見頃を迎えた「土星」の魅力

5月の星空-国立天文台「ほしぞら情報」より引用 

今年は、梅雨入り前にぜひ見ておきたい天体があります。

晴れているところの方は、ちょっと窓の外をのぞいてみてください。南の空に、赤く輝く火星。火星から左手側(東側)に目をそらしていくと、火星からこぶし3~4個ぶん離れたところに、もう一つ明るい星が見えます。これが見頃を迎えた「土星」です。一等星より明るい0等星の明るさで、てんびん座のほぼ真ん中に位置しています。

しばらくの間、土星はほぼ真夜中に真南にやってきます。5月11日には、太陽の反対の位置、すなわち一晩中地球から見られる位置である「衝(しょう)」という位置にいました。外惑星はこの衝の前後が、地球からもっと近く、もっとも明るくて観察しやすい時期なのです。といっても、火星(数千キロメートル)とは違い、最接近している今でも土星までは8.9天文単位、およそ13億キロメートルも離れています。

土星は環(リング)がある惑星として有名。小型の望遠鏡でも簡単に見ることができるので、もし、まだ、見たことがない人がいたらぜひ、梅雨入り前にチャレンジしてみてください。なお、梅雨明け後も8月中ぐらいまでは夕方、土星を観ることができます。望遠鏡をお持ちでなくても、全国津津浦々に、公開している天文台施設があります。高原や人里離れたところに大型の公開天文台施設がありますが、街中でも科学館やプラネタリウム館で週末に観望会を開催しているところもあります。事前申し込みが必要だったり、空いている日時が限定されているケースもありますので、事前に電話やメールで問い合わせて確認してから出かけましょう。

望遠鏡で土星を見ると、本当の土星のサイズは地球の直径の9倍(太陽系で木星に次いで大きい)、重さは95倍もある巨大なガス惑星なのにもかかわらず、とても小さく、かわいらしく見えます。観望会でもっとも人気の高い天体が土星なのです。

次に、土星の最新の研究成果についてご紹介しましょう。1997年に打ち上げられた米国NASAの土星探査機カッシーニは、7年間の旅(32億キロ)ののち、2004年に土星に接近、その後、土星とその周りを回る衛星たちを調査しました。カッシーニの活躍を契機に、土星と環、衛星について、いくつもの新しい知見が得られています。

例えば、土星の環が小さな氷の粒子で出来ていること。驚くほど細かいところまで捉えたその画像には数千もの細い環とそのすきまが写っていました。環は差し渡しで20万キロメートルを超えるのに、とても薄くて、最も薄いところでは3メートルの厚さしかありません。このため、15年おきに地球から見ても環がまったく見えなくなる時期があるくらいです。

土星の環が太陽系形成期、すなわち、46~40億年ほど前の大昔に形成されていたなら、環はすでに黒ずんでいるはず。ところが白く輝くのは形成されたのが最近との説が有力でしたが、じつは、スーパーコンピュータによるシミュレーションにより、常に、塊が壊れ、また形成されという過程が環のなかでは繰り返されているため、常に白く輝いていることが分かりました。

土星の衛星についても数多くのことが分かりました。特に、小望遠鏡でも観察できる土星最大の衛星、タイタンは大気を持つ衛星ということで昔から注目されてきた衛星ですが、いま、研究者たちがもっとも心惹かれる衛星は、じつは「エンケラドス」といういわばそれまで無名であった衛星です。エンケラドスは土星から24万キロメートル離れたところを33時間ほどで公転しています。直径は平均500キロメートルほどで、土星の衛星としては6番目に大きい衛星です。

カッシーニの探査から、エンケラドスの北半分はクレータに覆われて、よくある衛星の表情ですが、南半球は一遍して、クレータがありません。南極近くにはタイガー・ストライプと呼ばれる平行に走る4本の巨大な裂け目が見つかりました。長さが130キロ、深さは数百メートルもありそうです。この断層から、間欠泉が吹き上がっているのです。

まるで火山噴火のような活動は、木星の衛星イオや海王星の衛星トリトンでも見つかっていますが、それらと比べてもこのエンケラドスの吹き上がる氷の粒子は太陽系内でももっとも壮大な眺めといえます。じつに、このエンケラドスの氷の噴火によって、土星の環の一つEリングが形成されていることが判明したのです。エンケラドスの南極表層の下には海が広がっていることは間違いなく、気の早い人は生物が存在するのではと予想しているくらいです。

このような土星と土星の環、そして、土星を回るまるで太陽系のミニチュアのような60個を超える個性あふれる衛星たちにも思いを馳せて、今晩の土星をながめてみてください。