※本稿には排泄にまつわるストレートな表現や意見があります。お食事中などの方は、読むタイミングをお選びください

以前、「トラックドライバーのポイ捨て問題」について紹介したが、彼らの社会的地位の向上を語るうえで、もう1つ絶対に避けられないテーマがある。

「立ち小便・尿入りペットボトルのポイ捨て問題」だ。

同問題は、各大手メディアでも「トラックドライバーの迷惑行為」としてその光景がたびたび報じられてきた。

それらの報道では「路上駐車問題」と絡め、「やりたい放題」と、その場で起きた状況のみが伝えられることが多い。

しかしこうした特殊性のある問題は、「現場の光景」だけでなく、彼らの行為がなぜこれほどまでに多発しているのかといった「背景」まで掘り下げなければ、いつまで経っても根本的解決には至らない。

今回、「用足し」に関する経験や実態、悩みについて、当のトラックドライバーたちにこれまで以上に深く「本音」を聞いてみたので、そちらを紹介していきたい。

「青空」8割「尿ぺ」3割

幹線道路沿いを走ると、ポイ捨てされているごみの中に、明らかに色のおかしいペットボトルが紛れ込んでいることがある。「尿入りペットボトル」だ。

これまでの迷惑行為や報道によって、それらはすぐに「トラックドライバーのしわざ」とされてしまい、一部のトラックドライバーからは「それがなぜトラックドライバーのものだと分かるんだ」という反発の声もあがる。

無論、決めつけはあってはならないが、しかし、一般車がほとんど立ち寄らない物流倉庫エリアや産業道路周辺に大量の尿入りペットボトルが捨てられているのも、紛れもない事実だ。

トラックドライバーの間では、「立ち小便」は「青空」、「尿入りペットボトル」は「黄金のペットボトル(黄金ペット)」、または「尿ペ」などと呼ばれている。

こうした俗語の存在からも、彼らの同問題は運送業界にとって身近で根深いものだといえるだろう。

先日、SNSで現役トラックドライバーたちにその「青空」と「尿ぺ」について簡易アンケートを取ってみたところ、衝撃的な結果が出た。

「仕事中に立ち小便をしたことがある」と答えたドライバーの割合は、8割以上

さらに「仕事中にペットボトルなどの容器に用を足したことがある」と答えた人も、3割以上にのぼったのだ。

念のため言及しておくが、ペットボトルに用を足すこと自体は悪いことではない。トイレのない場所でトイレに行きたくなってしまえば、「行儀が悪い」などと言っていられる余裕など、精神的にも時間的にもない。

が、それを車外に投げ捨てたり、ところ構わず立ち小便したりすることは、世間に多大な迷惑をかけることになる。

「道路沿いの草刈りをするのですが、黄金のペットボトルが多くてなんとも言えない気分になります」(20代会社員)

「過去に道路の清掃員をしていました。真夏にパンパンになったペットボトルを開けようとしたら破裂。体中に飛び散りました。まさか人生で他人の排泄物を全身に浴びることになるとは思わなかった」(40代男性製造業)

立ち小便においては、「尿ぺをポイ捨てするよりマシ」という声がいくつかあったのだが、決してそんなことはない。

「自分の会社の前にはトラックが列をなして停車しているが、夏になると彼らの立ちションのせいで匂いがキツくなる。本当にやめてほしい」(40代男性経営者)

誰であっても、自身の周辺で立ち小便されたら腹が立つ。場合によっては軽犯罪法違反になる可能性もあることは知っておいた方がいい。

軽犯罪法1条26号

左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者

ドライバーたちの工夫

もう1つ、念のため強調しておくが、トラックドライバーは毎度の排泄を外やペットボトルにしているわけではない。それに彼らとて、できることならこうしたイレギュラーなことはしたくないのだ。

