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正規は523.3万円、非正規は200.5万円…給与所得者の数や所得税額の実情(2023年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
一番身近な税金といえば所得税。給与所得者の所得税の実情は(写真:イメージマート)

平均給与と賞与の実情

日々の仕事をこなして得た給与に対し、国は所得税を徴収する。多くの給与所得者は会社側が各種計算をしてくれるので、年末調整の手続きをする程度で済むこともあり、所得税に関しては日頃から意識をする機会は無い。一方、所得税は国の税収においては重要な要目の一つであり、その額は国全体の経済の動向を推し量る一つの指標にもなる。今回は国税庁が公開している各種データを基に、いくつかの所得税に関する動向を確認していく。

まずは正規・非正規給与所得者別の各種動向。国税庁の公開データでは2012年分から正規・非正規別のデータ公開を始めているが、今回は主に直近10年分を精査する。また、2022年分発表時から統計の手法を一部変えており、その変更後の手法で2014年分以降を再計算して値を公開しているため、2013年までと2014年以降との間には、厳密には連続性はない。

次のグラフは給与所得者数の実情。直近では正規給与所得者が3390万5882人、非正規は1243万7860人。この他に役員や非給与所得者も所得税の課税対象者としては存在するが、今回は取り扱い範囲外。

↑ 給与所得者数(1年勤続者、万人)
↑ 給与所得者数(1年勤続者、万人)

双方ともほぼ増加傾向にある。直近年の2022年では前年比で正規・非正規ともに減少している。景況感の悪化や前年に大きく増えたことへの反動があるのかもしれない。

続いてこれら給与所得者における総額としての給与・手当と賞与額。そして人数で除算した平均額。人数が多ければ多いほど総額は増えるが、一人一人の額面も増えないと平均額は上昇しない。

↑ 給与・手当+賞与(1年勤続者、総額、年間、兆円)
↑ 給与・手当+賞与(1年勤続者、総額、年間、兆円)

↑ 給与・手当+賞与(1年勤続者、平均、年間、万円)
↑ 給与・手当+賞与(1年勤続者、平均、年間、万円)

総額は正規・非正規ともにほぼ増加中、平均額は正規給与所得者ではほぼ増加継続中、非正規では2013年に前年比で減少したものの、2014年では増加に転じ、前々年となる2012年を上回る値を示している。そしてその動きは2015年以降も続いていたが、2020年では総額・平均ともに正規で前年比減少の動きが生じた。その分、2021年では大きな増加幅を示した。

2020年では複数の属性で減少が生じているが、この理由について詳細を公開データから確認すると(グラフ化は略)、賞与の減少度合いが非常に大きなものとなっている(正規の平均賞与が97.1万円から89.2万円と7.9万円も減少)。新型コロナウイルスの流行による景況感の後退は、特に正規の賞与に大きな影響を与えたようだ。一方で2021年では特に非正規の増加ぶりが目にとまるが、こちらも賞与が大きな影響を与えている(非正規の平均給与は7.9万円から12.5万円に増加している)。直近2022年においては、正規で平均額は増加しているものの、総人数が減ってしまったことから、総額は減少してしまっている。

ちなみに給与所得者の役員は2022年時点で約391万人(前年比約93万人減)、平均給与・手当+賞与は731万円(前年比8700円増)となっている。当然正規・非正規社員よりは高い金額である。

給与所得者数や税額はどうだろうか

給与所得者の数そのもの、そしてその人たちから徴収できる所得税は、経済そのものの指標の一つとなる。次に示すのは役員も含め、正規・非正規を問わずの給与所得者数(給与をもらっていない人は含まれない。それらの人の中にも、例えば配当生活者のように、所得税を支払う人はもちろん存在する)の推移。1年勤続者と1年未満勤続者の双方を合わせた数の推移を示している。後者は1年継続して就業できなかった人であり、正規・非正規とはまた別の区分であることに注意。

↑ 給与所得者数(納税者+非納税者、万人)
↑ 給与所得者数(納税者+非納税者、万人)

↑ 給与所得者数(納税者+非納税者、万人)(2001年以降)
↑ 給与所得者数(納税者+非納税者、万人)(2001年以降)

給与所得者は漸増していたものの、前世紀末あたりからその伸び率は緩やかなものとなった。今世紀初頭は1年勤続者が減り、1年未満勤続者が増加する動きもあったが、2008年の1年未満勤続者の大きな増加をピークとし、それ以降はおおよそ1年未満勤続者が漸減、1年勤続者が増加の流れを示している。直近分2022年は1年勤続者が前年比で1.2%減、1年未満勤続者は3.4%減となっている。

続いてこれら給与所得者からの所得税税額の推移。給与所得者が多ければ、そして個々の稼ぎが大きければ、つまり総所得額が大きいほど、一般的に税額も大きなものとなる。要するに景気がよくなり多くの人がたくさん稼げば稼ぐほど、徴収税額も増える次第。また繰り返しになるが、これが所得税の徴収額すべてではないことに注意。

↑ 給与所得者からの所得税税額(国税庁把握分、総額、年間、億円)
↑ 給与所得者からの所得税税額(国税庁把握分、総額、年間、億円)

↑ 給与所得者からの所得税税額(国税庁把握分、総額、年間、億円)(2001年分以降)
↑ 給与所得者からの所得税税額(国税庁把握分、総額、年間、億円)(2001年分以降)

景気が悪くなれば給与所得者は減り、受給額も減る。当然税収も減ってしまう。バブル経済期には税収も大きく伸びていたが、その後経済の失速とともに漸減、金融危機直前まではいくぶん回復の兆しも見られたものの、2007年以降は減少。リーマンショックで大きく下落し、その後円高不況、震災などを経て低迷を続け、2013年からようやく持ち直しを示す形となっている。2021年以降は2019年から2020年にかけて見られた頭打ちの気配を打ち消すかのような増加を示しているのが、グラフからも確認できる。2022年の12兆714億円は、もうすぐ1993年に記録した最高額12兆4371億円に届きそうな額ではある。

今記事は所得税の中でもある程度区切った範囲での動向が主な解説対象となっている。それでも経済の動向と小さからぬ連動性のある給与所得者の数やその人たちから徴収されている所得税などの推移を介し、経済の鼓動が聞こえてくるはずである。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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