3日に国立オリンピック記念青少年総合センター大体育室で行われ、18チームが参加した男子は、自由の森学園中学・高校(埼玉県)の部活動チームである「ジモディ」が社会人チームを破って勝ち進み、3位に入る健闘を見せた。2回戦で日本代表監督を擁する前回王者を撃破するなど、勢いに乗ってベスト4入り(3位決定戦は、行われない)。準決勝も勝機はあったが、終盤にミスが生まれて接戦を落とし、涙をのんだ。

 決勝進出の手応えはあっただけに、主将の浅見風(高校3年)は「内容で負けているとは思わなかったので、悔しいです。最後の部分で粗さが出てしまいました。最後まで冷静にプレーできていれば良かったなと思います」と肩を落としたが、15歳、18歳といった年齢の選手たちだけで真の日本一に迫った躍進は、十分なインパクトを与えた。

 インドをはじめとする南アジアで盛んなカバディは、日本では依然としてマイナースポーツの域を出ない。日本では、中学や高校の部活動は、ほかに類を見ないが、自由の森学園では、2011年にテレビで競技を知った生徒の呼びかけで部活動が発足。現在は、創部9年目を迎え、中学と高校で合わせて部員30人の大所帯となっている。

1対7の「真剣勝負の鬼ごっこ」

 カバディは、相手に触っては逃げ、追いかけては捕まえる――激しいコンタクトを伴う「ガチンコ(真剣勝負)の鬼ごっこ」とでも表現すべき競技だ(※主なルールは、大正大学カバディ部制作の動画を参照)。ドッジボールに似たコートを用い、攻撃側は1人(レイダーと呼ぶ)で敵陣に入り、相手にタッチして自陣に戻ればタッチした選手数分の得点を得られ、守備側(アンティと呼ぶ)は相手を戻らせずに捕まえれば1点を得るというのが、基本的な得点方法だ。接触後、自陣と敵陣を分けるミッドラインをレイダー(攻撃者)の体の一部(指先など)が越えるか越えないかを争って力勝負になることが多く、体重が重い方が有利になる(そのため85キロ未満という制限がある)。当然、中学・高校生は体格的に不利だ。

守備で一斉に相手を捕まえに行く「ジモディ」チーム【著者撮影】
守備で一斉に相手を捕まえに行く「ジモディ」チーム【著者撮影】

「いやあ(大人は)怖いですね」と苦笑いを浮かべたのは、志村光太郎(中学3年)だ。170センチ弱の身長があるため、極端に小さいとは感じない。しかし、レイダー(攻撃役)として1人で敵陣に入れば、大人が(最大で)7人がかりで襲いかかって来るのだ。よほど悪いことをした人間以外は経験しないような迫力を味わうことになる。それでも、小学生の頃はどの競技も長く続かなかったのにカバディには魅了されたというだけあって「相手の方が、体が大きくて、気持ちで負けてしまうことが多い。もっと強気に攻めるところは攻められるプレーヤーを目指したいです」と、今回の経験を次の成長につなげる意欲を示していた。

若者の勢い

準々決勝を制して喜ぶジモディの先発陣。左から中学3年の志村、主将の浅見、浦山高彦、阿部琢美、寺内優一郎、日本代表候補の阿部克海、小柄ながらスピードを生かした伊藤誠【著者撮影】
準々決勝を制して喜ぶジモディの先発陣。左から中学3年の志村、主将の浅見、浦山高彦、阿部琢美、寺内優一郎、日本代表候補の阿部克海、小柄ながらスピードを生かした伊藤誠【著者撮影】

 そして、大人に対して若者の武器で挑んだ選手もいた。身長約150センチと高校生の中でも小柄な伊藤誠(高校3年)は、圧倒的なスピードで相手をかく乱。準々決勝の帝京リアライズ(帝京大OBを中心としたチーム)戦では、相手が攻撃を終えたタイミングで奇襲をかけて敵陣に突入。慌てた相手が不十分な体勢で捕まえに来たところで上手く自陣に逃げてポイントを稼ぐなど相手を手玉に取った。

 身長177センチで社会人に負けない体格が武器の阿部克海(高校2年)もチームを勢いに乗せた一人。とにかく強気のレイド(攻撃)で積極的に点を取りに行った。高校に入ってからは、日本代表候補にも選ばれており、トップ選手と練習している。攻撃面で得点源として活躍するだけでなく、守備でもしっかりと声を出しながら味方をフォロー。「このチームが大事にしているのは『仲間を見捨てない』こと。(守備で)誰かがきっかけを作ったら、全員でフォローするというところは、今後も貫きたい」と話し、充実感をのぞかせた。「ジモディ」は、一つの好プレーで全員が勢いに乗って、攻守両面で相手の予測を上回った。若者の特徴が引き出された大会だった。

