「あんなにメモとってたのになんで覚えていないのか」

こちらの助言を一言一句漏らさないよう、完璧に熱心にメモを取ってくれる人がいます。メモは記憶を助ける働きがあります。

なので「次に同じようなことがあっても大丈夫」かというと、そうでもありません。同じ失敗をもう一度したりします。「あんなにメモをとっていて、なぜ覚えてないのか」ということにはいろいろな要因の影響が指摘されています。そもそもメモを取ること自体が覚える助けにならない場合もあります。2つの点から考えてみます。

1つ目は、メモを取ることが、実は覚えるさまたげになる可能性があるという点です。小学生を対象にしたある研究では、文章を聞き取るとき、メモ取りが効果的な生徒と、あまり効果的ではない生徒がいると報告されています。その背景には、ワーキングメモリの関わりが指摘されています。

ワーキングメモリは頭の中の机にたとえられることもあります。実際の机は大きさに限りがあるように、ワーキングメモリにもある程度限りがあります。限りがあるという前提で「メモをとる」をみてみます。まず、「メモを取る」をざっくり分解すると、1)話を聞き、2)話を理解して、3)理解を文字に置き換え、4)手を動かして、5)少なくとも自分が読める字を書く、といった流れになります。。これらを大きさに限りがある机の上で、同時に作業しているのです。

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次に、机の上に物=情報がたくさんの場面を想像してみます。全部同時にさばくのが難いため、仕方なくどれか、たとえば手のかかる2)が省かれるとします。覚えるのに重要なこのステップが省かれると、全て完璧にメモしてあっても、なんのことだか理解していなくて、結果的に覚えていないということになるかもしれません。メモをとる内容が知らないことで、長く複雑な場合ほど、こういうことが起こりやすくなります。

2つ目は、記憶が定着するタイミングという点です。一度に全てのことを覚えるのは、ごく限られた特別な人を除いては難しいことです。多くの人は忘れます。記憶が定着するタイミングの一つは、まさにこの忘れたときです。「なんだっけ?」と忘れたとき、メモを見返して「あー、そうだった」と思い出す。記憶に深く刻み込まれます。似たような状況になっても「あのときこうだった」とわかる、つまりメモの内容が役に立つわけです。

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「メモの内容を覚えていない」という場合、メモを見返していないというケースも多いように感じます。その意味で、例えば1日の終わりとか週の初めなどにメモを見返す機会を作っているかという点もメモを機能させるために大切といえます。

そもそもメモが大量だと見る気になりませんが、メモに色ペンで丸をつけたり、数字で順番を書いたりすると、能動記憶モードのスイッチが入り、覚えやすくなります。また、メモを見返して「これはいらなかった、これは必要だった」と判断する練習も効果的です。先ほどの研究では、メモとり自体を練習して、ワーキングメモリへの負担を軽減するという提案がされています。メモを判断する練習を重ねると、大量で読む気がしないメモが効率的で読みやすいメモに変わっていくかもしれません。