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この冬の東北地方は暖冬なのか? ポイントは「北極振動」

平野貴久気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属
北極の氷(写真:アフロ)

 先日、気象庁から、冬(12月~2月)の3か月間の長期予報が発表されました。

 9月に発表された寒候期予報では、この冬は全国的な「暖冬傾向」が見込まれていましたが、最新の予報でもその傾向は変わっていません。しかしながら、そうとも決めつけられないのが、長期予報の難しいところです。

冬型の気圧配置が長続きしない

予想される海洋と大気の特徴(気象庁ホームページ)
予想される海洋と大気の特徴(気象庁ホームページ)

 暖冬か寒冬か。それを決めるポイントとなるのが、上空の偏西風です。この冬、日本付近では、偏西風は平年より北を流れる予想です。偏西風を境に、北側には冷たい空気、南側には相対的に暖かい空気があります。平年より北を流れるということは、南側の暖かい空気が流れ込みやすく、寒気の南下が弱いということを意味しています。

 冬型の気圧配置が長続きせず、東北地方の気温は高めの傾向。日本海側では雪が少なめの傾向で、スキー場の関係者にとっては、少々頭が痛い予報になっています。

太平洋側の雪は低気圧次第

 暖冬傾向の予報が出ると、太平洋側でも雪が少ないのか...と思われるかもしれませんが、日本海側とは少々事情が違います。太平洋側の雪は低気圧によるところが大きく、低気圧がどこを通るかで、雪の量が大きく変わります。長期予報では、個々の低気圧のコースまでは予測できないため、現時点では、太平洋側の雪については、はっきりとは言えない状況です。

 ただ、12月は低気圧の影響を受けやすくなる見込みで、例年よりも雨や雪が多くなる可能性が示唆されています。

「北極振動」によっては寒冬の可能性も

 今回の3か月予報には、一つ大事なことが加味されていません。それが「北極振動」と呼ばれる現象です。

 北極振動とは、北極域とその周辺の中緯度域の間で、気圧がシーソーのように変動する現象です。北極域の気圧が低いと、中緯度域の気圧が高くなります。この場合、寒気は北極域に閉じ込められ、中緯度域には流れ込んできません(正の北極振動)。逆に、北極域の気圧が高くなると、中緯度域の気圧が低くなります。この場合、北極域の寒気が中緯度域に放出され、日本は寒くなります(負の北極振動)。いわば、北極にある冷蔵庫の蓋が開き、冷たい空気が周囲に流れ出したような状態です。

 この北極振動は3か月予報では予測が困難なため、今回の予報には考慮されていない、考慮したくてもできないというわけです。

 仮に、寒気が放出されるパターン(負の北極振動)になってしまうと、低温の可能性もあり、今回の予報でも20%ほどその確率が見込まれています。

気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属

1980年愛知県生まれ。大学では気象学を専攻。卒業後は番組制作会社でリサーチャーとして活動。メディアを通じて自ら気象情報を発信したいという思いから、2009年に気象予報士の資格を取得。2012年から宮城県の仙台放送にて気象キャスターを務める。現在「仙台放送 Live News it!」出演中。予報はもちろんのこと、これまで宮城県内さまざまな場所を取材した経験から見えてくることなども発信できたらと思います。

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