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前年同期から2.9%ポイント改善…大学卒業予定者の就職内定率は74.1%(2022年10月1日時点)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
就職は誰にとってもうれしい話。大学卒業予定者の就職内定状況は(写真:イメージマート)

新型コロナウイルスの影響から回復に

厚生労働省・文部科学省が先日発表した2022年度における大学などの卒業予定者の就職状況報告書によれば、2022年10月1日時点の大学卒業予定者の就職内定率(就職希望者に対する就職内定者の割合)は74.1%となり、昨年同時期と比べ2.9%ポイントの増加(改善)が見られたことが明らかになった。

公表された調査結果によると、2022年10月1日時点で大学生の卒業予定者による就職内定率は74.1%となり、前年同期の71.2%と比べて2.9%ポイントのプラスとなった。つまりそれだけ同じ時期における就職内定状況が好転したことになる。

↑ 大学など卒業予定者の就職内定率(2022年10月1日時点と2021年同時期)
↑ 大学など卒業予定者の就職内定率(2022年10月1日時点と2021年同時期)

今回発表された10月1日時点における就職内定率は労働市場や景況感を反映する形で、前年同時期と比べて持ち直しを見せている。もっとも上げ幅はまだ大人しく、値そのものも新型コロナウイルス流行前に付けた最高値の77.0%(2019年3月卒者)にはおよばない。

↑ 就職内定率(大学・全体)(各年10月1日時点)
↑ 就職内定率(大学・全体)(各年10月1日時点)

高等専門学校は専門技術に特化し、企業側もその技術を頼りに求人を行うため、内定を出しやすい、囲い込みやすいのが、高就職(内定)率の主要因。企業側の「即戦力優遇主義」が多分に反映され、他の学校種類と比べて高い就職(内定)率が出る。今回もその実情が反映された結果が出ている。

国公立と私立大学、男女別で確認すると

今回発表された就職内定率のうち大学(国公立・私立の合計、個別)にスポットライトを当て、男女別にその動向を確認したのが次のグラフ。

↑ 国公立・私立大の男女別就職内定率(2022年10月1日時点と2021年同時期)
↑ 国公立・私立大の男女別就職内定率(2022年10月1日時点と2021年同時期)

今グラフで対象とした区分において前年同時期比では、国公立大は男性・女性ともにプラス、私立大も男女ともにプラス、大学全体は男女ともにプラスを示している。特に国公立大の上げ幅が大きいのが目にとまる。また大学全体では絶対値・前年同期比の上げ率ともに、男子よりも女子の方がよい値が出ている。現時点では女性の方が労働市場では恵まれているのかもしれない。

中期的な就職(内定)率推移から就職戦線の実情を確認

厚生労働省が定期的に発表している今件就職(内定)率において、過去のデータを逐次抽出し、(金融危機ぼっ発直前からの動向を推し量るため)過去18年間における動向をグラフ化したのが次の図。リーマンショック後は下げ続け、2011年3月卒分を底とし、それ以降は少しずつ回復基調にあったことが容易に把握できる。それゆえに、2015年における解禁日の大幅後ろ倒しに伴い就活学生側に混乱が生じ、(その2年前の同時期の値64.3%と比べればまだ上だが、)内定率の改善状況が一時的に足踏み状態となってしまったのは残念でならない。

↑ 就職(内定)率(大学・全体)(2022年10月1日まで)
↑ 就職(内定)率(大学・全体)(2022年10月1日まで)

今回対象となった10月1日時点の結果は2012年3月卒以降、ほぼ順調に上昇しつつあった(2016年3月卒が落ち込んだのは上記の説明の通り)。しかし2019年3月卒でほぼ頭打ち的な状態となり、2021年3月卒では新型コロナウイルス流行の影響を受け、大きな落ち込みを見せてしまう。新型コロナウイルスの流行が大学生の就職活動にどこまで悪影響を与えているのか、よく分かる動きとなっている。今回の2023年3月卒では前年よりはいくぶん持ち直したが、まだ歩みは遅い。

大学生などの就職(内定)率は、その時の経済状態や企業の景気判断、とりわけその時点の景況感ではなく、今後の見通し的なものと深い関係にある。現在景気がよくても、今後の見通しに不安があれば、わざわざ人材を増やしてリスクを底上げする酔狂さを持つ企業はさほど多くない。逆に企業の先行きが明るければ、それを見越して事業拡大を図るため、人材の追加確保に勤しむことになる。

つまり学生諸子の就職(内定)率を底上げし、安定化させるには、(非常に大雑把な話ではあるが)景気回復こそが一番の対策となる。それとともに安易な、大人側の一方的な思惑で人生設計を揺るがすような変更を容易に行うことなく、十分な思慮の上での決定が求められよう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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