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東北北部の大雨続く 線状降水帯発生の情報なくても記録的大雨に

平野貴久気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属
9日(火)23時までの24時間解析雨量(ウェザーマップ提供)

雨量の記録を大幅に更新する大雨 

 東北北部付近に停滞する前線の影響で、青森県津軽地方では、9日(火)未明から雨が降り続き、日本海に面する深浦町では、24時間の雨量が300ミリを超えています。これは、観測史上最大の雨量で、これまでの24時間雨量の記録163.0ミリを大きく上回り、まさに記録的な大雨となっています。

 降り続く大雨によって川の水位は上昇し、県西部を流れる岩木川には、依然として氾濫危険情報が出されています(9日23時30分時点)。このまま水位の高い状況が続けば、堤防はダメージを受け続け、氾濫する危険性がどんどん高くなります。浸水想定区域等にお住まいの方は、安全な場所への避難を続けていただくことが必要です。

線状降水帯発生情報 なぜ発表されない?

9日(火)午前9時のレーダー 線状降水帯が発生しているように見える(ウェザーマップ提供)
9日(火)午前9時のレーダー 線状降水帯が発生しているように見える(ウェザーマップ提供)

 先日の山形、新潟、北陸地方の大雨の際、気象庁から、線状降水帯発生情報(顕著な大雨に関する気象情報)が、計8回も発表されました(筆者調べ)。今回の青森の大雨でも、レーダーを見ていると、何度か線状の降水帯が発生しているのが確認できます。しかしながら、線状降水帯発生情報は、現時点(9日23時30分時点)ではまだ発表されていません。これはなぜでしょうか。

 一言で言えば、気象庁の定めている線状降水帯の基準を満たしていないからです。細かい基準はここでは割愛しますが、大雨のエリアがある程度の広がりを持つことや、土砂災害や洪水の危険度が極めて高くなっているなど、いくつかの基準を設けており、それをすべて満たした場合にのみ、情報を発表することになっています。

 今回の青森の大雨では、まだ基準に達していないということになるわけですが、基準を満たしていないから大丈夫ということではありません。基準にギリギリ満たない線状の降水帯も十分危険ですし、大雨は線状降水帯だけではありません。実際、情報の発表がなされていなくても、24時間で300ミリ超という、この地域としてはとんでもない大雨になってしまっているわけです。

 この地域では、ここからまだ雨量が増える見込みですから、線状であるかどうかにはこだわらず、レーダーや危険度分布(キキクル)などを確認して、早めに危険な状況を察知していただければと思います。

気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属

1980年愛知県生まれ。大学では気象学を専攻。卒業後は番組制作会社でリサーチャーとして活動。メディアを通じて自ら気象情報を発信したいという思いから、2009年に気象予報士の資格を取得。2012年から宮城県の仙台放送にて気象キャスターを務める。現在「仙台放送 Live News it!」出演中。予報はもちろんのこと、これまで宮城県内さまざまな場所を取材した経験から見えてくることなども発信できたらと思います。

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