他競技からの転向選手が多い

スピードある攻撃を見せた伊藤は、中学までは野球一筋。「学校に野球部がなく、カバディ部の見学に行ったら、見るだけのつもりがやることになり、面白くなってしまった」と競技との出会いを振り返る【著者撮影】
スピードある攻撃を見せた伊藤は、中学までは野球一筋。「学校に野球部がなく、カバディ部の見学に行ったら、見るだけのつもりがやることになり、面白くなってしまった」と競技との出会いを振り返る【著者撮影】

 副主将でもある伊藤は、奇跡のような勝ち上がりを振り返って、こう話した。

「中学から競技を始めた人もいるけど、ほとんどが高校から。僕は野球をやっていたし、ほかの子も剣道とか他競技から転向して、みんなでイチから始めました。競技未経験でも3年生になればチームを引っ張る立場。プレッシャーもあったけど、ここまで戦えるようになった。大会前日まで、上手くいかなくて、みんながイライラして、こんなに悪い状態で大丈夫なのか……と不安が大きかったです。でも、みんなでぶつかり合って、言いたいことは全部言ってから、もう一度まとまろうと言って臨んだのが良かったのかなと思います」

悔しさの中に清々しさが漂う表情だった。通常、中学や高校の部活動は、同世代の大会が目標だ。しかし、このチームは最初から年上に挑むことになる。難しさに直面しながら勝利を追い求めた努力がようやく実った。

部活は、競技への大きな窓口

準々決勝、相手のタックルをかいくぐって自陣に戻り、レイド(攻撃)を成功させた阿部克海。高校1年生から日本代表候補となっている【著者撮影】
準々決勝、相手のタックルをかいくぐって自陣に戻り、レイド(攻撃)を成功させた阿部克海。高校1年生から日本代表候補となっている【著者撮影】

 彼らの躍進は、他チームの大人たちも興味深く見守っていた。初戦で彼らに敗れる不覚を取った前回王者ABHIJIT KABADDI SANGA(オビジット・カバディ・サンガ)を率いる日本代表監督の新田晃千は「新人を要所に起用したら、やられてしまいました。気を引き締めて臨まなければダメですね」と頭をかいたが「部活動があるのは、自由の森学園だけですけど、高校生はうちのチームにも2人います。競技人口がだいぶ増えてきて、日本代表も自分たちが抜けて20代前半、10代後半の選手が入って来て世代交代の時期。中学、高校からやっている選手が、大人になって体ができ上がってくれば、もっと強くなると思います」と若手の台頭は、喜んでいた。

 ジモディのメンバーのほとんどは、誘われたり見学に行ったりするまで、ルールはおろか、カバディという競技の存在さえ知らなかったという。部活がなければ知ることのない競技だったかもしれない。マイナー競技のため、メディアを通じて知る、あるいは近隣にチームがあるという環境にはないからだ。しかし、学校生活の中に部活動があると、競技を始める大きな窓口となるのだとよく分かる。大会には「ジモディ」のOBが作ったチームも複数参加。自由の森学園は、カバディ界の次世代の人材を次々に輩出している。

カバディ界全体で育てる若い芽

中学生・高校生のみのチーム構成で全日本3位の快挙を果たしたジモディ【著者撮影】
中学生・高校生のみのチーム構成で全日本3位の快挙を果たしたジモディ【著者撮影】

 自由の森学園でカバディ部の顧問を務める菅香保さんは、創部メンバーが中学生のときに担任だった縁があり、前任者が学校を離れたタイミングで後任となり、チームを見守っている。「最後は、勝たなければという思いが出て焦ってしまいましたね。最後の時間の使い方は、まだまだ課題があります。ただ、社会人や大学生とは、体つきも全然違いますし、今年は、試合に勝つ経験がほとんどなかったんです。それなのに、この大会で3回も勝つなんて。でも、この子たちだけで勝って来たわけではなく、OBで日本代表に入っている選手など、皆さんに育ててもらっているチームです」と先輩たちが熱心に後輩を育てている背景に感謝していた。

 中・高生のみで全日本3位と躍進した「ジモディ」の次戦は、2020年2月に開催予定の学生選手権。キャプテンを次の代に引き継いで臨むが、3年生もこの大会までは参加するという。出場チームの多くは、大学生が主体。年上相手に挑む戦いになるが、2年ぶりの優勝を目指す。主将の役目を後輩に譲る浅見は「主将ではなくなりますけど、学生選手権までは試合に出るので、今回の経験を自信にして(タイトルを)狙いたいです」と力強く語った。今回の躍進は、大学生チームの刺激にもなったことだろう。カバディ界が育てる若い芽は、新たな時代の花を咲かせようとしている。