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シンガポールで振り返る2013年「市船×流経」 選手鼎談(番外編)

平野貴也スポーツライター
2013年のインターハイを制した市立船橋高。後列左から3人目が室伏【著者撮影】

8月、海外に拠点を置く日本人チーム、アルビレックス新潟シンガポールでプレーする3選手(室伏航、森永卓、星野秀平)の鼎談を行った。大学卒業後の進路に海外でのプレーを選んだ理由、シンガポールプレミアリーグでのプレーの手応え、海外でプレーする際に注意すべきことや、持つべきビジョンについて話してもらった。

3選手は、室伏航(市立船橋高、順天堂大出身)が主将、森永卓が副主将、星野秀平が得点王(ともに流経大柏高、流経大出身)という現チームの主力という意味合いがあるが、高校、大学と競い合った仲でもある。

特に、2013年のインターハイ(高校総体)では、千葉県代表として出場した市立船橋高と流経大柏高が全国大会の決勝で激突し、現在Jリーガーとなっている多くの選手とともに日本一を争った経験がある。鼎談の番外編として、ざっくばらんに高校時代を振り返ってもらった。(取材日:8月16日)。

(※本編の鼎談内容は前編後編に分けて掲載)

――少し、昔話も聞かせて下さい。3人は、2013年のインターハイ全国大会(福岡県開催)の決勝で対戦しています。今、振り返って高校時代をどう感じていますか

市立船橋高の主力だった室伏(右)。競り合っているのは小泉慶(現:柏)【著者撮影】
市立船橋高の主力だった室伏(右)。競り合っているのは小泉慶(現:柏)【著者撮影】

室伏  高校3年のときは、一番楽しかったですね。高円宮杯U-18のリーグ戦は(プリンスリーグ関東からプレミアリーグへ)昇格できましたし、インターハイで優勝できたから厳しい夏合宿がなくなりました(笑)。残念だったのは、最後に全国高校選手権で負けた(準々決勝で京都橘高校に敗戦)ことくらい。同じ年代で流経大柏がめちゃくちゃ強いというのは知っていましたけど、気負うところはなかったですね。朝岡(隆蔵監督)さんは「長い歴史で見たら、ライバルじゃない」と言っていましたけど、実際は流経のことを気にしていたと思います。だって、相手の選手の名前、全部知っていましたから(笑)。インターハイの全国大会は、準決勝が終わった後に、朝岡さんがよその先生に「流経には勝てない、メンツが違い過ぎる」と言ったと誰かが聞きつけてきて、みんなで「ふざけんな」と思って、めっちゃ燃えたのは覚えています。試合は、朝岡さんがしっかりと戦術を立ててくれて、俺たちがしっかりと遂行して勝ちました。得点も取りました。

――両校は、今でも強烈なライバルです。流経大柏高の2人は、市立船橋高に負けていなければ、違うストーリーもあったのではないかと考えませんか

2013年高校総体決勝、流経大柏高でプレーした森永は2得点【著者撮影】
2013年高校総体決勝、流経大柏高でプレーした森永は2得点【著者撮影】

森永  それしか、ないですね。県大会は負けて練習に直行。全国大会も負けてそのまま金沢のフェスティバルに行って、決勝で帝京高校に負けて、オフの予定がなくなりました(笑)。

星野  なつかしいな。結局、3日くらいのオフをもらえた気がするけど。

森永  悔しいのが、インターハイの県予選の決勝は、相手のエースの石田雅俊(現:沼津)が先発じゃなかったのに、途中から出てきて活躍しました。全国大会の決勝も、主将の磐瀬剛(現:京都)が累積警告で出られなくて、今度は勝てると思ったけど、結局負けました。最後の最後で、全部持って行かれた感じがするので、腹が立ちます(笑)。インターハイの準決勝で、市立船橋高が正智深谷高とPK戦になったときは、仲間が強がって「市船、勝って来い」とか言っていたけど、自分は、正直に「市船が来なければ、優勝できる確率は絶対上がる。勝つな、負けろ」と思っていました。

――インターハイ全国大会決勝のメンバーは、今になって見てみると、すごいメンバー構成です。市立船橋高からは、柴戸海(浦和)、志村滉(磐田)の両選手もプロ入り。流経大柏高は、先発起用された青木亮太、秋山陽介(ともに名古屋)、小泉慶(柏)、ジャーメイン良(仙台)、立花歩夢(横浜FC)の5選手のほかに途中出場の小川諒也選手(FC東京)もいて、合計8人(累積警告で欠場した磐瀬を含むと9人)がJリーガーになりました

2013年全国高校総体決勝、流経大柏高は先発選手4人がJリーガーになった(前列中央:秋山、後列左から3人目:小泉、同4人目:青木、同5人目:立花)【著者撮影】
2013年全国高校総体決勝、流経大柏高は先発選手4人がJリーガーになった(前列中央:秋山、後列左から3人目:小泉、同4人目:青木、同5人目:立花)【著者撮影】

室伏  (磐瀬)剛とマサ(石田雅俊)が結構苦しみながらやっている印象で、Jリーグは、レベルが違うんだなと思います。

森永  最初、石田でも試合に出られないの? と思った。

室伏  ああ、そうだ。関係ないけど、インターハイの全国大会は、すごく良いホテルに泊まれてご飯も美味しかった。あれが、勝因だったと思うよ(笑)。

森永  オレたち、3人部屋だったような……。

室伏  何人かの選手は、流経には負けられないと言っていたような気がするけど、チーム全体で流経を意識するようなことはなかったかな。市船は、練習中、静かなんだよ。でも、球際の争いは、えぐい。オレたちの代だけじゃなくて、オレが教育実習で行ったときも同じような雰囲気だった。

流経大柏高時代の星野(左)。インターハイ決勝は途中出場【著者撮影】
流経大柏高時代の星野(左)。インターハイ決勝は途中出場【著者撮影】

星野  オレたちは、対抗心むき出し。市立船橋高と対戦するときは、グラウンドに全員で円陣を組んで、応援歌を歌って奮い立たせるというのが伝統なんだよ。今となっては、良い思い出だな。二度とできない経験。今、シンガポールで一生懸命にプレーしているけど、あんな意味不明なエネルギーは、もう出ない。若かったね(笑)。

<了>

スポーツライター

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカーを中心にバドミントン、バスケットボールなどスポーツ全般を取材。育成年代やマイナー大会の取材も多い。

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