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利用率16.0%、利用枚数13.8枚…レンタルビデオソフトの利用状況をさぐる(2022年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
レンタルビデオソフト店の品揃えを前に、何を借りようか迷う経験はあるはず(写真:イメージマート)

BDやDVDのような物理メディアで映像ソフトを楽しむ場合、そのソフトを購入する以外に専門店から一定期間借り入れ、映像を観賞する選択肢がある。手元にソフトは残らないが、映画館で映画を観賞する感覚で観ようとするものである。昨今では同様の考えに基づいたインターネット経由による配信サービスが普及しつつあり、物理メディアを借り入れるビデオソフトのレンタル業は厳しさを増しているとの話もある。利用者観点での実情を、日本映像ソフト協会が2022年5月に発表した、日本の映像ソフト協会そのものやソフト関連の実地調査結果を絡めた白書「映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査」の最新版(※)から確認する。

次に示すのはビデオソフトのレンタル利用率。調査時点における過去1年間、直近の2021年における調査ならば2021年1~12月における利用実情を尋ねている(グラフ上には2021年の結果として反映されている)。

↑ ビデオソフトのレンタル利用率
↑ ビデオソフトのレンタル利用率

調査期間内では2014年の37.1%をピークに、レンタル利用率は漸減。直近では16.0%の人が該当する1年間にビデオソフトのレンタルを利用した経験があるとしている。残りの84.0%は会員登録はしているが借りていなかったのか、元々会員登録すらしていないのかまでは分からない。

それでは利用者はどのような利用傾向なのだろうか。利用金額と利用本数を尋ねた結果が次のグラフ。無論双方とも1年あたりの値である。

↑ ビデオソフトのレンタル利用者の平均利用傾向
↑ ビデオソフトのレンタル利用者の平均利用傾向

今値は調査対象母集団全体ではなく利用者に限定した上での平均値であることから、利用者においても利用金額が減り、利用本数がおおよそ漸減していることが分かる。ビデオソフトのレンタル料相場が低下しているだけならば利用金額は減っても利用本数は減らないが、利用本数も減っていることから、ビデオソフトのレンタル利用者においても、利用傾向が大人しくなっている、利用度合いがライトなものとなりつつある実情が分かる。

もっともここ数年では利用金額も利用枚数もほぼ変わらない値で推移している(2020年の利用金額や利用枚数の前年比増加の動きはイレギュラーか、新型コロナウイルス流行による巣ごもり化の影響だろう)。

無論この傾向がインターネットで提供される動画サービスに影響を受けているか否かまでは、この結果からだけでは分からない。しかしながら次の調査項目(今件項目は今回発表分では非公開扱いとなっているため、最期に公開された2018年分のものを用いて分析する)「今利用しているレンタルビデオ店が廃業したらどうするか」の回答動向を見ると、主要因ではないものの、少なからぬ影響は与えているであろうことは想像に難くない。

↑ 今利用しているレンタルビデオ店が廃業したらどうするか(現在レンタルビデオ利用者限定、択一回答)(2018年)
↑ 今利用しているレンタルビデオ店が廃業したらどうするか(現在レンタルビデオ利用者限定、択一回答)(2018年)

そもそも廃業する想定など無い、廃業したらその時に考えるなどが想定されるので、「分からない・不明」との回答に至ってしまう人が多数いるのは仕方がない。自分が普段から当たり前のように利用しているサービスが使えなくなる事態など、普通は考えないからだ。

他方、もし廃業しても違う店を探して利用する、つまりビデオソフトのレンタルは利用し続けるとの人は22.8%にとどまっている。観賞ルートを切り替える人においても、ルートは多様。そのうち有料動画配信に切り替えるとの人は11.9%。大体1割強の人にとってはビデオソフトのレンタル利用の代替手段として、有料動画配信が第一候補に挙がっていると考えてよいだろう。

とはいえ、回答者の身近な場所にレンタルビデオ店が無ければ店舗でのレンタル利用は不可能となる。宅配レンタルならば物理店舗が無くても利用はできるが、手間を考えると利用はしたくないという人もいる。利便性の上で優れている点が多いインターネットで提供される動画サービスの影響は、もう少し大きなものなのかもしれない。

なお、今後レンタルビデオは残るのか否かとの問いには、半数近くが否定的。肯定的な意見は2割にも届かない。

↑ 今後レンタルビデオは残るか否か
↑ 今後レンタルビデオは残るか否か

おそらくは多くの人の思惑通り、多分はインターネットに代替されてしまうのだろう。

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※「映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査」の最新版

2022年1月にインターネット経由で実施されたもので、調査対象は16~69歳。一般調査は1750人、有料動画配信の内情調査は1340人を対象としている。いずれも男女・年齢・インターネットの利用状況に関するウェイトバックがかけられており、調査対象母集団の属性に関する偏りは最小限に抑えられている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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