そのため、各ドライバーもこのようなことが起きぬよう、迷惑行為ばかりが報道される裏側で様々な工夫をしている。

「自分は携帯トイレを持ってます。ほとんど使うことはないですが、通行止め等にハマった時のために用意してます。使った時は持って帰って可燃ごみとして捨てます」(50代大型長距離)

「ルートを決める際、公園やコンビニなどの場所確認は重要。クルマに乗る前は、必ずトイレと手洗い。急いでもないのに焦るのは、事故の元ですから」(50代大型近距離食品系)

究極の方法として、よく聞くのは「水分を極力取らない」という声だ。かく言う筆者も、現役当時は運転中に水分をほとんど取らなかった。

「トイレ休憩の為に停まりたくないんですよね。なので、走行中は出来るだけ水分を取らないようにしてます」(40代長距離大型冷凍食品)

しかし、狭い空間で長時間足を伸ばせないドライバーにとって、水分を控えることは心身ともに大きな負担となる。最悪の場合、血栓ができ、「エコノミークラス症候群」や「突然死」をも招きかねない。

「自分は頻尿なので2〜3時間に1回ぐらいトイレに行きます。水分摂取、控えたいですがエコノミー症候群が怖いので控えられません」(40代大型長距離機械等)

眠気覚ましのためにドライバーがよく飲んでいるコーヒーやエナジードリンクは、利尿効果も高い。が、トイレがないルートを走る時はこれらを控え、膝をつねり、スルメを噛み続けながら眠気と戦うという声もあった。

尿ペに「器用」の声

それでもやはり、予期せぬ事態に遭遇したら頼らざるを得なくなるのが「ペットボトル」だ。

ちなみに、この「尿ペ」に関して言及すると、毎度必ずといっていいほど世間から「器用だな」といった声が聞こえてくる。

筆者は女性ゆえ、こればかりは経験ができないのだが、今回の取材ではこちらに関する声も聞くことができた。

「私はペットボトルは使いません。以前車内がえらい事になって。代わりに使うのは400mlのコーヒー缶。口は広いし、蓋もできる。もちろん廃棄する時は中や外を洗剤で洗ってます。ただ、量の多い人は溢れます」

「僕はペットボトルではなく、お茶が入っていた1リットルの紙パックを使います。紙パックなら安心してできます。ペットボトルではサイズが合いません(笑)」(60代食品輸送)

「私は牛乳パックにお世話になる。用足し後は、スーパーの袋に入れて密封。トイレまで持っていき流して牛乳パックは捨てます」(50代長距離大型食品系)

中には、「介護用の尿瓶に出し、トイレで流してきれいに洗う」という人も。

400mlのコーヒー缶。広口なので用が足しやすいという声が多かった(筆者撮影:イメージ)
400mlのコーヒー缶。広口なので用が足しやすいという声が多かった(筆者撮影:イメージ)

そして、もう1つ言及しておかねばならないのが、生理現象はなにも「尿意」だけではないということだ。

特にドライバーのほとんどを占める男性には、胃腸が弱い人が比較的多く、ドライバーの中にも「常備薬」として胃腸薬を持っている人が少なくない。

「慢性的な急性胃腸炎持ちなので汚物入れのポリ袋と新聞紙とチリ紙と水も常備してますね。あと困った時は正露丸です」(40代長距離大型)

「首都高の事故渋滞にハマり、緊急停車帯に停めて"大きいの"をした。レジ袋を車外のチェーン掛けにぶら下げて車庫に帰ってから処理。まわりのビルから丸見えだったが限界だった」(40代大型ドライ)

「大きいほうは"来る"と大変なので、朝はあんまり食べないようにしている。極限までトイレを我慢できるようにもなった」(20代地場4トン)

車内に常備してある正露丸(ドライバー提供)
車内に常備してある正露丸(ドライバー提供)

