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3か月予報からみる東北地方の夏の傾向

平野貴久気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属
5月26日(日)の日最高気温(気象庁ホームページ)

 先週末、突如やってきた真夏以上の暑さ。北海道では、5月どころか年間の最高気温を更新する地点が続出し、まさに記録的な暑さになりました。大陸育ちの非常に暖かな空気が流れ込んだこと、さらには地形なども影響して、今回の暑さはもたらされました。

 5月にこれだけ暑くなると、夏はさらに暑くなるのではないかと考えるのは自然な流れかもしれませんが、事はそう単純ではないようです。

 先日、気象庁から、夏の3か月間(6月~8月)の長期予報が発表されました。そこから、東北地方のこの夏の傾向がみえてきました。

夏らしい日が少なくなる?

 カギを握るのが、いま発生している「エルニーニョ現象」です。

 エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなる現象です。これが秋まで続く可能性が高いと予想されています。これに対応するように、太平洋高気圧やチベット高気圧の日本付近への張り出しが弱くなる見込みです。

 7月・8月の東北地方は、平年よりも雨が多く、夏らしい日が少なくなる可能性があります。去年のような猛暑になる傾向は、今のところみられていません。

6月~8月の大気の流れ(気象庁ホームページ)
6月~8月の大気の流れ(気象庁ホームページ)

オホーツク海高気圧出現の可能性

 資料を詳しく読むと、さらに気になる記述があります。7月に「オホーツク海高気圧が現れる可能性をやや考慮」とあるのです。

 オホーツク海高気圧は、オホーツク海や千島近海に現れる冷涼湿潤な高気圧のこと。これが現れると、そこから送り込まれる冷たく湿った空気の影響で、東北太平洋側は低温や日照不足が続くことがあります。

 オホーツク海高気圧については、2週間くらい前にならないとはっきりとしたシグナルは出ませんが、一つの可能性として考えておきたい現象の一つです。

オホーツク海高気圧によって、東北太平洋側には低い雲が広がる(2017年8月4日/ウェザーマップ提供)
オホーツク海高気圧によって、東北太平洋側には低い雲が広がる(2017年8月4日/ウェザーマップ提供)

7月の低温はイネに大きな影響

 米どころの東北にとって、7月の低温は死活問題になりえます。

 以前、イネの冷害の研究をしている、東北大学の先生にお話を伺ったことがありますが、イネの花粉形成期に最高気温19~20℃くらいの低温が4~5日続くと、冷害が起きる可能性があるということです。

 2017年の夏、オホーツク海高気圧の出現により、東北太平洋側で連日曇りや雨となった時のことを覚えているでしょうか。この時は8月上旬で、イネの花粉形成期を過ぎていたため、幸い大きな影響は出ませんでした。

 しかしながら、今回、花粉形成期の7月にオホーツク海高気圧の出現が示唆されていることが、少し気がかりなところです。

1か月予報と2週間気温予報

 オホーツク海高気圧のシグナルをつかむためには、毎週木曜日に発表される1か月予報をチェックすることが有効です。

 また気象庁は、6月19日から新たに「2週間気温予報」として、2週間先までの気温の予想を公表することになっています。これも早期に低温(高温)の兆候をつかむ手段としては有効に働くはずです。

 今年の7月は、稲作農家にとっては、例年以上に注意が必要になってくるかもしれません。

気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属

1980年愛知県生まれ。大学では気象学を専攻。卒業後は番組制作会社でリサーチャーとして活動。メディアを通じて自ら気象情報を発信したいという思いから、2009年に気象予報士の資格を取得。2012年から宮城県の仙台放送にて気象キャスターを務める。現在「仙台放送 Live News it!」出演中。予報はもちろんのこと、これまで宮城県内さまざまな場所を取材した経験から見えてくることなども発信できたらと思います。

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