のないテストが返ってきたことはありますか?つけ忘れとか不正解ということではなく、だけがついていない。×はついています。もしそんなテストが返ってきたら困惑します。なにがOKだったか、わかりません。

現実には、がないことがたくさんあります。たとえば社会人になると、ほめられる機会がほとんどないという声をききます。その一方で、人からダメだしされたり、自分にダメだししたりする機会は増えるようです。

ダメだしには、「ダメなことをなくすのが成長」という期待などが込められていると思われます。しかし、学習と成長の仕組みから考えると、ダメだしだけでは結果的に「よりダメ」になってしまう可能性があり、をあげることも重要だといえます。

適度なと成長

学習の仕組みには、強化学習と弱化学習というものがあります。

強化は、のある学習です。たとえば、会社で書類を上司に提出する場面を想像してみます。あなたは書類を上司に提出しました。上司が、「これでOK。進めて」といえば、その書類のつくり方はOKということです。次回も、おそらく同じようなやり方で書類をつくるでしょう。「OK」はテストでいえば。この例のように、Aある状況(会社)で、B行動し(書類をだし)、C良い結果が伴った場合(これでOK)、その行動が増えていくとされます。厳密にいうとややこしい話なのでわかりづらいのですが、をもらったり、自分でと感じた場合、その行動が増えたりするといわれています。

画像

弱化は、強化の反対です。たとえば書類を出した際に、「これじゃダメ」といわれれば、書類をなおします。この例のようにAある状況で、B行動した結果、C悪い出来事があった場合、その行動は減ったりなくなったりしていくとされます。ダメだしは、この弱化の仕組みをベースにしていると思われます。ただし、ダメだしばかりで全くがないと、「なにをしてもダメなのでなにもしない」と負のスパイラルに陥ったり、無気力状態になったりしていく可能性もあります。そうなる前に、「ここは×だけどここは」のように部分点をあげるなどの対応があるとよいのかもしれません。

画像

現実ではいろいろな要素がからむのでもっと複雑でしょうが、シンプルにとらえれば、「これはダメなんだ(×、弱化)」と「これはOKなんだ(、強化)」の2つの組み合わせで、学習は進んでいくといえます。

社会の中の仕事の中の強化と弱化

失敗が大きな事故につながる仕事などでは、×が積極的につかわれているようです。そういった仕事の場合、安全なやり方がある程度定型化されていて、×がついたらどこに戻れば良いかはっきりしていることも多いと思われます。

一方で、新しいやり方や柔軟な発想が求められるような、いわゆる正解のみえにくい仕事の場合、適度なが必要かもしれません。「さんざんダメだしされたあげくようやく認められた」という経験をお持ちのかたもいると思いますが、このたまにくるがたまらなかったりします。

が見つかりにくい中で○をみつける工夫も必要かもしれません。人事コンサルタントの川上真史は、以前はコピーとりのような新人が頑張ればできて周囲から認められる機会にもなる仕事がたくさんあったが、社会状況の変化やIT技術の発達により、そうした仕事が減ってきていることの問題点を指摘しています。社会人として未熟な段階で、自然とをもらえる機会が減っているのなら、意識して見つけるということも必要かもしれません。

と×は成長の両輪。×のみは片輪がパンクした自転車のようなものではないでしょうか。進みはしますが、ゆっくりで大変です。もし自分に対して×ばかりなら、もあげてみましょう。人に対して×ばかりなら、もあげてみてはどうでしょう。×の両輪がそろうと、想像をこえた変化が起こるかもしれません。

画像

-

参考にした主な文献

・『特集 行動分析化学で広がる心理臨床』 臨床心理学 第12巻第1号 金剛出版

・応用行動分析学入門 小林重雄監修 学苑社

・のめり込む力 川上真史著 ダイヤモンド社