トイレを使用しない理由

そもそも、どうしてトラックドライバーはこれほどまでに、野外やペットボトルに用を足す機会があるのだろうか。

最も大きな理由は、他でもない「トイレがない」からだ。

いや、トイレがないというより、たとえ近くにトイレがあっても「停められる駐車場がない」というほうがより正確だろう。

オフィスや作業場の労働者とは違い、常に大きいクルマで移動しているトラックドライバーにとって、トイレは「いつでも駆け込めるところ」ではない。

側道にコンビニや公衆トイレを見つけても、そこに大型トラックが停められる駐車マスがなければ利用することはできないのだ。

さらに彼らに起こり得るのが「渋滞」だ。

一般車に乗る人の中にも、渋滞でトイレに行けず悩んだことがあるかもしれないが、1日中道路の上にいるトラックドライバーにとって、渋滞にハマることは日常茶飯事。

生理現象はどうしても止めることができないため、その時は室内のペットボトルに手を伸ばす他ない。

また、トラックドライバーは「荷主第一主義」のもと、路上で待機させられることが非常に多い。

トラックが時間に遅れてはいけないこと(延着)は誰もが想像できるところだが、早くも着いてはいけない(早着)ということはあまり知られていない。

世間からは「路駐して待機するな」と言われるのだが、ほとんどの荷主の敷地には駐車場がないうえ、「呼ばれたらすぐ入れる場所で待っていろ」と言われるため、必然的に路駐でスタンバイせざるを得なくなる。

その待機時間は、長い時は半日以上にも。トイレが近くになければ、やはりトイレ以外での排泄は避けられないだろう。

「ペットボトルはたまにお世話になる。降ろし先が開くまでトイレが使えず、前乗りしてるとどうしても使わざるを得なくなる」(20代地場4トン)

「広口のペットボトルを3本ほど用意してました。夜中に到着して朝降ろしなんですけど、路駐待機なのでトイレが無く、ペットボトルに用を足してました。もちろん持ち帰り、トイレに流して洗って再利用。3本あれば急な待機の時も安心でした」(40代中距離大型)

路駐での荷待ちの様子(ドライバー提供:イメージ)
路駐での荷待ちの様子(ドライバー提供:イメージ)

一方、中にはこんなケースも。

「昔、油を載せた大型のタンクローリーに乗ってる時、トイレに行きたくてもクルマにメーカーの看板が入っていたため、他メーカーのガソリンスタンドに停まるわけにいかず我慢しました」(40代女性大型地場)

かつて、トラックドライバーたちに「最難関の道は?」と問うたところ、「トイレまでの道」と答えたドライバーがいたが、こうして改めて彼らの話を聞くと、あながちそれが冗談ではないような気がする。

いっそ助手席をトイレに

このドライバーの「排泄問題」は、彼ら自身のモラルの在り方はもちろん、上記からも分かる通り「駐車スペース問題」と密接な関係がある。

長年「駐車スペース&トイレ難民」となっているトラックドライバーの中からは、「トラックドライバーは基本ワンマン運行。メーカーはいっそ助手席をトイレにしてしまっては」という冗談のようで本気の意見まで挙がるほどに状況は深刻だ。

昨今、コンビニの一部店舗では「トイレの公共化」が議論・検討されており、運送業界からも歓迎の声が聞こえてくる。

が、他産業に依存することなく、ドライバーが安心して休憩できる場所の提供と仕組みの構築を、運送業界が国や荷主に強く要望していかねば、同問題は根本的な解決にはつながらないだろう。

一方、私たち消費者も、同問題をただ「汚い」「マナーが悪い」と断罪するのではなく、日々当たり前のように享受している「利便性」の陰に、「トイレ」という最低限の人間的尊厳すら守れていない人たちが存在している事実を、一度見つめ直さなければならないのではないだろうか。

※参考記事:

「コンビニトイレの公共化、あり?なし?…利用者歓迎の一方、『自治体の迷惑施設押しつけ』との批判も」(東京新聞)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/168366/1

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